解読と養殖
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって一度死んだんだが、少年に召喚され蘇る。 侯爵家の奥様主催のお茶会で、今後の方針が決まったようだ。
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お茶会の翌日に王妃様のお使いを名乗るおっさんが、マリアさんちにやってきた。
おっさんが持って来たのは魔道書大全、全部で5属性あるはずなのに風,光,地の3属性しかなかった。
で、解読を始めたんだが、作業を始めて10分で後悔して、15分でキレた。
『 先ずは風の書から初めて頂きましょうか 』
『 字の間隔と大きさが揃っておりませんな 』
『 心を込めて書いて頂きたいですな 』
俺が引き受けたのは解読であって写本じゃない。
マリアさんは両手を腰にあてて玄関ドアの向こうを見てる、クロエさんが引きずってったおっさんを睨みつけてるんだろう、マリアさんの表情を正面から見る勇気は俺には無い。
「 ごめんなさい、ママ。 仕事を途中で投げ出しちゃった 」
「 ??? リオが謝ることはないのよ 」
マリアさんが優しく抱きしめてくれたんで、ちょっと落ち着いた。
羽ペンとインクで文字を書くのがこんなにストレスになるとは思わなかった、せめて鉛筆が欲しい。
「 ママ、商業ギルドに行っていいかな? 欲しい物があるんだ 」
「 いいけど、ギルドで何をするの? 」
「 ちょっと、筆記用具を作ってもらおうかなって 」
俺が考えてるのは黒鉛を使った鉛筆、鉛筆と言っても木製の細い板で芯を挟んだ簡易版だ。
インクを付けながらペンで書くのは、インクがにじむし、濃淡が出るし。
インクを吸い取るスポンジみたいのも在るんだが、スポンジが乾かないうちに使うと字が二重になるから使い方が難しい。
「 面白そうね、クロエ付いて行ってくれる? でも、無駄使いはダメよ、金貨10枚までネ 」
「 うん、判った 」 判ったけど、金貨10枚って価値が判らん。
「 いいわよ、行きましょうリオ 」
クロエさんと手を繋いで商業ギルドに向かう、落ち着いて考えたら俺はギルドの場所知らなかったんだよな。
「 ただいま~ 」
「 マリア、帰ったわよ 」
「 お帰り2人とも。 リオ、フォリア様からお使いが来てるわよ 」
知ってる、家の前にカリウス家の紋章が入った馬車が止まってたからね。
そのままカリウス邸へドナドナ、お茶会の時夜番だったメイドさん7人の分の下着を作ってくれだって、ちょうどいいから魔道書大全と書き写すための紙も頂いた。
「 王妃様のお願いだから引き受けたんですけどね 」
クッキーを噛み砕きながらグチる、クロエさんとフォリア様は笑って聞いてくれてる。
アンナちゃんも同席してるんだが彼女は何も話さない、ダンジョンで1回聞いただけなんでどんな声なのかも忘れちまったよ。
「 そんなことが在ったの、マリオン君も大変ね 」
「 こんな事になるとは思わなかったですね。 魔道書も全部揃ってなかったし 」
「 マリオン君が見た時には、全部揃って無かったの? 」
「 ええ、風,光,地の3属性だけでしたね 」
「 そうなの・・・・・・ 」
ん? 何を考えてるのかなフォリア様は。
「 マリオン君、さっきの魔道書を出してもらっていいかしら 」
「 はい 」
フォリア様は魔道書大全を受け取ると、メイドさんが用意したペンで表紙の裏に何かを書いた。
書き終わった魔道書を開いてみると『 カリウス家所蔵 フォリア-カリウス 』って書いて在った。
「 フォリア様、これは? 」
「 念のためよ、念のため! 」
片目をつぶってイタズラっぽく微笑んでるフォリア様。
マリアさんちに来たおっさんの風貌を聞かれたんで、覚えている範囲でお答えした。
おっさんの名前の最初の文字は ”ジ”だったはず、それ以外は忘れた、おっさんの名前なんか覚えていられるか。
何か企んでるみたいだけどこれ以上突っ込むのは止めておく、貴族のゴタゴタには巻き込まれたくない。
「 マリオン君が活躍したダンジョンなんだけど、いままで5階だったのが6階になったんだって。 凄いでしょ? 」
「 ダンジョンが成長したの? 」 そりゃすごい。
「 出現する魔物に変化は在ったのかしら? 」
「 そこは大丈夫よクロエさん。 スライムとコボルドとゴブリンだけですって 」
「 上位個体は出なかったのかしら? 」
「 5階と6階に、ゴブリンメイジとゴブリンファイターが出たんですって 」
「 出たのね・・・・・・ 」
「 じゃあ、少し大きな魔石が採れる様になりますね 」 大きな魔石は貴重らしいからな。
「 そうね、でも上位個体は少しだけみたいなのよね 」
「 それなんですけど、ちょっと確認して欲しいことが在って・・・・・・ 」
ダンジョンの地下2階の階段で休憩してた時、地下3階で共食いしてるゴブリンを観察した。
最初は共食いしてるのかと思ったんだがそうじゃ無かった、食べてたのは肉じゃ無くて床に落ちた魔石だった。
先を争って魔石を拾おうとしてたんで魔石を投げてみた。
個体差は在ったんだが魔石を何個か食べた個体は上位個体へ変化した、人為的に上位個体を生み出せるんじゃないかと思うんだよ。
「 それを確認して欲しいかなって。 上位個体の魔石の大きさは判らないけど、普通よりも大きいんでしょ? 」
「 そうよマリオン、上位個体の魔石は下位より大きくなるわね 」
「 そうなのね。 面白そうだから主人と相談してみるわ、上手くいけば大きな魔石が量産できるかも 」
出来れば自分でやりたいんだが、ここはお任せだ。
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「 ただいま~ 」
「 マリア、帰ったわよ 」
今日、2回目だけど。
「 お帰りなさいリオ。 これ着てみたんだけど、どうかしら? 」
片手にポーションを持ったマリアさんと、マライアが出迎えてくれた。
2人とも着てるのはいつもの服じゃ無くて作業着だ、カリウス邸で作った抗菌防臭のやつ。
「 仕事してるって感じがするよ 」
「 そう? 」
クルッと回るマリアさんと、喜んでるマライア。
「 じゃあリオ、ゆっくり近づいてみて。 臭くて無理だったら言ってね? 」
俺が発作を起こす臭いの確認をしたいらしい、毎回新しい服を用意するのは大変だし、不経済だし。
洗濯して使おうとすると洗濯するのにかなり時間が掛かる、手も荒れてボロボロになるし。
「 わかった 」
ユックリ近づく、ユックリ、ユックリ。
ユックリ過ぎて息を止めてたのに気が付いて、鼻で息をする、まだ大丈夫だ。
「 リオ、発作が起きたらすぐにポーションを使うからね、安心して 」
黙って頷く。
断ってもいいんだが、女性に匂いで気を使わせるのは失礼だし、俺も発作を克服したい。
洗い忘れた服やタオルが在るだけで発作を起こしてたら、家の中でノンビリ出来やしない。
「 大丈夫? 」
「 大丈夫だよ、ママ 」
マリアさんの正面まで来たけど発作は起きない。
「 もう少し近づける? 」
マリアさんの胸に顔を埋める、背中に汗が流れた。
発作は結構苦しいんだよ。
覚悟を決めて鼻から少しだけ吸い込む、いつものマリアさんの匂いだ、発作は起きない。
「 ・・・・・・ 」
マリアさんは全身に力が入ってる、俺もだけど。
もう少し吸ってみる・・・・・・大丈夫だ、深呼吸しても・・・・・・発作は起きない。
「 大丈夫みたいだ 」
「 ・・・・・・良かった! 」
俺を力いっぱい抱きしめてくるマリアさん、俺もひと安心だ。
「 リオ! 私は? 私は? 」
マリアさんから俺を奪い取ったマライアに抱きしめられる・・・・・・大丈夫だ、ちょっと痛いけど。
「 大丈夫だよ姉さん、発作は起きないみたい 」
「 ホントに? ホントよね! 良かった! 」
胸の前でグリグリされると肋骨が当たってちょっと痛い、言わないけど。
「 リオが苦しんでるのを見たから、何とかしたいってママとずっと考えてたの! これでいつでもリオを抱きしめられるのね! 」
それはどうだろ。
「 マライア、髪の毛には匂いが付いてるから気を付けてね 」
「 ええママ、判ってるわ 」
2人とも涙ぐんでるんだが、俺は悪くない。
発作は自分の意思じゃ抑えられないしな、今度は帽子が作れないか確認してみよう。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。