ダンジョン美容法
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって一度死んだんだが、少年に召喚され蘇る。 ダンジョン美容法へ参加してみた。
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「 間もなく到着いたします 」
「 判った 」
御者がクロエさんに到着を告げた、今日の宿泊所に着いたようなんで俺も窓から外を見てみる。
拠点は丸太で作った塀で2重に囲まれてる、拠点というよりちょっとした要塞だ、事前にあった説明では兵士200人が常駐してる。
この辺りにはそんなに魔物は出ないらしいんだが、宿泊する人の身分が高いんで念には念を入れてるんだと。
「 こちらになります 」
8台の馬車から降りてきたゲストは宿泊用の部屋に案内されたあと、そのまま食堂で昼食となる、俺達を案内してくれたのは兵士じゃなくて執事さんだった。
案内されたのは広いゲストルーム、バスとトイレと従者用の部屋が付いた豪華版。
クロエさんも同じような部屋なんだと、てっきりクロエさんと相部屋だと思ってたんだが、待遇が良すぎてビックリ。
「 食事は個室なんだね 」
「 そのようね 」
「 なにか気になることでも? 」
クロエさんが窓から外を確認してる、ちょっと落ち着かない様子だが危険が危ないんだろうか。
「 この建物は拠点の中央にあるようね 」
テーブルには2人分の食器が用意してある、俺も窓から外を見てるんだが違いが判らない。
部屋に食事が運ばれてきた、用意されてる食事も2人分だから俺とクロエさんの分だな。
「 私達だけで食事みたいね 」 なぜ微笑んでるんだ?
「 てっきりアンナさんも一緒かと思ったのだけど 」
「 カリウス侯爵の娘さん? 別々の方が気を使わなくていいから、2人だけの方が楽でいいよ 」
食事をセットしてメイドさんが部屋の隅に待機したんで、椅子に座って食事を始める。
「 てっきりマリオンとアンナさんを、近づけるつもりなんだと思ってたのよ 」
「 なるほど。 でも、それは無いでしょう 」
パンは焼きたてのようだ、フワフワで温かい。
「 マリアさんは、カリウス家の最後の子供ですからね。 婿を貰って家を存続させないと 」
「 あら、そうだったの? 」
「 長女は暗黒邪神教の犠牲になってるんですよ、僕と一緒の時にさらわれてます。 だから平民なんか相手にしてられないですよ 」
「 そんな事があったのね 」
食事は脂っこくなくて美味しかった、ダンジョン美容法をやるだけはある。
食後は最終説明会と機器の取り扱いの実習、破砕弾はボウガンを改造した装置で飛ばすんだと。
ステータスが低い女性が投げるんじゃ充分距離が稼げないし距離も安定しないけど、投射機器を使えば誰がやっても同じ距離になるから、より安全だ。
講習会のあとは自由時間。
俺は建物の外へ出て明日の準備、金属製の歪んだお弁当箱に魔薬を塗って鉄球を敷き詰めた、お手製クレイモアを組み立てる、表面は薄い木で覆った。
お弁当箱は重い金属で厚めに作って貰った、何回かは使い回しが出来るはず、って言うか使ってみたいと連絡済。
拠点のトップはカリウス家の人だったんで、事情を説明したら直ぐにOKが出た、有効性は明日確認だな。
やることやったんで、夕飯後は早めに就寝、明日に備えよう。
気配を感じて目を覚ます、窓から外を見てもまだ暗いから朝じゃない。
そっとドアの方を見るとクロエさんが立ってた、暗闇の黒エルフは暗殺者にしか見えん。
しかも戦闘準備万端だ、もちろん夜の戦闘じゃない。
俺が目を覚ますと状況が悪化してるのは、何かの呪いなのか?
「 眠れないんですか? クロエさん 」
ベッドからユックリ起き上がってスリッパを履く、左手にはライトアロー改良版を装着済み。
近づいて気が付いた、クロエさんは利き手で弓を持ってる、戦うつもりはなさそうだな。
「 マリオン、起きてたの? 」
「 ええ。 ちょっと眠れなくて 」 嘘だ、今起きた。
ドアの近くで立ち止まったままのクロエさんに、ゆっくり近づく、急な動きで刺激すると反射的に切られそうな雰囲気が有る。
「 私が大規模ダンジョンに入ったのは知ってるのよね? 」
「 聴きましたよ 」
「 そうよね。 あの後ね、おかしな話を聞いたの 」
「 おかしな話? 」
クロエさんの空いてる方の手をとってソファへ誘導する、小さく震えてるなクロエさん。
「 ええ。 あの時は逃げるのに必死だったんで、倒した魔物はそのままで逃げたのよ。 素材も魔石も全部ダンジョンに捨てて来たの、武器の他は水と食料だけ持って逃げたの。 そしたら、あの後ダンジョンの魔物が強くなったって聞いたのよ 」
「 そんな事が? 」
弓を受けとってテーブルに置く、矢筒も貰っておこう。
「 冒険者仲間から聞いたから確実な話なのよ。 ちょっと気になって 」
「 そんな事があったんですね 」
剣帯を外して革鎧を脱がしてテーブル、はもう置き場所が無いからソファに置いておく。
「 ここは小規模ダンジョンだし、5層しかないから直ぐ逃げられますよ 」
「 そうよね 」
まだ震えてる。
ベッドに引っ張って壁際に寝かせる、毛布を掛けたら俺も潜り込む。
「 寝不足じゃあ護衛は出来ないですよ。 さぁ、寝ましょう 」
まだ震えてるクロエさんに抱き付く、子供の体温は高いから安心感を与えるのには便利だ。
「 ・・・・・・ 」
まだダメか、しょうがない。
「 良い子、良い子。 大丈夫、無事に帰って来れますよ 」
頭を撫でてあげよう、しばらくすれば寝るだろ。
「 ・・・・・・ 」
弱ってる女性は落としやすい何て言うけど都市伝説だ、それに後で厄介なことに巻き込まれる可能性が高いから、止めて置くことを推奨する。
今の俺は10才だし意味は無い・・・・・・うん無理だな。
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「 おはよう! マリオン! 」
「 早うございます、クロエさん 」
目を覚ますと目の前にクロエさんの笑顔、昨日より元気だ。
良く眠ってお腹いっぱい食べればほとんどの悩みはなんとかなる、酒に頼るのは止めておいた方が良い、おじさんは酒は飲めん。
「 よく眠れましたか? 」
「 ええ、よく眠れたわ! さぁ、ご飯を食べたら出発よ! 」
「 おい~っす 」
元気になり過ぎな気がする、とりあえず食堂へ弓を持ってくのは止めようか。
拠点からダンジョンまでは徒歩で5分なんだが馬車で移動、歩いた方が効果は上がると思うんだが。
美容法であって健康法じゃ無いから、馬車でもいいのか。
ダンジョンへは斜めの階段から入場する、先行するのは冒険者達。
魔物を釣って階段までおびき寄せるのが役目、意図的にトレインしてくる予定。
危険が危ないだろって冒険者には言ったんだが、充分なお金が貰えるから問題無いんだと。
命の値段を決めるのは俺じゃ無い、個人の判断に任せよう。
冒険者に続いてカリウス家の騎士達が入っていく、2人一組で大きなタワーシールドを運んでる、3枚在るから狭い通路や階段なら塞げるだろう。
階段の段差を利用すれば、上側を支えれば下側は段差が支えてくれる、かなりの衝撃に耐えられそうだ。
あとはシールドの耐久性の問題だが、相手はゴブリンだし問題ないだろう。
「 アンナ様、こちらへどうぞ 」
1番目はカリウス家のアンナさんだ、地下1階へと続く階段の途中、シールドの5段ほど上で待機してる、ドレスじゃ無くて乗馬服っぽい格好だ。
3枚のシールドが待機中で、真ん中んのシールドだけがズレて隙間が空いてるのは、冒険者を迎え入れるため、来たら閉じるって言ってた。
間に合わなくても閉じるんだと、冒険者はシールドを背にして、終わるまで頑張るしか無い。
振り返ると、10段ほど上にタワーシルドが同じように待機中、想定外の事態が発生したらすぐに逃げるように言われてる。
最後まで残るのは、シールドを持った騎士と冒険者だって。
しばらく待ってると、灯りを持った冒険者がこっちに走ってくるのが見えた。
「 来たようです。 アンナ様、ご準備を 」
「 はい 」
アンナが騎士団長から改造ボウガンを受け取り、シールドの上から通路の先を狙う。
冒険者が叫んだ。
「 30~50! 30m! 」
事前の説明では、釣れたゴブリンは30~50匹で冒険者との間が30m開いていることになる。
騎士団長が、アンナ様が持ってる改造ボウガンにセットされた、破砕弾の導火線を切って火を付ける。
「 アンナ様、いま少し上を狙って下さい。 はい、結構です 」
冒険者が近づいてくる。
「 今です 」
パシュ!
気の抜けた音とともに破砕弾が飛んでいく、導火線の火が暗闇に向って飛んでいく。
「 もう一度、お願いします 」
アンナ様が、破砕弾がセットされた別の改造ボウガンを受け取る、騎士団長が導火線を切り取って火を付け、上下角を指定する。
ポシュ!
冒険者がシールドの隙間を駆け抜けると、シールドが移動して隙間を埋めて壁を作った。
「 しゃがんで! マリオン! 」
クロエさんに引っ張られた、しゃがんでから周りを見るとみんなしゃがんでた。
バン! バン!
2発とも炸裂した様だ、しばらくすると嫌な臭いが風と一緒にやってくる。
「 アンナ様、もう一度お願いします 」
3回目の炸裂音が聞こえると、真ん中のシールドが移動して隙間を作る、冒険者5人が剣を構えて隙間から走り出て行く。
「 終わりました。 もう立ち上がって結構です 」
シールドの向こうを見ていた騎士団長が許可を出したんで、みんなが立ち上がる。
「 8です 」
ダンジョン美容法では、1回の施術で10程度のレベルアップが推奨されてる、レベルがいくつになったかじゃ無くて、いくつ上がったかを自己申告。
みなさま貴族なんで嘘はつかない前提だ、あと個人情報保護のためレベルがいくつになったかは内緒らしい。
しばらく待つと冒険者の1人が小さな袋を持って戻ってきた。
「 48だ 」
「 判った。 もう一度いけるか? 」
「 行けるだろう、少し数は減るが 」
「 よし。 もう一度いくぞ 」
さっきとは別の冒険者がダンジョン中へ走り去っていく、もう一度トレインするようだ。
俺は2番目の予定だから、このペースだと地下1階から2階への階段でやることになりそうだ。
「 48って、ゴブリンの魔石の数? 」
シールドの側に居る冒険者に聞いてみる、暇なんだよ。
「 そうだ、契約は出来高制だからな。 ああ、スライムとコボルトは間引きしてある、スライムは遅すぎるし、コボルトは早すぎるんでな 」
なるほど、移動速度を合わせておけば処理しやすいな。
「 それにしても、待ち時間が長い気がするんですけど 」
「 そう言うな。 ちょっとだけ待てば、ゴブリンだった物がダンジョンに吸収されて消えるからな、それも待ってるんだよ。 お前だってゴブリンの肉片を踏みたくないだろ? 」
「 踏みたくはないですね、大人しく待つことにします。 ちょっと臭いですけど 」
冒険者だけじゃなく、騎士たちにも笑われたんだが。
みんな臭くないのか?
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。