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水洗トイレ

初投稿となります。 よろしくお願いします。


舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。


・変なことに巻き込まれ色々あって一度死んだんだが、少年に召喚され蘇る。 クロエさんが一緒に住み始めた。


|||||


魔素が減って魔法の効きが悪くなってる状態で、どうやってダンジョンを攻略してるのか、クロエさんに聞いてみた。


「 剣で叩いてポーションで治すわね。 魔法と魔道具は補助よ 」


スゲー肉弾戦だった。


「 じゃあ、あれが使えるな 」


「 マリオン、あれってなんなの? 」


「 まぁ、お楽しみってことで 」




それから1週間後、やっとマリアさんは俺がベッドを出る許可を出した。


「 リオ。 ケガはもう大丈夫? 」


「 ありがとママ。 もう大丈夫だよ 」


マリアさんに手伝ってもらって体を拭く。


「 ちょっと傷が残っちゃったわね 」


俺の背中をタオルで拭きながらマリアさんが心配してる、背中に当たった石の傷が残った様だ。

そこそこのポーションを使ったらしいが、魔薬の原料に魔石の粉を使ってるせいなのか効きが悪かったんだとか。


「 それでリオ。 魔物退治用ってどういうことなのか説明してくれる? 」


「 あれに火を付けて、遠くから投げるんだよ。 それで魔物を倒せると思う 」


ポーション作成時の副産物で魔薬を作った、魔薬って言っても危ない薬じゃない。

薬草の残りの繊維質を酸で処理して、肥料の成分と魔石を粉を追加した燃焼物だ。

柔らかいグミみたいな感触で爆発的に燃焼するが、配合を変更すれば燃焼速度の変更は可能、導火線も作れるだろう。


魔薬は魔法や魔道具があるんで、長い間使われていなかったらしく世間からは忘れられてた。

防衛施設で見た記憶を基に作ろうとしたんだが、覚えてた資料が古すぎて原料の名前が変わってたんで、クロエさんの話を聞くまで手を付けて無かった。


配合比率がうろ覚えで何度も試作したが、何とか実用性のある物が出来た、ティースプーン一杯で地面に60cmの穴が出来るんだから充分だろう。


部屋のベッドで寝込んだのは、完成品の魔薬の威力を読み間違えたから、飛んできた土で背中にケガを負った。

実験時は安全に配慮した、垂直に40cmの深さの穴を掘ってその奥に魔薬を置いて起爆した、直径60cmの穴が開いたのは想定以上に畑の土が柔らかかったからだ、俺は悪くない。


「 あれは武器なの? 」


「 武器にも使えるけど、土木工事や鉱山で使うんだよ 」


ダイナマイトを開発してノーベルは悩んだらしいが、アインシュタインのグループは原子爆弾の製造を大統領に進言したけど責任取って無い、黒色火薬の発明者の名前なんか聞いたことも無い。

どう使われても俺は知らんし、責任を取るつもりはない。


「 危なくないのかしら? 」


「 使い方を間違えなければ大丈夫だよ 」


ニッコリ笑ってマリアさんを見る、今の俺の外見は10才の少年だ。

ほら、マリアさんも笑って許してくれた。


「 魔物退治用なのね、だったら良いんだけれど。 そうそう。 元気になったら一度屋敷に来るようにって、侯爵様からお手紙が来てたわよ 」


侯爵からのお呼び出しだそうだ、どうやって嗅ぎつけたんだ?

目を覚ますたびに事態が悪化してる気がする、それでも準備はしておこう。



|||||



おじさんを動かそうと思ったら、誰もが納得できる明確なメリットが必要だ。


若い頃は、特に学生時代は単純だ、友情だとか、クラスメイト、ときには愛情とか正義感とか、単純で小さな理由で簡単に動ける。


ほとんどのおじさんには奥さんがいるんで、親戚の数が独身の2倍になる、勤続20年になれば20年先輩と20年後輩が出来る、勤続30年ならもっとだ。

仕事上の付き合いが在るから、実際にはさらに広がる。


学生時代と比べると縦方向に20倍、水平方向に2倍以上広がる人間関係や利害関係は、立体的で複雑に絡み合い、敵の敵は味方なんて事にはならない。

国を跨いで仕事したらもっと複雑になる、宗教も絡むしな。


上手く動かないと敵を増やすだけ、『 それじゃあ仕方ないか 』って誰もが納得できる理由、明確なメリットが無いと動けない。

現状を維持するだけでも苦労するんだよ。



「 では、マリオン君。 魔薬は武器にも使えるんだね? 」


「 はい。 個体が気体化する際には、急激な体積の変化が起こります。 それを利用して・・・ 」


マリアさんの家は警備兵の巡回ルートに入ってる、爆発音を聞きつけて警備兵が家に飛び込んで来たらしい、そこで血まみれの俺を目にした。

ケガはマリアさんのポーションで治ったんで警備兵はそのまま帰ったらしいが、爆発音と血まみれの俺の事は真面目な警備兵が上に報告。

王族が常備するポーションを作成する、腕の良い薬師の家で発生した異常事態の報告は、上へ上へ回され侯爵の耳にも入ったらしい、それで呼び出されたんだと。


「 原理は理解した。 それで、具体的には? 」


「 そうですね。 見て頂いた方が早いと思いまして、用意してきました 」


テーブルの上に用意しておいた2種類の手投げ弾を置く。


「 これは? 」


「 火をつけてから敵に向かって投げる物です、1つは火をまき散らすもの、もう1つは鉄をまき散らすものですね。 場所が在れば実演できますがここでは無理です 」


「 ではこちらに来たまえ 」


手投げ弾の構造は単純だ、小さなビンに魔薬と導火線を詰めて大き目のビンに入れるだけ、大きなビンに油を入れれば火炎弾、鉄の破片を入れれば破砕弾になる。

侯爵の案内で中庭に移動、綺麗な花壇が在るんだがここを壊していいんだろうか。


「 ここで良いのですか? 」


「 構わん 」


「 花壇を壊すことになりますが? 」


軽くため息をついてから顎をクイっとする侯爵、やれって事だよな。

子供のお遊びって思ってるんだろうけど、侯爵の許可は頂いたからどうなっても俺は知らん。


メイドさんからろうそくを受け取って中庭に移動する、壊しても俺に責任はないが、それでも被害は少ない方が良いだろう。

石像の台座に置いてから火を点けて、急いで退避、侯爵の側に戻る。


「 少し音がします、ご注意を 」


「 ・・・・・・ 」  注意はしたからな。


バン


音とともに崩れ落ちる石像。

もう少し油の量を増やしても良さそうだ、周りに火は点いたが火の勢いが弱いし、半径5mに火が付くだけじゃ範囲が狭い。


「 ・・・・・・マリオン君、今のは何なのかね 」


「 火炎タイプの手投げ弾です。 もう少し改良が必要ですが 」


執事やメイドがウォーターボールの魔法で消火してる、でも火の点いた油に水はかけない方が良いと思う、ほら火が広がってるじゃん。


「 あ~侯爵様。 水では無くて、砂が土をかけて消した方が良いかと 」


特別性の油だからね、水じゃ消え難いんだよ。

消火と片づけに手間取ったんで、応接室に移動してお茶を頂いてるんだが、お茶菓子はまだか。


「 それで、もう1つはどうなるんだね 」


「 鉄の破片を飛ばして、対象を撃破する事を目的にしています。 中庭では少々危ないかと 」


「 ・・・・・・判った、それは置いていくがいい。 こちらで試しておく 」


「 判りました。 まだ試作段階ですが、火を点けたら充分離れることをお勧めします。 可能でしたら周りは盾や鎧で塞いだ方が良いでしょう 」


「 充分とは、どの程度離れれば良いのかね? 」


「 10m以上をお勧めします 」  子供用の花火じゃないんだ。


「 ・・・・・・ 」


「 帰っても? 」 


「 ・・・・・・ああ、帰ってよい 」


持ってきた試作品をテーブルに全ておいて部屋を出る、後は侯爵にお任せだ。

行きも帰りも歩きなんだよな、面倒だ。



|||||



「 リオ! 侯爵様からお使いが来たわ! 」


「 判ったママ、今いくよ! 」


数日後、改良型の試作品を作ってるとマリアさんに呼ばれた、侯爵が呼んでるらしいけどどうなるやら。

改良型は持ってかなくてもいいだろう。


「 今日は馬車のお迎え付なんだな 」


「 マリオンはこうなるって判ってたの? 」


馬車に乗ろうとしてた俺に、クロエさんが話し掛けてきた。

ダンジョンの攻略に苦労してたって聞いたし、有効性に気が付けば連絡してくるとは思ってた。


「 まぁ、何となくだけどね 」



侯爵家の応接室には侯爵が先に待っていた、部屋には傷ついた盾と鎧が置いて在る、試験で使った物だろう。

釘は全部貫通しないで止まってる、釘の頭が邪魔をして止まったんだろう、丸い凹みは鉄球で、貫通したのは小さな破片か?


「 短刀直入に言う。 あれのレシピを買い取りたい 」


「 幾らで買っていただけます? 」


「 望むままに出そう 」


「 では、売値の1割で 」


「 その程度で良いのか? 」


「 レシピの管理は、お任せしていいんですよね? 」


「 そのつもりだ 」


「 では、それで。 あとお願いがあるんですが 」



歴史に名が残るのは侯爵だ、血まみれの名前になるかもだけど俺は知らん。

商談の後はお茶、今日はお菓子付だから客扱いなんだろうな。


「 なるほど、道の整備や鉱山の採掘にも使えるのか 」


「 はい使えます 」


「 いいだろう。 今後の研究と応用は、こちらで進めるとしよう 」


「 判りました 」


終了を手で合図する侯爵に会わせ、ソファーから立ち上がって一礼して部屋を出る。

礼儀作法が駄目な子供だって判断されて、マリアさんに迷惑を掛けたくないからな、最低限のマナーは守らないと。



「 報酬が下水道の整備って変わってるわね、本当に良かったの? 」


「 問題無いですよ 」


帰りの馬車の中でクロエさんが呆れてるけど。

おじさんを動かすには明確なメリットが必要だ、ただし、おじさんの価値観は他人に理解されないことが在る。


「 水洗式のトイレは最高ですよ 」


マリアさんは腕の良い薬師だから裕福だ、風呂も在るし、食事の量と質も高水準。

ただ、トイレがスライム式なのが最悪、生き物の上からするのは精神的にかなりキツイ。

早急に何とかしたかったんだが、今の俺には荷が重かった。


下水道が完備されてるのは貴族のお屋敷のある近辺だけ、引っ越ししたくても畑の関係で無理がある。

だから侯爵にお願いして、マリアさんの家まで下水道を延長してもらうことにした。

魔薬の製造販売も、下水道の強引な延長も侯爵の名前で実施されるだろう、俺にも少しは金貨が入って来るけどデメリットは侯爵に押し付けた。


俺にはメリットしかない、動く理由としては充分だろう。


1か月後、マリアさんの家のトイレの水洗化が終わったころ、また侯爵から呼び出しが在った。



気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。

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