クロエさん
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ色々あって一度死んだんだが、少年に召喚され蘇る。 マリアさんの友人クロエさんがやって来たんで魔道具を貸し出した。 あと、世界中で魔力が減ってるんだと。
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魔力が減り続けてる、そう聞いた俺はちょっとした実験を試みた、実験と言うより栽培なんだが。
マリアさんにお願いして、鉢植えにしたポーション用の薬草根っこを4つ用意してもらった。
1つは少し穴を掘って深めに植え、1つは他の薬草と並べて植え、1つは箱の上に乗せて、1つは軒下からつるして栽培する。
売り物にするポーションじゃないんで、少しだけ作ってマリアさんの薬鑑定9で比較する、鑑定のレベルは10が最高なんで9なら違いが判るだろう。
「 リオ! これで良いかしら? 」
「 ありがとうママ! それでOKだよ! 」
日照はほぼ同じになるハズ、水と肥料は俺が世話をするんで踏み台も用意して貰った。
魔素を完全に遮断するのは過去のテクノロジーを用いても不可能、だから俺は魔素シンドロームで死ぬことを選んだ。
ポッドの中で停滞睡眠に付く選択肢も在った、何かの原因で魔素が無くなるか、病気を治せるくらい医療技術が発達するか、それを寝て待つ。
医療の発達には数千年以上かかると予測された、その間にポッドが壊れたら死ぬ、エネルギーが切れても死ぬ、魔物や俺に恨みがあるやつが襲ってきても死ぬ、意識の無い間に。
それは嫌だ。
『 私が守ります! 』 て、ラナが言ってくれたけど、数千年も俺のためにラナを拘束するなんて出来なかった。
それなのに魔力が減って来てるって笑えない。
「 リオ、そろそろポーションが作れそうだけどどうする? 」
鉢植え実験を開始して今日で29日たった、根っこから育てたんで時間が掛かったけど、そろそろ収穫してポーションを作れるみたいだ。
全部採っちゃうと再生が遅くなるんで、普段は下から1/4~1/3は残すんだが今回は全部使う。
「 じゃお願い 」
今日の風向きなら自分の部屋で待ってても大丈夫そうだ、ユックリしてよう。
「 リオ! ポーション出来たわよ! 」
「 今行くよママ! 」
食卓の上には8つのポーションが置いてある、4箇所の葉から作ったポーションと、4箇所の根っこから作ったポーションだ。
量は少ない、1株しか用意してないからしかたが無い。
「 リオ、出来たけどママには違いが判らないわ 」
結果は予想通りで差が全く出なかった、大気中だけではなく地中にも少なくなってる、差が出ればどちらかに問題が在るって判ったんだが。
スリスターにある魔力収集装置が暴走した可能性は無い、魔力タンクの容量には限界があるから無制限に魔素を集められる訳では無い。
魔力収集装置の数を増やしたくても、核となる魔星の欠片も有限だし。
「 でもこっちのポーションは凄いわね! 」
葉っぱを取り除いた後の、薬草の根を使ったポーションは予想通り高品質となった。
マリアさんに頼んで、収穫後に余ってた根っこで作ってもらった、根っこはショウガとジャガイモを足して2で割ったような形をしてる。
植物は実や地下茎を育てるために葉を増やすんだし、葉で生成された栄養素は実や根に集まるんだし、葉っぱだけを使うのは効率が悪い。
「 これはお母様が作ってたのと同じ品質ね、これならどんな傷でも治せるわ。 でもね~ 」
「 育てるのに時間が掛かる? 」
「 そうね~。 根から育てると29日掛かるし、作れるのは月に10本くらいかしら? 」
「 今までの半分だね 」
「 その代わり、高品質なんだけどね~ 」
マリアさんが作ったポーションの品質は高い、骨折が治るかもってレベルらしい、自分で試して見たいとは思わない。
高品質だが少ししか作れない、全てが思った通り上手く行くことを期待してはいけない、んな事は無いのをおじさんは知ってる。
「 高品質を5本、今まで通りのを10本って振り分けるのもいいかも 」
「 そうね~。 その辺はみんなと相談してみないと 」
みんなってのは冒険者ギルドや薬師ギルドの事だ、マリアさんはこの街(王都だ)でも有数の薬剤師なんで、いつもオーダー待ちが居るんだと。
だから作る本数を勝手に変更できないようだ、効果が低いポーションを何本も飲むより、1本で治す方が良いと思うのは俺だけだろうか。
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試験後から2週間後、ポーション作成の匂いを避けるため、今日も塀にもたれて道行く人を観察中。
平和っていい。
「 やっほ~。 ただいま~ 」
俺の探知外から手が伸びてきて、いきなり頭をナデナデされた、心臓に悪い。
毎日道行く人を観察してるんだから、そろそろ探知系の技術が身に付いても欲しいもんだ。
「 お久しぶりですねクロエさん 」
この前来た時と同じ笑顔で、大きなリュックを背負った、右腕が無いクロエさんが立ってた。
フラグは立って無かったらしい、よかった。
「 クロエ! 腕をどうしたの!? 」
クロエさんを見たマリアさんは驚いた、そりゃそうだ片腕がないんだし。
「 48階の魔物にやられてね、油断はしてなかったんだけど。 結構強い魔物が出てね・・・ 」
ダンジョンの探索は順調に進んだ、6パーティーで32人の冒険者とサポート要員12人は1人も欠けることなく48階に到達して、そこで強い魔物に遭遇してやられたんだと。
パーティー毎にバラバラになって地上に逃げることになり、クロエさんのパーティーはサポート要員も含んで全員帰還に成功。
残りは2週間待っても帰還しなかったんだと、クロエさんも帰還の代償として右腕のひじから先を失い冒険者の引退を決意。
右腕を魔物に噛まれた状態で、ライトアロー(改良版)を使って仕留めたって、ジェスチャー入りで説明してくれた。
「 でね、とりあえず借りてた魔道具をリオに返しにきたのよ 」
ほぼ全滅の探索任務、自身も腕を無くして冒険者を引退、かなり疲れてるんだろう。
笑顔で話してるけど目の下に隈が有る、目の上に出来てたら目の病気だから目の下で正しい。
「 預かってた魔道具を返すね。 ちょっと待ってて 」
マリアさんの膝の上の軟禁から解放され、部屋に置いてあった魔道具を取りに行く、いつも持ち歩いてるんだが家の中では外してる。
「 クロエさん、預かってた魔道具です。 一回も使ってないから魔力は満タンですよ 」
毎日少しずつ魔力を補充しておいた、いつでも使える様に準備しておく、備えあれば憂い無しがおじさんのモットーだ、何か在ってからじゃ遅いからな。
「 おっと 」
魔道具を差し出した手がそのまま引っ張られて、クロエさんの腕の中にホールドされた、Aランク冒険者は力が強い。
「 ホントにありがと、リオ。 この魔道具に何度も助けられたのよ! 」
他の人の持ってた魔道具は役に立たなかったけど、貸し出した魔道具は48階の魔物にも効いたんだと、貫通力を改良してあるからだろう、魔法陣も魔石も大きい特別製だしな。
魔道士の中途半端な魔法じゃ効き目が薄かったらしい、地上への帰り道では交代で魔道具に魔力を補充して魔物を倒したんだって。
ダンジョンの中でも魔力が不足してて攻撃魔法も回復魔法も効きが悪かったと、不味くないか。
「 役に立って良かった。 クロエさんが帰ってこなかったら、ママも悲しんだでしょうし 」
「 あら! リオは悲しんでくれないのかしら? 」
「 僕も悲しいですよ? 」
そうよね~って喜んでるけど、クロエさんが帰ってこないって誰が家に教えてくれるんだ? マリアさんの家が緊急時の連絡先に指定されてるんだろうか?
あと、酒臭いから離してほしい。
クロエさんはそのままマリアさんの家で働くことになった、ポーション作成は出来ないんで薬草の手入れと防犯担当だな。
俺の部屋を空けてクロエさんの部屋にして、俺がマリアさんと一緒に寝ることになった。
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一緒に暮らし始めて30日後、食卓には両手で食事をとってるクロエさんの姿が在る。
根っこから作成した10本のポーションは高品質だった、だったらこれを更に凝縮して精錬したら部位欠損くらい何とかなるんじゃないかってマリアさんに提案した。
完成したポーションは2本、1本はマリアさんが使ってもう1本は王様に献上したらしい。
マリアさんの創薬は最高の10になった、10になったから作成できたのか、作成できたから10になったのかは不明。
「 じゃあクロエ。 このまま家で働くって事でいいのね? 」
「 ええ、そうさせてもらうわ。 これからはこの家にも護衛が必要になりそうだし、もう冒険者はコリゴリよ 」
創薬10になったマリアさんは、国のなかでも頭一つ抜けた存在になり、王宮からも受注が入るようになった。
部位欠損も治せるポーションを毎月2本収めるんだそうだ、薬師ギルドと冒険者ギルドにも交互に毎月1本ずつ納品、他にも高品質を10本。
足りない薬草は栽培面積を2倍にすることで解決、お隣さん数軒が引っ越してってそこを畑にした。
すげー力技なんで恨まれるかもって思ったんだが、別れ際にはお礼を言われた。
転居命令が王室から出てるらしく、転居費用はもちろん転居先の住居も用意して貰ったとか、礼金も付いたんだと。
クロエさんの部屋も増設する事に決まった、警備兵の巡回ルートにマリアさんの家が入ったんで防犯上の問題も減った。
少しはのんびり出来そうだ。
やることないし材料が手に入ったんで、趣味に走っても文句は言われないよな。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。