1人ボッチ
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 少年との約束を守るため、暗黒邪神教を急襲した。
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熱を出して7日間寝込んだ。
お風呂のお説教のせいではなく、擦り傷・切り傷だらけの身体で、熱処分が必要なモロモロが在った焼却場に居たのが原因だろう。
何かしらの病気に罹ったと考えてる。
水洗いする前に回復ポーションで傷を治しちゃったんで、細菌やバクテリアを体内に封じ込めた事になる。
腕を確認したんだが、ツベルクリンもBCGも接種した後が無かったんで、この身体は近代的な医学に基づく予防接種を受けてない。
破傷風とかでも大変な事になりそうなんで、これからは注意しないと。
盲腸でも危ないか。
7日間寝込んだら、金髪碧眼が何故か黒髪黒目になってて、次の7日間はベッドで過ごすことになった。
「 ベッドから出てはいけません! 」
って、マリアさんに言われた.
んで従ったんだが、何かシックリこないんだよな、身体の感覚も人間関係も。
暇なんで情報収集を兼ねて、部屋に在った本を読んだ。
全部絵本だったけど仕方が無い、この世界には新聞は無いんだと。
『 勇者ラナの魔星落とし 』
ラナが魔星と戦ったらしい、勝ったんで魔星が落ちたんだと。
『 勇者ラナの冒険 』
なんか、あちこち冒険して魔物を退治したらしい。
『 勇者ラナの秘密の部屋 』
防衛施設だと思うんだが、突入して攻略したらしい。
それで、色んな物を作る魔道具を手に入れたんだと。
『 勇者ラナと聖女シラカワ 』
協力して、魔物退治を頑張ったらしい
『 聖女シラカワの奇跡 』
いろいろ頑張って奇跡を起こしたらしい
『 聖女シラカワとパスカル王子 』
白川さんのラブロマンスらしいけど、パスカルって誰だ。
本人がこの絵本を見たら、顔を真っ赤にして否定しそう。
絵本には汚れも黄ばみも無く、不自然に新品に見えたんで、ページの端を指先でスリスリしてみたんだが全然解れなかった。
使われている紙は、植物性じゃ無い素材が使われてる様だ。
あの後、文明が高度に発達した可能性も考えたんだが、解熱剤も無いから可能性は低そうだ。
この絵本は魔道具で作った可能性が高い。
魔星の破壊は昔々のお話で、4600年前の話なんだと、絵本の情報を信じるかどうかは別にして。
ラナが勇ましく戦ってる姿は、ちょっとカッコ良かった。
俺にはいつも笑顔を見せてくれてたから、キリッとしたラナは新鮮だ。
勇者になった姿はチラットしか見られなかったが、絵本では大人の姿になってる。
絵本の中のラナは大人用のメイド服を着てるから、俺が見てるところをマリアさんに見られても安心だ、隠すべきところはしっかり隠してるから。
白川さんはちょっと年を取ってた、フックラしてたけどそれが聖女らしさを増幅してる。
杖を持ってるけどいつ作ったんだろう、どんな杖なのかも気になる、前は短剣しか持って無かったはずだ。
どの絵本にも河原君が一切出てこないんだが何が在ったのか、魔物にヤラレタとは思わないが気になる、誰かに聞くか本屋で絵本を探してみよう。
俺も出てこないんだが、そっちはどうでもいい。
会いたいと思ってた人とエルフは、みんな居なくなったみたいだな。
4600年経ってたら、元の世界でも知り合いは1人も居ないだろう。
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「 おはようマオ。 今日は起きられそうかしら? 」
「 大丈夫だよママ 」
「 ん~ 」
ほっぺを擦りつけてくるマリアさん、朝から過剰なスキンシップは胃もたれするんで止めて欲しい。
黒髪黒目になってから、スキンシップが過激になってきた気がする。
マリアさんはママ、マライアは姉さん、マルセラはセラと呼ぶことに決まった。
決めたのはマリアさんだ、マリオンと同じ姿で同じ呼び方されると精神に来るらしい。
理由は納得できるんで承諾した、まだ抵抗あるけど。
「 これでママと呼んでもらえるわ! 」
って、叫んでたんでホントの理由は不明。
俺はリオになった、前と同じマリだと、みんなが色々引きずりそうだしな。
最初にマリアさんが、マリオにしましょうって言ったんで全力で反対した。
コインを集めて一生を過ごすつもりは無い。
「 リオが寝ている間に、侯爵様からお礼を頂いたのよ 」
「 お礼? 」
食卓の椅子に座ると、マリアさんが布製の小さな袋と大きな箱をテーブルに置いた。
俺は誰も助けることが出来なかった、お礼を貰えるような事はしていない。
「 娘を取り戻せたって侯爵様から頂いたの。 娘を探し出してくれてありがとう、って言ってたわ 」
暗黒邪神教は侯爵家の娘さんに手を出したのか、よほど自信があったのか、何も考えていなかったのか。
どんな形でも娘が戻ってきたって事で、お礼を頂いたそうだ。
「 金貨とこれね! 」
妙に嬉しそうなマリアさんが、袋から取り出したのはシャンプーとボディソープ。
見覚えのあるボトルなんだが中身の色が違う、キャップを開けて匂いを嗅いでみるとフルーティーな香り。
施設にデフォルトで用意されてたのは、フローラルだったはずだから誰かが改良したのか。
「 これはママ達が使っていいかしら? とってもいい匂いがするのよ! 」
マリオンの身体が覚えてるあの匂いは、ポーションを製造する際に必ず発生するものだ、それが髪と体と服に染み込む。
俺が匂いで倒れた事件が在ったんで、しばらくポーションは造っていないし、服も買い換えたんだって。
だったら使ってもらった方が良いな、フルーティな香りで匂いを消してくれれば、PTSDを再発する可能性は下がるだろう。
あれは苦しいから避けられるなら避けたい、おじさんは敢えて危険に突っ込めるほど若くない。
「 僕もこの香りは気に入りました。 使ってください 」
「 まぁ、そうなの。 じゃあ使わせて貰うわね! 」
「 リオ、ありがとね! 」
マリアさんも、マライアさんもうれしそうだ、マルセラは無反応だけど風呂に入らないのか?
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起きられるようになって更に1週間は外出を禁止され、家から出られなかった。
情報収集はしたかったんだが、身体が言うことを聞いてくれないからちょうど良かった。
年を取ると思うように身体が動かなくなるものだが、若返っても同じことが起きるのは新発見だ。
身体は重かったし目測が狂ったままなんで、リハビリを兼ねてポーション作りのお手伝い。
加工工程だとあの匂いで倒れそうなんで、庭に生えてる薬草の手入れをしてみた。
シャンプーとボディソープが手に入ってからは、マリアさんとマライアがポーション作成を再開した。
マリアさんやマライアにホールドされても、今の所発作は起こしてないから効果は充分だ。
水と肥料を蒔いたんだが、かなりの重労働だった。
住んでる家は平屋の3LDK+ポーションつくりの部屋と庭なんだが、庭が広くて体育館と同じ広さがある。
庭には薬草がみっしり生えてて、10歳の病み上がりの身体にはそれなりにキツイ。
また倒れるわけにはいかないんで、休みを多めに入れつつノンビリ作業してたら、やっと体と感覚が馴染んできた。
リハビリは必須だな、なんて青空を眺めてたらマライアの呼ぶ声が聞こえた。
「 リオ! ママがおやつにしましょうって! 」
「 今いくよ姉さん! 」
ジョウロを持って家に戻る、病気が心配だから手をシッカリ洗う。
マリアさんは王都でも有名なポーション作りの名人だそうで、この家はかなり裕福だ。
その割には平屋なのは薬草の手入れが在るからなんだと、王都で平屋と言うのはスラム街以外では無いんじゃなかろうか。
ちなみに、シャンプーやボディソープはお金が在っても買えないらしい。
まだ褒美として使ってるのかな、あのボケエルフの女王様の子孫は。
「 リオ。 休憩が終わったら、ポーションの納品に冒険者ギルドに行ってみない? 例の件のボーナスもくれるって言うし 」
特に行きたいとは思わないんだが、帰りに本屋に寄ってみたい、買えるなら新しい本が欲しい。
「 行くよママ。 でも帰りに、本屋に寄ってもいいかな? 」
「 本屋? また絵本が欲しいのかしら? 」
「 他にどんな本が有るか見てみたいんだよ、絵本はもういいかな 」
「 じゃあ、私も行くわ! 」
「 私も私も! 」
結局、全員でお出かけする事になった。
「 おや。 元気になったんだねマリオン、また店に来ておくれよ 」
「 ようマリオン。 病気は治ったんだな! 」
色んな人に話し掛けられてうっとおしいんだが、マリオンは良い子だったと言う事なのだろう。
一応挨拶はしておく。
「 やっと来たなマリオン! ん? どうしたんだその髪の毛は? 」
「 この子、高熱を出しちゃってね。 やっと熱が引いたと思ったら髪と目の色が変わってたの 」
「 らしいです。 僕も気が付かないうちに色が変わってたんで、ビックリしてます 」
ギルドに着いて早々にギルドマスターの突込みが入った、出来ればスルーして欲しかったんだが。
ギルド内にはそれなりに人が居るから、一回説明しておけば噂が勝手に拡散するだろう、そこは楽できそうだ。
「 おとぎ話の中じゃ、異世界から来た勇者様はみんな黒髪で黒目だったって言うしな! マリオンも将来勇者になったりしてな! 」
ガッハッハと笑うマスターと、そんなこと無いですよ~と笑うマリアさん、う~ん何だろこれ。
俺は勇者なんかになるつもりは無いし、むしろ魔王じゃないかって疑惑が在るんだが、黙ってた方が良さそうだ。
「 地下室への扉を見つけただろ? これが約束した報酬だ、受け取れ! 」
「 ありがとうございます 」
受け取ったのは小さな袋、おそらく金貨だろう。
「 無駄使いすんじゃないぞ! 」
「 ええ。 これで本でも買おうと思ってます 」
おいおっさん、なに驚いてんだ? 情報収集は全ての基本だぞ。
あと部屋の隅でコソコソ言ってる冒険者。
「 あれが光る肩の奴か・・・・・・ 」
何だよ光る肩の奴って、シャインショルダーか、なんかカッコいいからそのままにしておくか。
どうやら、地下室の扉を開けた時のライトアローがそう見えたらしい。
帰り道でも全員で手を繋いで歩く、なんでもマリオンは1人でポーションの納品に行く途中でさらわれたらしいんで、マリアさんとしては二度目は阻止したいみたいだ。
俺としても再度の拉致はお断りしたいんで、手を離そうとは思わない。
帰り道でも色んな人に声を掛けられ、周り中から見張られてる感じがして落ち着かない。
本屋に入るまで周りを気にしてたんで、着いた頃にはヘロヘロになってた。
魔道具探知だけでも身に付いてれば多少は違ったんだろうが、今は持って無いしな。
警戒しながら歩くのって疲れる、探知系の技術が欲しい。
「 マリオン、久しぶりじゃ無いか! 今日も絵本を買いに来たのか? 」
「 絵本じゃ無くて、別なのを探しに来たんだ。 この国の歴史か、勇者様の歴史が判るような本は無い? 」
おっさんはしばらく考えた後。
「 勇者様の歴史はねえな、絵本なら出た順番に並んでるけどよ。 この国の歴史書は、歴代の王様の本になっちまうな。 ここだけの話だが、殆ど自慢話ばっかりだぞ 」
「 じゃあ、勇者様の本を見せて 」 自慢話なんか見たくないし。
「 おう! こっちの棚だ 」
おっさんが教えてくれた棚には、妙に新しい本が置いてある区画があって、勇者の本は直ぐに区別が付いた。
他の本の背表紙は古ぼけた茶色系なのに、勇者関連の本は背表紙まで新しい。
勇者と聖女に混ざって1冊だけ河原君の絵本が在った、ポツンと1冊だけだ。
パラパラめくって棚に戻す、買いたいとは思わない。
男が主人公の本はイケメンの場合だけでいいな、俺の本が無い訳が判って安心した。
おじさんはおじさんだ、イケメンとかは関係ない。
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俺が家に籠ってた間に、王都内では大掃除をしてたと本屋のおっさんが話してくれた。
本気になった侯爵家のパワーは本物で、腕に入れ墨のあるものは家族も含んで全員処刑されたそうだ。
魔法で隠してる場合も在ったらしくて、腕に魔法を掛けてた場合は切り落として確認したんだと、腕を落とせば魔法の効果が切れるそうだ。
解除の魔法使えばいいのに、侯爵家ちょっと怖い。
んでも、その間マリアさんちの警備もしてくれてたらしい、そっちは感謝だ。
「 あれは 」
帰り道、馬車の方向を変えるローターリーみたいなところの中心に、白川さんの像が在った。
「 聖女様の像よ、魔星の攻撃を予言された時のお姿と言われているわ 」
「 へ~ 」
詳しく像を見ると、石を彫って作られてるようで細かい所が少し崩れてて、設置されてから長い長い時間が経過している様だ。
しばらく像を見ていたら、神殿から脱出するために、カーテンの裏で隠れていた時に感じていた違和感、その正体に気付いてしまった。
元の世界に戻れば家族が待っててくれた、戻れなくても同じ境遇の仲間がいた、今は本当に1人だ。
目に映る景色から色が無くなった、マライアが何か言ってるけど耳に入ってこない。
ホントに1人なんだな今の俺は。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。