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約束は守る

初投稿となります。 よろしくお願いします。


舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。


・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 マリオンと言う少年に呼び出され、変な施設から逃げ出したんだが。



|||||



「 兄様起きてください! 」


( 嫌な夢を見てた気がする )


「 兄様! 」


( 俺に妹はいない。 だから寝る )


最近、目を覚ます度に事態が悪化してる。

こんど目を覚ましたらもっと悪化してる気がする、だから寝る。




俺の願いもむなしく、思いっきり揺さぶられてムリヤリ起こされた。

俺のお腹の上にはエルフ耳の少女がいるんだが。


「 やっと起きた。 もうじきお昼なのですよ! 」


俺の後頭部を、枕に叩きつけ続けた少女は、床に降りてドアに向かう。


「 母様を呼んで参りますね! 」


ニッコリ微笑んでドアを開けると、見覚えのあるふっくらエルフと、見た事が無いエルフ少女。

2人とも固まったまま動かない。


「 母様! 姉さま! ここで何してるのですか! 」


少女に言われて動き始める、2人は少女の母と姉らしい。


「 ごめんなさい、マリの様子が気になってしまって 」


「 もう大丈夫なの? 」


ここにいるのは全員エルフだが、マリオンはエルフじゃ無い。

回復ポーションで身体を拭いたとき、耳が普通なのは確認してる。

でも母と姉と妹はエルフ、複雑な人間関係だな。


着替えさせられてから、食卓に連れていかれた。

俺は捕まった宇宙人じゃ無い、両腕を抱えて運ばないで欲しい。


窓から見える庭には草が一杯生えてる、手入れした方がいいんじゃ無いだろうか。

見た事が無い部屋、見覚えの無い廊下、ここは何処だろう。


居間らしき部屋のテーブルには、ごついおっさんと派手な鎧を着た兄ちゃんが座ってた。


「 おうマリオン! 身体は大丈夫そうだな! 」


ごついおっさんが喋ってるけど無視だ。


ここの家の構造体はレンガ、地震が来たら倒壊しないか心配だ。

地震には鉄骨か木造建築がいいと思うのは、おじさんだけだろうか。

清潔な室内、飾り気のない装飾品、暖炉、冬は寒いのだろう。


「 じゃあ、早速聞かせてくれるか 」  で、俺は何を話せばいいんだ?




王都で発生している連続失踪事件、最初で唯一の帰還者が俺らしい。

共通点は黒髪か黒目の子供、って、マリオンは金髪碧眼じゃなかったか?


ごついおっさんは冒険者ギルドの長、マリオンの母親が捜索を依頼した先がギルドだった。

派手な鎧の兄ちゃんは、なんちゃらって言う貴族の騎士で、なんちゃら家の娘も誘拐されたんだと。



目覚めてから脱出するまでを、正直に話した。

2人を倒したことと、魔道具については隠したけど。


「 では、神殿の地下に閉じ込められていたというのか!? 」


「 そうですね 」


「 信じられん! 」


「 そうですね 」  騎士様は頭が固いのか? 


ふっくらエルフが近寄ってきて、俺を膝に抱え上げた。

この人の家なのかな。


「 ギルドじゃ怪しいと睨んでたんだが証拠が無くてな。 流石に証拠が無いと、神殿には手が出せん 」


何も出来ないなら帰って欲しい、早めに情報を集めたい。

お前達が揃って来ちゃったから、逃げ出した子供がここにいるってバレバレじゃん。

何かしてくるのは確定だ、最悪は夜中に家に火を付けられるぞ。


「 では行くぞ! 」  お? いきなりどうしたおっちゃん。


「 失敗しても子供に騙された俺が馬鹿だった、って事で済ませりゃいい 」


「 しかし、相手は神殿なのだぞ! こんな子供の言葉だけでは動けん! 」


こんな子供だが、中身はおじさんなんだがね。



「 では行きましょうか 」


バカな騎士は放置で。

先手必勝、ファーストルックファーストキルだ。


「「「 !!! 」」」


全員でなに俺のこと見てんだ、ほら行くぞ。


「 先手を打ちましょう。 逃げられたら厄介ですし、証拠を早く手に入れたい 」


「 マリオン! 貴方が行くことは無いのよ! 」


ふっくらエルフさんが心配してくれるが、俺はあんた達が心配なんだ。


「 入口を知っているのは私だけです。 ここで逃がすと母様達が狙われます 」


あいつに、頼まれちゃったんだよ。



「 2人が揃って来ちゃったんで、逃げた子供がここに居ることはみんな知ってるでしょう。 奴らにも知られたはずですから、夜中に家に火を付けられても不思議じゃ在りません 」


馬鹿2人を睨んでおこう。

おっさんはビックリしてるが、兄ちゃんは真っ赤だな。

怒ってるのかな兄ちゃんは。

んでも、もっと脳を鍛えた方が良いと思う、筋肉じゃない方で。


「 神殿全体を抑えるには、人数が必要です。 何人集められます? 」


兄ちゃんは無視だ。


「 今すぐなら、根こそぎ集めても100人だな 」


「 神殿の裏側に、馬車が通れるくらい大きい門がありました。 そちらに主力を置きましょう 」


「 なぜ主力を裏に配置すんだ? 」


「 表に居るのは、顔を見せても良い下っ端だけでしょう。 表の顔は神殿なんですから。 見られたくない奴は裏から逃げるんじゃ無いですかね。 もう、逃げた可能性もありますが 」


「 ふむ 」


腕組みして考えてるけど、おっちゃんどうすんだ。


「 今日、神殿から何かを焼くような煙は上がりましたか? 」


あの2人は、油が朝届くって言ってたから、燃やすのはその後だろう。

みんなの顔を見るが反応がイマイチだ。


「 そういえば。 今日はまだ見てないわ 」


ふっくらエルフは見てないらしい。

窓の外を見ると、庭には二羽にわとりが・・・・・・草ばっかりだ。

にわとりは居ない。


その先には神殿が見える。

庭からだったら、神殿から煙が上がれば間違い無く見えそうだ。


「 まだ間に合うかも知れませんね。 どうします? 」


ライトアロー(改良版)があっても、単独で突入する気は無い。

単独なら夜中にコッソリ行く。


「 直ぐに人手を集めよう、1時間待ってくれ 」


「 遅いですね、20分で。 表に行くのは戦えない人で良いんで、とにかく人数を揃えて下さい。 裏は実力重視で 」


「 判った、30分で何とかしよう 」


おっさんはポケットに手を入れながら、席を立った。


「 マリオン、これを見た事はあるか? 」


おっさんが取り出したのは、黒い宇宙服を着て大きな剣を持ってる人? の絵。


「 あります。 ある男の腕に、これと同じイレズミが掘ってありました 」


「 やはり暗黒邪神教か! 判った、ちょっと待ってろ 」


おっさんは飛び出してったが、騎士は座ってる。

どうすんだこいつ。



|||||



「 何事ですか! ここは女神ニニス様の神殿ですぞ! 」


50人の冒険者ギルド関係者、中には受付嬢も居るらしい、が集団で神殿に来てる。

ギルドを閉鎖して総動員したんだと、裏門は冒険者が抑えてる。

俺は最後尾から女神像のある部屋に入る、右手は母様に、左手は姉様に捕まれてる。

間違いじゃ無い、ガッチリホールドされてる。


「 いなくなった子供の捜索依頼がギルドに来ててな! ちょっと調べさせてもらうぞ! 」


左右に散っていく冒険者、ダンジョンの経験を生かして隠し扉を探すらしい。

見つけたパーティーにはボーナスが出るんだと。


打ち合わせでは、ある程度探して見つからなければ俺の出番だ。


何も無かったら、かなり不味い事になるようだ。

冒険者ギルドに捜査権は無いし、神殿は神聖にして不可侵なんだと。

俺には関係無いが。



結局、隠し扉は俺が開けた。

冒険者の実力の低さにガッカリしたんだが、実力者は裏に行ってるんだと思い出し1人で納得。


扉の在った場所は、触っても判らないほど巧妙に隠されていたが俺には関係無い。

ここに在るのは知ってる。

ショルダータックルで開けるフリをして、ライトアローを1発。

地下への階段が現れた、隠ぺいの魔道具が壊れたか?


「 神殿関係者を全員取り押さえろ!! 」


階段を確認したギルドおっさんの命令で、神殿関係者は全員捕まった。

盗賊でも逃げられない縛り方だから、神官じゃほどけないぞって自慢してたな。

地下にはおっさんと一部の冒険者だけが突入した。



証拠は残ってた。



後始末は王都の衛兵がやるそうだ、犠牲者の家族も集まってきた。

犠牲者の中には貴族の子供もいたんで、衛兵が出動したらしい。

あと、衛兵の話をボーッと聞いてたんだが、ここはスリスターの首都なんだと。

ラナに会えないかな。



|||||



「 母様。 夕飯の前に話しておきたい事が在ります 」


「 あら、なぁに? 」


「 姉様と・・・・・・ 」 妹の名前を知らんかった、妹様は変だよな。


「 全員に聞いて欲しい 」 全力で誤魔化す。


「 私はマリオンではありません 」


こう言うことは、早めに話した方が良い。

後回しにして失敗した経験がおじさんには在る。


「 どういう事なのかしら? 」



俺は死んだが、マリオンに呼び出された事。

マリオンから、暗黒邪神教を潰して欲しいと頼まれた事。

魔王とか勇者とかについては話さない、俺が魔王だってのは嘘くさい。


「 じゃあ、マリオンは死んだの? 」


「 本人はそう言ってました。 彼が最後に見た光景は、例の入れ墨をした男の腕とナイフです。 後ろから首を切られたみたいです 」


リアルな状況は残酷かな? とは思ったんだが、話した方が気が楽になる。

俺の気がな。



「 それじゃあ、ギルドで言ってた ”匂い” って言うのはなぁに? 」


「 マリオンが最後に嗅いだ匂いですね。 犯人の男は、彼にかなり近づいたんでしょう 」


ふっくらエルフが泣いてる、んでも俺には何も出来ん。

そう言えば、この人からは嫌なにおいがしなくなってるな。


「 貴方は誰なの? 」


「 私は・・・・・・誰なんでしょう? 」  ここは全力でごまかす。


「 記憶が無いんですよ、誰なのか。 ここは何処で、私は誰なのか覚えていません 」


「 そうなの 」


「 すみません 」


真っ赤な嘘じゃない、嘘は半分だ。

んで、謝っておく。 結果的には生還したって騙してたんだ。

俺はこの家を出て、1人で生きてったほうが良いのかもな。


「 私は調剤師をしているの、ポーションを作っているのよ 」


泣きながら笑う、ふっくらエルフが痛ましい。


「 ポーション作りは ”家”によって、作り方が違うの。 だから、服に染み込む匂いも違っていてね 」


匂いが違うんだ、味はどうなんだろ。


「 マリオンに謝らないと! あの匂いがする作り方は、私と弟しか知らないはずなの! 」


我が家の秘伝なんだね、知らんけど。



|||||



ふっくらエルフ母はマリア、エルフ少女はマライア、少女を改め幼女はマルセラ。


4人で穏やかに、表面上は穏やかに食事中。

俺は覚悟を決めてる、食事が終わったら出ていこう、んで力を蓄えて暗黒邪神教を潰す。



やっぱり明日の朝に出て行くことにする、もう暗いし。


「 マリオン? 」


「 イエスマム! 」  考え込んでたんでちょっとビックリした。


「 これからどうするつもりなの? 」


「 マリオンとの約束が在ります。 力を付けて、暗黒邪心教をつぶそうかと 」


「 じゃあ先にお風呂ね! 」  なぜそうなる。


血の匂いが全身からするんで風呂は入りたい、入りたいけどなんでこのタイミングなんだ。


「 血の匂いが凄いんですもの! 寝る前にはお風呂に入らないとね 」


その通りだ、なんも言えない。



みんなでお風呂って思ったんだが、マリアさんと2人だった。

血の匂いが落ちるまで何度も洗われたんで、全身ヒリヒリする。

やはり風呂は良いな。


「 あなたお名前は? 」


「 覚えていません 」


「 年はいくつだったの? 」


「 かなりいってましたね 」


マリアさんがジッと見てくる、鑑定持ちじゃないだろうな。

嘘ついたらばれそうだし、不味いかも。


「 記憶が正しければ、55才ではないかと 」


「 55才! まぁ、随分若いのね! 」


「 エルフ基準だとそうなりますか 」  人間基準だとおじさんなんだが。



「 私は380才よ! 」  そんな年には見えないが、エルフだし。


「 マライアは今年で180才だし、マルセラは80才よ! 」  まぁ、エルフだし。


「 マルセラが80才ですか。 子供にしか見えませんね 」



急にホールドしてくるマリアさん、後ろからホールドされるのは嫌いじゃない。

可愛い女の子と、美しい女性限定だが。


「 あの子、マリオンは他になんか言ってました? 」


「 ・・・・・・最後の一言は『 母様をお願い 』と 」


「 そう・・・・・・ 」


マリアさんはよく泣くな、涙腺が壊れたんだろうか。

んでも、息子を亡くしたって思ってたら帰って来て、実は中身が違いますってなったらそうなるか。

俺の娘がそうなったら、俺は泣く自信がある。


しかたが無いんで、頭を撫でてあげよう。

おじさんは女性を慰める方法を他には知らない、特にこの態勢では。

マリアさんの顔は俺の肩に乗ってるんで、手は届くしな。


「 あなたうちの子になりなさい 」



なんて答えたらいい?




マリオンは孤児院に居たらしい。

マリアさんがポーションを届けに行ったとき見かけて、そのまま養子にした。

不思議な感じの子供で、放置できなかったんだと。


こんな事になるとは、思ってもみなかったらしい。

あのまま孤児院に居れば幸せに暮らせたかもって、それは違うだろ。


今の俺は、マリオン以上にほっとけないらしい。

マリオンに対する罪悪感なのか、もう一度やり直したいとか?



「 私はマリオンでは在りません 」


それは聞いたわ、って顔してるけど。


「 彼に 『 母様をお願い 』って言われました。 離れたら守れませんしね、出て行くのは止めようと思います 」


「 あなた出ていくつもりだったの!? そこに座りなさい!! 」


言ってなかったっけ、お説教を受けながらふと思う。

またウッカリだ。


風呂場でのお説教は、俺がクシャミをするまで続いた。

冬じゃなくて良かった。


気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。

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