表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/192

召喚

初投稿となります。 よろしくお願いします。


舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。


・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 魔素シンドロームで寿命を迎える直前に、ミューティションで魔物になったらしい。



|||||



誰かに呼ばれた気がした。




何度も何度も呼ばれたんで、しぶしぶ目を開けると真っ白な世界に金髪碧眼の少年がいた。

おじさんは少年より少女が良い、少女より女性の方が良い。

脚がスラッとしてると文句はない、細いだけの脚は鶏ガラだ。


『 さすがに魔王様ですね。 もう生け贄の女性をお求めとは 』


『 魔王? 俺のことか? 』


周りには誰もいないんで、俺のことらしいんだが理解できん。

言葉じゃ無くて、思考で会話出来るのは理解した。


『 魔王様にやって欲しい事があります。 って言うか、責任取って下さい 』


責任を取れ? これは転生じゃないのか?

まずは確認だ、ベースがあやふやだと先に進めない。



『 君は誰だ? 』


『 貴方の遠い子孫の1人ですよ、魔王様。 勇者と魔王の血を引いています 』


こいつは神じゃ無いと、あと勇者って誰のことだ?


『 どうして俺はここに 『 時間がありません。 僕の話を聞いてくれますか? 』


強引だな。


『 僕は死にました 』 


オマケに自分勝手なやつだな。



|||||



少年が言うには、彼は暗黒邪神教に誘拐され、他の人と一緒に生け贄になった。

死の間際、残った命と魂を代価に魔王を召喚した、暗黒邪神教を滅ぼすために。

お前が責任持って片づけろ。


『 そこは神に祈るべきだろ、なぜに魔王を召喚した 』 


『 神に祈っても、助けてくれませんでしたから 』


なるほど、シッカリした理由は在った。

俺も神は見た事が無いから気持ちは判る、それでも俺は魔王じゃ無い。


『 でだ、俺は魔王じゃないんだが 』


『 初代魔王のはずです 』


『 2代目とか3代目じゃダメなのか? 』


『 魔王は初代だけで、2代目は現れていません 』



『 勇者ってだれだ? 』


『 勇者ラナ様ですよ? 』


と言うと、目の前のこいつは俺とラナの子供?

俺はそんなことは一切していない、何かの間違いだ。


『 嘘か本当か判るはずです 』


『 それは判る。 嘘は言ってないようだが、それが真実とは限らんしな。 俺は魔王じゃ無い、嘘じゃないって判るだろ? 』


嘘は言っていないのは判るが、嘘の情報のみを聞いている可能性も在るしな。

マスコミの情報を信じたがるほど、おじさんは若くない。


『 ・・・・・・とにかく時間がありません。 母様(かあさま)の事をお願いします 』


それだけ言うと、少年は消えていった。

情報も記憶も転生特典も無し、全く自分勝手な奴だ。



|||||



身体のあちこちが冷たい、嫌な鉄臭さもある。

目を開けようとしたが、まぶたが張り付いていて開かない。

手で擦ろうとした時、微かに誰かの声が聞こえた。

動かず耳を澄ましていると、だんだん近づいてくるようだ。


「 ・・・・・・そ に ても ぉ、な で俺たちだけで片付けすんだ? 臭くてかなわねぇ 」


「 しょうがねえだろ、下っ端なんだからよ。 なぁに、明日の朝には油が届くからそれまでの辛抱だ 」


何かを引っぱる音もする。


「 これで最後だ。 さっさと終わらせて、一杯やろうぜ 」


「 その前に金と荷物の整理だよ! 一杯はその後だ! 」


ドサッ   ドサッ


「 これで最後だ。 一休みしたら、金と荷物の整理を始めるぞ 」


「 ったくしょうがねえな! 早く終わらせて、い ぱい り  え・・・・・・ 」


声と足音が遠ざかっていき、何も聞こえなくなった。

しばらく待ってから、今度こそ目を開けるためにまぶたを擦る。


見たくない風景がそこに在った。

冷たかったのは血液、嫌な臭いはそれを失った人たち。


ため息をついてから、ステータスを確認しておく。

おじさんがアクションを起こすには、ワンクッション必要なのだよ。



   名 前:マリオン

   年 齢:10

   称 号:なし

   職 業:調剤師見習い

   レベル: 1

   H P: 2/10

   M P:10/50

   筋 力: 5/ 5

   知 力:12/12

   素早さ:10/10

   器用さ:11/11

   技 術:薬鑑定1   創薬1



俺を呼び出したのはマリオンと言う少年、使える技術はなし。

少しMPが高くて素早い様だが、使える技術は無し。

調剤師見習いだから薬でも作っていたのか、でも使える技術はなし。


( とりあえずここを出よう )


小さ目の石製のプールのような場所に、折り重なって倒れている人とエルフと、ドワーフもいる?

床までの高さ80cmの石の壁には焦げた跡。

さっきの2人は油って言ってたから、ここで焼却するのか。


踏まない様に気を付けつつ、壁に向かう。

上手く歩けない、何度も転びながら何とか到達。

通路から陰になる場所を選んでよじ登る、3回目でやっと成功。


着ぐるみを着ているような感じがする、手足の長さが記憶と違う。

全ての感覚が狂っている、感情回路も働いていないからこの惨状を見ても何も感じない。


( 何も感じない方がいいのか )


屈伸する、肩を回す、腕を曲げ延ばしする。

少しずつ動かせるようになってきたが、歩幅も手の長さも違うんで目測が合わない。



それにしても、2度目の人生のスタートが焼却場とは。

前回も今回も、この世界は俺のことが嫌いらしい。



|||||



薄暗い通路は2mほどで扉に突き当たる、ゆっくり進む、着ていた服は脱ぎ捨てた。

血を吸って重かったし、身体にまとわりつくし、歩くたびにピタピタ音がするし。


服と言っても、布の真ん中に穴が開いた一枚の布だった。

犠牲者全員が同じ服を着ていたから、来ていた服はどこかの部屋にあるはずだ。


『 荷物の整理が先だ 』


さっきの2人組が言ってたしな。



石で出来た通路の壁には、灯りの魔道具が1つ。

突き当たりには鉄の扉、耳を当てて確認するが外から音はしない。


少しだけ開けて隙間から覗いても人影は無し。

ドアを出て左右を確認、左と右どちらに進むか。

右には点々と続く血の跡、左に進むことにする。


( 多分右は殺害現場で、あっちから2人で運んできたんだろうし )


幾つかの部屋を確認し、荷物置き場を見つけた。

服、ズボン、靴下も靴も在るし、持ち物も置いてある。


贅沢にも、回復ポーションで身体を拭いてから服を着る。

柔らかい服を破ってタオルの代わりにした、女性の服みたいだから俺は着ないし問題はない。


身体中の傷が無くなり、服を着たんで人間らしい気持になった。

全裸でいると心が病んでくる。

髪に付いた血は、どうしようもないから放置だ。


回復ポーションは鑑定で見つけた、さっそく薬鑑定は役に立った。

魔力ポーションも在ったんで頂いておく。


( 傷を治して服も着た、ポーション飲んだからHPも戻った )



武器になりそうな物を探してたら、残りの荷物の中から見覚えのある魔道具を見つけた。

かなりくたびれてる(・・・・・・)けど間違い無い。


「 ライトアロー(改良版)か。 これが在れば何とかなる 」


問題は魔道具についてる魔石が、ほぼ透明になってること。

つまり魔力がほとんど残っていない。


魔力ポーションを使ってMPを回復、魔石に魔力を補充する。

2本を使い切って80MP補充した、魔力ポーションは無くなったがこれでいい。

ライトアロー(改良版)が動かなければ、また(・・)焼却場行きだろうしな。



|||||



2人を片付けて、水と食料を手に入れた。

食料は2人の食事だろう、朝食か夜食か知らんけど。


魔道具を手首の外側に付けて2人に近づいた、服の袖で隠して。


「 助けて、お腹が痛い 」


両手でお腹を押さえて、演技しながら接近して1発、ライトアロー(改良板)の貫通力は健在だ。


2人のいた部屋の直ぐ先は行き止まり、覗き窓付きの大きい鉄製の扉がある。

さっきの部屋まで戻り、木製の空き箱と金属の棒を持って扉まで戻る。

扉に近い灯りを消してから、台に乗って外をのぞく。 背が低くて届かないんだよ。

外に灯りが漏れたら目立つから、灯りを消すのは必須だ。


「 何も見えないし、聞こえないか 」


鍵を外してユックリ扉を開ける、やっぱり何も聞こえない。

扉を閉めて暗闇に目を慣らしてから進む、灯りの魔道具が欲しい。


今日は星が綺麗だ、月も2つ出てるからそれなりに見える。

夜なのは判った、月の位置から推測するに深夜近い。


俺は周りを高い壁に囲まれた、大きな建物から出てきたようだ。

壁は越えられないほど高い、門は在るが人影が見えるし強行突破は最後の手段だ。



室内に入り廊下を逆に進む。

焼却場へ続く扉の次には、しっかりとした豪華で大きな木の扉。

扉の先は黒い人型が飾ってある広い部屋、祭壇だろう。

人型は大きな剣を持ち宇宙服のようなものを着てる、嫌な予感がしたから無視だ。


都合が悪くなると、耳が遠くなったり聞こえなくなるのがおじさんだ。

気にしてはいけない。


廊下に戻って更に進むと突き当たりには長い階段、登り切った先には両開きの木の扉。

音を確認してからユックリ開ける。

なんかの女神の神殿だな。


月明かりに照らされても全く神々しくない、神秘さの欠片も無い。

下から出てきた俺にとっては。


どうやってここを脱出するかだが、プランは固まった。

一旦戻って準備しよう。



|||||



「 マリオン! ここで待ってろよ、直ぐに母さんが来るからな! 」


どうやら、このおっさんはマリオンを知ってるらしい。

俺はあんたを知らん。




で、いろいろ準備した。

音がしないように上着のポケット4つに金貨1枚ずつ入れて、両方の靴下に1枚ずつ、合計6枚。

ズボンの両方のポケットに、銀貨を入れた小袋と銅貨を入れた小袋。

長旅には、とにかくお金が必須だ。

宝石なんかの貴金属は無視した、足が付き易いからな。


リュックに食料を詰め、神殿の中で参拝客が来るまでカーテンに隠れて待機。

人が増えてきたら、人混みに紛れてササッと抜け出した。


振り返ると神殿はチョットした丘に建ってた、裏口は丘の裏側のふもとだな。

だから階段を上がった先が、神殿の1階だったんだと納得。

神殿を出たら人の流れに乗って歩き、とにかく神殿から遠ざかった。


上手くいったと思ったんだが、下町の人混みを歩いていたらごついおっさんに捕まった。



んで、冒険者ギルドにいる。

正確にはギルドに併設されてる、飲み屋でジュースを持って座ってる。


この展開は読めなかった。

俺を捕まえたのは冒険者だった、買い物ついでに捕まえたらしい。



「 マリオンちょっと見せてね。 傷は・・・・・・ 」


受付嬢が俺の頭を調べ始めた、そういえば髪についた血を洗い忘れた。

ウッカリだ。

身体は若くなっても、ど忘れは治らないのか?


「 うん。 傷は無いわね、これなら大丈夫! 」


ニッコリ笑いかけてくれるが、どうしたらいいのか判らん。

対応に困っていると背中に衝撃からのホールド、恐らく女性だ。


「 マリ? この血はなに? ケガしたの? 大丈夫? 」


ホールドしたのはエルフ耳で、金髪碧眼のふっくらした女性なんだが、誰だ。


「 傷は大丈夫です 」


「 マリ? どうしたの、本当に大丈夫? 」


「 すみません。 ここはどこでしょう? 僕はマリって言うんですか? 」


「「「 ・・・・・・ 」」」


シンと静まったギルド、『 ここはどこ? 私は誰? 』 作戦は失敗だ。



「 頭にケガをしたのが原因でしょう! 」

「 頭に傷はありませんでしたが 」

「 どう見てもあの子の血でしょう 」


俺を放置して話し始める人々。


「 あの~ 」


「 大丈夫よ! 心配しないで! 」


エルフ耳のふっくら女性に、正面からホールドされる。

嬉しい柔らかさだが、強烈な吐き気と目眩がしてきた。

女性を突き飛ばして離れたが、そのまま床に倒れる。



マリオンが最後に見たがイメージが、強烈に目の前に蘇る。


『 この子は私が魔王様に捧げましょう! ちょっと待って下さい、私の服が汚れるのは困りますからね 』


視界に入ったのは、腕まくりをした腕の内側にある入れ墨。

それとこの匂いと、身体から何かが抜けていく感覚。

エルフ耳の女性から、全く同じ匂いがした。


( ここにも奴らの仲間がいたのか? )


床を這いつくばりながら周りを確認、エルフ耳の女性が近づいてくる。

頻脈と呼吸困難、吐き気と頭痛、これはPTSD(心的外傷後ストレス障害)か。

ライトアロー(改良板)を準備、気持ち悪い、手が震える、狙えるか?


「 どうしたの!? 大丈夫!? 」


「 この、におい は 」


エルフ女性の腕に入れ墨は無い、ではこの匂いは何だ?

おかしな神殿で使ってたお香か?

身体が震えて動かない、気持ち悪い、せめて一撃だけでも。


「 くそ っ 」


目の前が真っ暗になった。



気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ