召喚
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 魔素シンドロームで寿命を迎える直前に、ミューティションで魔物になったらしい。
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誰かに呼ばれた気がした。
何度も何度も呼ばれたんで、しぶしぶ目を開けると真っ白な世界に金髪碧眼の少年がいた。
おじさんは少年より少女が良い、少女より女性の方が良い。
脚がスラッとしてると文句はない、細いだけの脚は鶏ガラだ。
『 さすがに魔王様ですね。 もう生け贄の女性をお求めとは 』
『 魔王? 俺のことか? 』
周りには誰もいないんで、俺のことらしいんだが理解できん。
言葉じゃ無くて、思考で会話出来るのは理解した。
『 魔王様にやって欲しい事があります。 って言うか、責任取って下さい 』
責任を取れ? これは転生じゃないのか?
まずは確認だ、ベースがあやふやだと先に進めない。
『 君は誰だ? 』
『 貴方の遠い子孫の1人ですよ、魔王様。 勇者と魔王の血を引いています 』
こいつは神じゃ無いと、あと勇者って誰のことだ?
『 どうして俺はここに 『 時間がありません。 僕の話を聞いてくれますか? 』
』
強引だな。
『 僕は死にました 』
オマケに自分勝手なやつだな。
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少年が言うには、彼は暗黒邪神教に誘拐され、他の人と一緒に生け贄になった。
死の間際、残った命と魂を代価に魔王を召喚した、暗黒邪神教を滅ぼすために。
お前が責任持って片づけろ。
『 そこは神に祈るべきだろ、なぜに魔王を召喚した 』
『 神に祈っても、助けてくれませんでしたから 』
なるほど、シッカリした理由は在った。
俺も神は見た事が無いから気持ちは判る、それでも俺は魔王じゃ無い。
『 でだ、俺は魔王じゃないんだが 』
『 初代魔王のはずです 』
『 2代目とか3代目じゃダメなのか? 』
『 魔王は初代だけで、2代目は現れていません 』
『 勇者ってだれだ? 』
『 勇者ラナ様ですよ? 』
と言うと、目の前のこいつは俺とラナの子供?
俺はそんなことは一切していない、何かの間違いだ。
『 嘘か本当か判るはずです 』
『 それは判る。 嘘は言ってないようだが、それが真実とは限らんしな。 俺は魔王じゃ無い、嘘じゃないって判るだろ? 』
嘘は言っていないのは判るが、嘘の情報のみを聞いている可能性も在るしな。
マスコミの情報を信じたがるほど、おじさんは若くない。
『 ・・・・・・とにかく時間がありません。 母様の事をお願いします 』
それだけ言うと、少年は消えていった。
情報も記憶も転生特典も無し、全く自分勝手な奴だ。
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身体のあちこちが冷たい、嫌な鉄臭さもある。
目を開けようとしたが、まぶたが張り付いていて開かない。
手で擦ろうとした時、微かに誰かの声が聞こえた。
動かず耳を澄ましていると、だんだん近づいてくるようだ。
「 ・・・・・・そ に ても ぉ、な で俺たちだけで片付けすんだ? 臭くてかなわねぇ 」
「 しょうがねえだろ、下っ端なんだからよ。 なぁに、明日の朝には油が届くからそれまでの辛抱だ 」
何かを引っぱる音もする。
「 これで最後だ。 さっさと終わらせて、一杯やろうぜ 」
「 その前に金と荷物の整理だよ! 一杯はその後だ! 」
ドサッ ドサッ
「 これで最後だ。 一休みしたら、金と荷物の整理を始めるぞ 」
「 ったくしょうがねえな! 早く終わらせて、い ぱい り え・・・・・・ 」
声と足音が遠ざかっていき、何も聞こえなくなった。
しばらく待ってから、今度こそ目を開けるためにまぶたを擦る。
見たくない風景がそこに在った。
冷たかったのは血液、嫌な臭いはそれを失った人たち。
ため息をついてから、ステータスを確認しておく。
おじさんがアクションを起こすには、ワンクッション必要なのだよ。
名 前:マリオン
年 齢:10
称 号:なし
職 業:調剤師見習い
レベル: 1
H P: 2/10
M P:10/50
筋 力: 5/ 5
知 力:12/12
素早さ:10/10
器用さ:11/11
技 術:薬鑑定1 創薬1
俺を呼び出したのはマリオンと言う少年、使える技術はなし。
少しMPが高くて素早い様だが、使える技術は無し。
調剤師見習いだから薬でも作っていたのか、でも使える技術はなし。
( とりあえずここを出よう )
小さ目の石製のプールのような場所に、折り重なって倒れている人とエルフと、ドワーフもいる?
床までの高さ80cmの石の壁には焦げた跡。
さっきの2人は油って言ってたから、ここで焼却するのか。
踏まない様に気を付けつつ、壁に向かう。
上手く歩けない、何度も転びながら何とか到達。
通路から陰になる場所を選んでよじ登る、3回目でやっと成功。
着ぐるみを着ているような感じがする、手足の長さが記憶と違う。
全ての感覚が狂っている、感情回路も働いていないからこの惨状を見ても何も感じない。
( 何も感じない方がいいのか )
屈伸する、肩を回す、腕を曲げ延ばしする。
少しずつ動かせるようになってきたが、歩幅も手の長さも違うんで目測が合わない。
それにしても、2度目の人生のスタートが焼却場とは。
前回も今回も、この世界は俺のことが嫌いらしい。
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薄暗い通路は2mほどで扉に突き当たる、ゆっくり進む、着ていた服は脱ぎ捨てた。
血を吸って重かったし、身体にまとわりつくし、歩くたびにピタピタ音がするし。
服と言っても、布の真ん中に穴が開いた一枚の布だった。
犠牲者全員が同じ服を着ていたから、来ていた服はどこかの部屋にあるはずだ。
『 荷物の整理が先だ 』
さっきの2人組が言ってたしな。
石で出来た通路の壁には、灯りの魔道具が1つ。
突き当たりには鉄の扉、耳を当てて確認するが外から音はしない。
少しだけ開けて隙間から覗いても人影は無し。
ドアを出て左右を確認、左と右どちらに進むか。
右には点々と続く血の跡、左に進むことにする。
( 多分右は殺害現場で、あっちから2人で運んできたんだろうし )
幾つかの部屋を確認し、荷物置き場を見つけた。
服、ズボン、靴下も靴も在るし、持ち物も置いてある。
贅沢にも、回復ポーションで身体を拭いてから服を着る。
柔らかい服を破ってタオルの代わりにした、女性の服みたいだから俺は着ないし問題はない。
身体中の傷が無くなり、服を着たんで人間らしい気持になった。
全裸でいると心が病んでくる。
髪に付いた血は、どうしようもないから放置だ。
回復ポーションは鑑定で見つけた、さっそく薬鑑定は役に立った。
魔力ポーションも在ったんで頂いておく。
( 傷を治して服も着た、ポーション飲んだからHPも戻った )
武器になりそうな物を探してたら、残りの荷物の中から見覚えのある魔道具を見つけた。
かなりくたびれてるけど間違い無い。
「 ライトアロー(改良版)か。 これが在れば何とかなる 」
問題は魔道具についてる魔石が、ほぼ透明になってること。
つまり魔力がほとんど残っていない。
魔力ポーションを使ってMPを回復、魔石に魔力を補充する。
2本を使い切って80MP補充した、魔力ポーションは無くなったがこれでいい。
ライトアロー(改良版)が動かなければ、また焼却場行きだろうしな。
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2人を片付けて、水と食料を手に入れた。
食料は2人の食事だろう、朝食か夜食か知らんけど。
魔道具を手首の外側に付けて2人に近づいた、服の袖で隠して。
「 助けて、お腹が痛い 」
両手でお腹を押さえて、演技しながら接近して1発、ライトアロー(改良板)の貫通力は健在だ。
2人のいた部屋の直ぐ先は行き止まり、覗き窓付きの大きい鉄製の扉がある。
さっきの部屋まで戻り、木製の空き箱と金属の棒を持って扉まで戻る。
扉に近い灯りを消してから、台に乗って外をのぞく。 背が低くて届かないんだよ。
外に灯りが漏れたら目立つから、灯りを消すのは必須だ。
「 何も見えないし、聞こえないか 」
鍵を外してユックリ扉を開ける、やっぱり何も聞こえない。
扉を閉めて暗闇に目を慣らしてから進む、灯りの魔道具が欲しい。
今日は星が綺麗だ、月も2つ出てるからそれなりに見える。
夜なのは判った、月の位置から推測するに深夜近い。
俺は周りを高い壁に囲まれた、大きな建物から出てきたようだ。
壁は越えられないほど高い、門は在るが人影が見えるし強行突破は最後の手段だ。
室内に入り廊下を逆に進む。
焼却場へ続く扉の次には、しっかりとした豪華で大きな木の扉。
扉の先は黒い人型が飾ってある広い部屋、祭壇だろう。
人型は大きな剣を持ち宇宙服のようなものを着てる、嫌な予感がしたから無視だ。
都合が悪くなると、耳が遠くなったり聞こえなくなるのがおじさんだ。
気にしてはいけない。
廊下に戻って更に進むと突き当たりには長い階段、登り切った先には両開きの木の扉。
音を確認してからユックリ開ける。
なんかの女神の神殿だな。
月明かりに照らされても全く神々しくない、神秘さの欠片も無い。
下から出てきた俺にとっては。
どうやってここを脱出するかだが、プランは固まった。
一旦戻って準備しよう。
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「 マリオン! ここで待ってろよ、直ぐに母さんが来るからな! 」
どうやら、このおっさんはマリオンを知ってるらしい。
俺はあんたを知らん。
で、いろいろ準備した。
音がしないように上着のポケット4つに金貨1枚ずつ入れて、両方の靴下に1枚ずつ、合計6枚。
ズボンの両方のポケットに、銀貨を入れた小袋と銅貨を入れた小袋。
長旅には、とにかくお金が必須だ。
宝石なんかの貴金属は無視した、足が付き易いからな。
リュックに食料を詰め、神殿の中で参拝客が来るまでカーテンに隠れて待機。
人が増えてきたら、人混みに紛れてササッと抜け出した。
振り返ると神殿はチョットした丘に建ってた、裏口は丘の裏側のふもとだな。
だから階段を上がった先が、神殿の1階だったんだと納得。
神殿を出たら人の流れに乗って歩き、とにかく神殿から遠ざかった。
上手くいったと思ったんだが、下町の人混みを歩いていたらごついおっさんに捕まった。
んで、冒険者ギルドにいる。
正確にはギルドに併設されてる、飲み屋でジュースを持って座ってる。
この展開は読めなかった。
俺を捕まえたのは冒険者だった、買い物ついでに捕まえたらしい。
「 マリオンちょっと見せてね。 傷は・・・・・・ 」
受付嬢が俺の頭を調べ始めた、そういえば髪についた血を洗い忘れた。
ウッカリだ。
身体は若くなっても、ど忘れは治らないのか?
「 うん。 傷は無いわね、これなら大丈夫! 」
ニッコリ笑いかけてくれるが、どうしたらいいのか判らん。
対応に困っていると背中に衝撃からのホールド、恐らく女性だ。
「 マリ? この血はなに? ケガしたの? 大丈夫? 」
ホールドしたのはエルフ耳で、金髪碧眼のふっくらした女性なんだが、誰だ。
「 傷は大丈夫です 」
「 マリ? どうしたの、本当に大丈夫? 」
「 すみません。 ここはどこでしょう? 僕はマリって言うんですか? 」
「「「 ・・・・・・ 」」」
シンと静まったギルド、『 ここはどこ? 私は誰? 』 作戦は失敗だ。
「 頭にケガをしたのが原因でしょう! 」
「 頭に傷はありませんでしたが 」
「 どう見てもあの子の血でしょう 」
俺を放置して話し始める人々。
「 あの~ 」
「 大丈夫よ! 心配しないで! 」
エルフ耳のふっくら女性に、正面からホールドされる。
嬉しい柔らかさだが、強烈な吐き気と目眩がしてきた。
女性を突き飛ばして離れたが、そのまま床に倒れる。
マリオンが最後に見たがイメージが、強烈に目の前に蘇る。
『 この子は私が魔王様に捧げましょう! ちょっと待って下さい、私の服が汚れるのは困りますからね 』
視界に入ったのは、腕まくりをした腕の内側にある入れ墨。
それとこの匂いと、身体から何かが抜けていく感覚。
エルフ耳の女性から、全く同じ匂いがした。
( ここにも奴らの仲間がいたのか? )
床を這いつくばりながら周りを確認、エルフ耳の女性が近づいてくる。
頻脈と呼吸困難、吐き気と頭痛、これはPTSD(心的外傷後ストレス障害)か。
ライトアロー(改良板)を準備、気持ち悪い、手が震える、狙えるか?
「 どうしたの!? 大丈夫!? 」
「 この、におい は 」
エルフ女性の腕に入れ墨は無い、ではこの匂いは何だ?
おかしな神殿で使ってたお香か?
身体が震えて動かない、気持ち悪い、せめて一撃だけでも。
「 くそ っ 」
目の前が真っ暗になった。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。