旅立ち
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い舞台で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
※また誤字報告を頂きました。 ありがとうございます。
修正は完了しましたが、修正されていないことが時々あります。
誤字の連絡には、全て目を通し修正しておりますので、ご容赦頂ければ幸いです。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 魔星破壊に伴う大規模氾濫に備えて、スリスターへの支援を決定した、女王様が。
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ゴーレムと荷馬車の製造は7日で完了。
最初のゴーレムを造る時には自分達で土を運び、完成したパーツを運んで謁見の間で組み立てる。
1日にエレベータで何回も往復した。
1体完成したら力仕事はゴーレムに任せて、2体目は半分の時間で完成、3体目は更に半分になった。
3体揃ったら製造用魔道具のパーツを造り、訓練場にある第2魔道具研究室(建設中)で組み立て。
作って貰った研究室が無駄にならなくて良かった。
組み上がったら輸送用大型ゴーレムと荷馬車のパーツを造って組み立て。
途中からは指示を出して見てるだけ、楽になるために一生懸命働くのがおじさん流。
他人が見れば、サボってるようにしか見えない様だが知らん。
完成の2日後には積み荷も準備完了、今日はスリスターへの出発日だ。
「 アスターの事を頼むよ、無事に送り届けて欲しい。 これは餞別だ 」
30人の騎士を束ねる隊長に、治療の魔道具を渡してお願いする。
治療用尾魔道具は、今でも女王様が貸与する形になってる。
個人で所有してるのは、ラナと白川さんと河原君、後はメイドさんズ。
まだまだ貴重品だ。
「 お任せ下さい! 命に代えても御守りします 」
積み荷の重要度を考慮すると、護衛は300人でも良いんだが。
多すぎると行軍速度が落ちて狙われやすくなるんで、加減が難しい。
少数精鋭、装備増し増しで行く事にした様だ。
その辺は人選も含めて専門家に任せた、荷台には空きスペースがタップリ在る。
行きは製造の魔道具4台だけだが帰りは1台、残りは山盛りに鉱物を積むつもり。
他にも外交官や貿易担当なんかが付いていくらしいが、そっちも知らん。
「 アスターが居れば、ゴーレムが壊れても荷馬車が壊れても直せる。 役人は餌にしても、置き去りにしても良いからな 」
「 了解しました。 そちらもお任せ下さい 」 騎士隊長が悪い顔してる、これなら大丈夫だな。
重要なのは鉱物を持ち帰る事、今後も継続してだ。
贈り物にする製造の魔道具には制限が在る。
エネルギー源を魔石にしたら出力が不足して、重要な素材の生成が出来なくなった。
鉱物を持ち帰りディスタンドで精錬して輸出。
スリスターは重要な素材を、ディスタンドから輸入し続ける事になる。
魔道具の製造や修理用の部品は造れるんだが、素材は作れない。
「 それで・・・・・・結婚式の事なんですが 」
「 聞いたよ。 おめでとう 」
メイドさんズの1人から結婚して良いでしょうかって、相談を受けた。
お相手は目の前に居る。
「 ありがとう御座います。 この任務を成功させたら胸を張って結婚出来ます。 式には出て頂けるんですよね? 」
「 許可が出たら出席させてもらうよ 」 寿命の神様の許可が出たらだけど。
「 ありがとう御座います。 では、失礼します! 」
笑顔で出発準備に戻ってく騎士の隊長、若いって羨ましい。
俺ももう少し若ければ---って言ってるって事は、もう年だな。
隊長の背中を見送ってると後ろから声がした。
「 失礼します。 少しよろしいですか? 」
「 何でしょう? 」
見覚えが在るような、無いような。
何処かで見た気がするけど思い出せない、脳に幕が掛かってる様でじれったい。
DHAやEPAを摂取すると改善するらしいから、もっとマグロを食べてみよう。
( 波乱様、連絡員の方です )
正解を思い出す前に、ラナが小声で教えてくれた。
そう言えば診療所のベッドに居たな、もっと青白くて痩せてた印象が在ったんだが。
一応握手には応じておこう。
「 ケガから回復されたようですね 」
「 お世話になりました、やっと故郷に帰れます 」
「 しばらくの間は大変でしょうけど、負けないで下さいね。 それと、アスターの事をよろしくお願いします 」
「 お任せ下さい。 必ずスリスターまでお連れします 」
( 聖女様の予言についてなのですが、魔星が無くなるとか・・・・・・本当なのでしょうか? )
( 聖女の予言は絶対です )
( それはつまり、その後の大規模な氾濫も起こると? )
( 間違い無く起きます。 最初の氾濫を乗り越えても、魔物との戦いはずっと続くでしょうね )
( ・・・・・・我が国にお越し頂く事は出来ませんか )
( ラナの生まれた街を見てみたいんですけどね。 私はここを離れられないんですよ )
「 そうですか。 では、スリスターにお越しの際は声をお掛け下さい。 色々とご案内致しましょう 」
一礼して去って行く連絡員、足は義足になった様だ。
ま、帰りは座ってるだけだし何とかするだろ、国に着いたらデスクワークに配置換えだな。
荷馬車の周りは、スリスターに出発する者、準備を手伝う者が行き交っていて混雑中。
もうすぐ出発だ。
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「 ・・・今までの両国関係を見直し、新たな時代の先駆けとして・・・ 」
出発式典が始まり女王様がなにやら訓示してる、真面目な時もあるようだな。
上から水掛けたらどうなるんだろ、やってみたい。
新たな協力体制を築くための第一陣、その団長はアスターだ。
魔道具の製造を知ってる者が行く必要が在った。
俺は行けないから、3人娘から1人を選ぶことになったんだが、悩んだ。
移動途中で氾濫が発生したらどうなるか判らない、でもスリスターの鉱物は必要。
そんな時、アスターが立候補したんでそのまま決定。
何が起きても帰って来るには、積極性が必須だと考えたからだ。
立候補してくれてラッキー、って楽して決めた訳じゃ無い。
壇上では、女王様に紹介されたアスターが挨拶してる。
立派になったものだ、帰ってきたら室長の座を譲る事は決定済み。
女王様の許可は貰ったし、俺はもう役に立たない。
俺はラナと一緒に王城の中から見学、式典には出席していない。
3人を見送った時と同じく見送りだ。
「 ・・・ち下さい 」
「 お身体・・・崩れ・・・ 」
式典中は静かにするのがお約束なのに、城内が少々やかましい。
窓際で式典を見ていた俺とラナの方に、声が段々近づいて来る。
「 何なんだ、式典の最中なのに 」 アスターの晴れ舞台なんだ、邪魔はしないで欲しい。
「 直ぐにお部屋にお戻り下さい! 治療を受けて下さい! 」
振り返ると直ぐそこの廊下の曲がり角で、メイドさん達が誰かを押し戻そうとしてる。
治療って事は相手は患者か、廊下の角の向こう側で姿は見えないが。
患者だったら話は変わる、手伝わないと。
「 何か問題か。 手伝うよ 」
「 ! 波乱様お下がり下さい! 離れて下さい! 」
メイドさん達は、今度は俺を止めようとする。
その隙に角を曲がってこっちに向かって来たのは。
「 賢者? 」
「 助けて くれ。 身体が、 から だ・・・・・・ 」
久しぶりに見る賢者は、見た目がかなり変わっていた。
全身が包帯で包まれていて、ほぼミイラ男。
片手は床に届くほど伸びていて、頭は胸の位置にある。
「 賢者に何が在ったんだ 」
メイドさん達に確認する、感染症なら俺は逃げる。
賢者は一歩ごとに体を変形させながら近づいてくる。
「 答えろ。 何が在ったんだ 」
ラナを体の後ろに隠す。
「 判りません、しばらく前から体調が悪いと仰られて。 ハイヒールもポーションも効かなくて 」
「 たすヶて・・・・・・ 」
それが最後の言葉だった。
賢者は肌色と赤色が混ざった粘液になった、俺の前で。
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B4Fのポッドで、桶で運んだ賢者だった物の一部を解析中。
製造の魔道具で解析すると、タンパク質とかカルシウムとか表示されそうだし。
『 病的異物は存在しません。 一部の細胞に魔素による損傷が存在します 』
「 病的異物は無し、病気じゃ無いと。 でも細胞の一部? 全部じゃ無いのか 」
『 魔素の影響を受けていない細胞も存在します。 正常な細胞が影響を受けた細胞を拒否した結果、身体中の細胞が崩壊したと思われます 』
「 過去に類似した症例は 」
『 魔素による強化が不十分だったケースで同様の結果が出ています 』
「 ポッドによる召喚者の調整結果を出してくれ。 一番新しいデータだけだ 」
『 表示します 』
ポッド1:成功
ポッド2:成功
ポッド3:成功
ポッド4:成功
ポッド5:オフライン
「 ポッド4は故障していたはずだが 」
『 記録では成功になっています 』
「 ポッド4の修理内容を表示 」
『 表示します 』
魔力調整回路を修理してるな、正常に終わるハズは無いんだが。
「 修理前の魔力調整回路で調整した場合、同様の症状が発生するか? 」
『 ポジティブ 』
「 他のポッドで同様の症状が出る可能性は 」
『 ポッド5を除き、極小ですが存在します 』
「 了解、サンプルの処分を。 分解後のサンプルは、細胞1つも施設内に残すな 」
元賢者だった物で作った服は着たくない、シャンプーやリンスも使いたくない。
『 了解しました。 素粒子化し施設外に投棄します 』
ポッドの中の賢者だった物が消えていく。
さよならだな賢者。
白川さんと河原君に魔道具で連絡、出発式典は終わったらしい。
細胞崩壊の件を話しておくとしよう。
気付かれた点などが在りましたら、読後の感想をお待ちしています。