暗黒邪神教の最後
初投稿となります。 よろしくお願いします。
舞台設定を簡単に、出来る限り狭い範囲で進める予定です。 戦闘シーンや格闘シーンが苦手ですので、極力少なくしていきます。
・変なことに巻き込まれ、気が付いたら牢みたいな部屋の中。 異世界で、魔道具を改造出来る技術を手に入れる。 地下施設を利用して、魔星の迎撃を試みる事にした。
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謁見の間。
王座に左手を置いた女王が、眼下の兵に問いかける。
「 ここで、何をしているのですか! 説明しなさい! 」
問いかけに答える者はおらず、時折金属が擦れる音だけが微かにしてる。
エレベータの中でもモニターしてたんだが、これは完全に出待ちされたな。
扉が開くと、休憩中の兵が陣形に戻ったし。
彼らの目線は全部俺に集まってる、目立つのは判っていた。
んでも、俺の左手に女王様がしがみ付いてるのは、打ち合わせに無い。
防護服を完全に装備すると技術の発動まで阻害するんで、今は左手だけ手袋をしていない。
それを*隠すため、さりげなくキーを入れておくポケットに手を入れてた。
これなら技術が発動出来る、おじさんは同じ失敗を繰り返さないのだよ。
と思ってたんだが、女王様が腕を絡めて来て、そのまま引きずられて王座の横に立ってる。
エスコートするつもりは全く無いんだが、引きずられた。
女王様もかなり筋力が有るな、これは。
「 どうしたのです、答えなさい宰相! そこに居るのは判って居ます! 」
女王様もエレベータ中のモニターで見たから、宰相が謁見の間の外に居るのは知ってる。
俺は今も防護服のモニターで見てる---どうやら出てくるようだ。
「 これはこれは、女王様。 無事に御神体を手に入れられた様で、何よりです 」
「 答えなさい、これはどういうつもりですか! 」
「 御神体を渡して頂きましょう。 それは我が暗黒邪神教 教徒の物--- 」
宰相が何か言ってるけど興味ない。
眼下には剣や槍を構えた兵が200人居るんだが、恐怖や圧力は感じない。
現実味が無いと言った方が正しい。
王座の前には階段があるんだが。
ここから女王様を蹴落として、皆が驚いている間に攻撃するのはどうだろう。
人としてはやってはいけないと思うのだが、やっても良い気がする。
女王様が何か言ってるけど、俺にはやる事が無い。
とにかく暇だ。
まぁ時間稼ぎには成功してるんで、文句は言わないけど。
( 波乱様。 準備が整いました )
ラナが小声で報告してくる、どうやら準備が出来たようだ。
いきなり本番はリスクが大き過ぎるんで、ライトシールドの大きさと消費魔力を確認させてた。
王座の後ろで隠れてやれば、目立たないから大丈夫だろうって思ったんだよな。
( あんがと。 で、シールドの大きさは? )
( 最大で横60cmで縦100cmです。 30分程は保つと思います )
30分か。 長いのか短いのか判断が難しいな。
( じゃあ、俺が撃ったら始めてくれるか )
( 波乱様? 何をやってるんですか。 今、大事な所なんですよ? )
( 女王様、いつでも始められますよ。 どうします? )
( もう少し待って下さい。 確認したいことが在りますので )
( ・・・・・・あいよ )
兵力比は20倍以上ある、先制攻撃して数を減らすべきなんだが。
「 ・・・私はこの日のために何年も準備し・・・ 」
まだ宰相が喋ってる。
( 今、”私の” って言いましたよね? )
女王様が小声で話し掛けて来る。
( 言いましたね )
( さっきは ”我が” って言ってましたし、彼が首謀者ですよね? )
( その可能性が高いですね )
宰相みたいなタイプの奴は、自分が中心だと誤解しているケースがある。
下っ端なのに ”我が” とか、”私の”って言う奴が居るから注意が必要だ。
それに、俺は責任は取れないから判断は任せる。
モニターで確認すると、柱に隠れてる兵はライトアロー(改良版)を何時でも撃てる態勢だ。
もう奇襲は出来そうもない。
初めて対人戦に向かう河原君が、緊張していないかちょっと気になる。
今のところ大丈夫そうだが、待機状態が長引くとどうなるか。
早めに済ませたいところなんだが。
そろそろ飽きて来たんで肘で女王をつつく。
「 私は御神体を手に入れ、 『 随分と兵を集めたようですが、これで足りますか? 』 充分でしょう? 」
「 用意できる兵力を全て投入して、圧倒的な力で完璧に勝利する。 私は慎重なのですよ 」
宰相のドヤ顔が気に入らない、これが終わったら丸刈りの坊主にしてやろう。
モヒカンも良いな。
「 さぁ、これが最後です。 貴方が死体になってからでも、手に入れられるんですよ? 」
( 波乱様。 宰相の兵力はこれで全ての様です )
( その様ですね。 それで? )
( 初めて下さい )
( 了解 )
最前列の兵は全員魔剣を持ってる、これを遠隔操作と魔道具破壊で全部壊す。
柱の裏でライトアロー(改良版)の魔道具を構えてるけど、これも壊しておく。
モニターには、他にも魔道具を持ってる奴が見えてるんだが遠隔操作の範囲外。
手を出せないんで、ライトシールドさんに期待するとしよう。
左手を女王様から自由にして、ライトアロー(改良版)で宰相を撃つ。
腹を狙ったんだが、膝を掠めただけだ。
それでも、膝から下が変な角度になった宰相は床に倒れ込む。
それを合図にして、侍女の2人が女王様の前へ出てライトシールドを構える。
ラナとメイドさんズは俺の右側へ、河原君たちは左側へ展開して、それぞれライトアロー(改良版)を撃ち始める。
先に右側を叩く、左はその後だ。
白川さんは一番後ろで待機、治療に専念して貰わないとな。
王座の後ろに居るから下からは見えないから、安全なはず。
ライトアロー(改良版)は、盾付きの全身鎧でも2人は貫通する。
魔力は魔石から供給されるから、発動までが短い。
王座の前の兵は全員床に倒れた、10秒も掛かって無い。
後は、左右の柱の陰に隠れてる奴だけだ。
『 ラナ 』
そう言って、右の柱にライトアロー(改良版)を1発。
「 はい、波乱様 」
ラナとメイドさんズが、指示した柱に集中射撃。
3秒程で柱がボロボロになり崩れ落ちる、床には赤い染みが広がる。
モニターで排除を確認したんで次の柱を指示、順番に潰していく。
『 右側は排除完了。 左側を奥から攻撃 』
ここから見ると奥だけど、入り口には一番近いんで逃げられる前に片づける。
ライトアローが何発か飛んできたが、ライトシールドで全部防げた。
1分後には、謁見の間を掌握完了。
うめき声が聞こえるから、生き残りは居るようだが無力化は完了。
「 女王陛下! ご無事ですか! 」
10人の衛兵が謁見の間に飛び込んできたんだが、終わった頃に来るのはお約束なのか。
隊長らしき人物が、女王様の前で跪く。
「 私は無事ですよ、召喚者様に守って頂きましたから。 それにしても、随分遅かったようですが? 」
「 申し訳御座いません。 正門周辺に住民が集まって来ており、そちらの対応で遅くなってしまいました 」
「 民が集まっていると? 」
「 はい! 正門前に集まり、城内に入れろと騒いでおります。 集まった民の総数は1万近いと思われます 」
隊長の後ろでは、元宰相が衛兵に捕まってる。
これから事情を聞くんだろうな。
それより、そろそろ防護服を脱ぎたい。
服のカバーを下から外して行くと、ラナが下からカバーをしてる。
それじゃ、脱げないんだが。
『 ラナ。 服を脱ぎたいんだが? 』
「 波乱様。 着たままの方がよろしいと思います 」
『 理由を聞いても? 』
「 魔素の影響が少なくなります。 波乱様の体調が悪くなるのを遅く出来ます 」
『 ・・・・・・そうだね。 もう暫く着ていようか 』
ラナが嬉しそうに頷いてるんで、もう少し着ていよう。
ボンベが3時間しか保たないから、切れる前には脱ぐけどな。
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「 久保山さん・・・・・・ 」
『 あれが久保山君なのか? 』
「 そうっす 」
『 本当に久保山君なのか? 』
「 間違い無いっ・・・・・・す 」
正門が破られそうだって言うんで、お手伝いに来たんだがチョット遅かった。
俺たちが正門に着いた時には、住民の一部は正門を抜け城内に入ってた。
その先頭に久保山君らしき人影がいて、城内の衛士と戦闘中。
それぞれの腕に1本づつ、4本の剣で衛士を圧倒してる。
モニターで拡大すると、黒目と白目が逆になってるな。
『 久保山君は変わった奴なんだな。 初めて見るタイプだ 』
「 ・・・・・・ 」
『 ラナ、足りなくなったら使ってくれ 』
「 はい、波乱様 」
ライトアローの魔道具を、ありったけラナに渡す。
ライトアロー(改良版)は、謁見の間で魔石の魔力を消耗してる。
足りなくなったら使うしかない。
敵10000人としてこっちは10人、両手で使って魔道具は20台。
ライトアロー1発で4~5人貫通するとして、100発撃てれば残りは何とかなるだろ。
一緒に来た隊長に、正面から待避するようにお願いしておく。
残っても良いけど、誤射しても責任は取れない。
俺が前に進むと久保山君も民衆も動きを止めた、防護服は目立つな。
足止めしてた衛士が左右に散り、俺の50m前には久保山君と民衆。
俺の後ろでは、左右に大きく散ったメイドさん達がいる。
モニターで見ると、ライトアロー(改良版)を持った衛士も20人位参加してるな。
これなら何とかなるか。
久保山君の腹部をライトアロー(改良版)で撃つ。
それを合図に、後方から民衆へ降り注ぐ光のシャワー。
『 何とかなりそうだな 』
「 はい、波乱様 」
ラナはいつでも一緒に居てくれる。
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