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黒を被った弱者達  作者: 南波 晴夏
第1章
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9. 高津には関係ない

「高津、部活行こー」


「おー」


月日が流れ、あっという間に1月になっていた。

里宮たちと出会ってから、もうすぐ一年が経とうとしている。


冬休みも終わり、もうすぐ高校2年生だ。

そんな中、俺たちは関東大会を控えていた。


『ダンッダンッ』


「くそぉ、里宮! 次はぜってー止めてやる!」


里宮の目の前でディフェンスをするのは、2年生のキャプテンだった。

相変わらずの無表情で里宮はクルクルと体を動かして片手でシュートした。


「くっそー!」


「あれ、センパイ、いたの」


「うわくそムカつく……!」


もちろん先輩に対しての態度もヒドイものだった。

けれど里宮にはそれ以上の戦力があった。

先輩達も里宮というエースがいるからか、今年初出場の関東大会にも期待をしているようだ。


俺達1年生の中から試合に出られるのは、もちろん里宮だけだ。

本当は1年生をこんな大事な試合に出すなんてことはあり得ないのだが、里宮は特別なんだろう。


確かに、里宮が試合に出れば少なくとも1、2試合は勝つことができるだろう。


試合に出ない1年生は端でシュート練習、試合に出る2年生(+里宮)は1on1 でディフェンスとオフェンスの練習をしていた。


そもそも、関東大会に出られるのは里宮のおかげなのだ。

前回の大会で里宮が大活躍し、勝ち進むことが出来たからこそ、関東大会に行くことができるのだ。


それだけこの雷校バスケ部で、里宮は大きな存在だということだ。

里宮は、やっぱり他の誰とも違う特別な存在なんだ。




* * *




「里宮」


相変わらずの無表情で振り向いた里宮は、ぶん投げるような口調で一言「何」と返事をした。


部活が終わったにも関わらず部室を出ようとしない里宮に少し異変を感じた。


「何って。帰らないのか?」


小さく息を吐いて言うが、里宮はなにやらノートを見つめていて俺の方なんて見向きもしない。


「あぁ、今日はちょっと残って行くから先に帰っていいよ」


「何してんだよ」


「別になんでもいいでしょ。高津には関係ない」


最後の一言にイラッとした俺は「そーかよ」と言って部室のドアを閉めた。


なんなんだよ、里宮のやつ。そろそろ夢の関東大会だってのに。


……俺は出られないけど。

固く唇を噛み、目についた小石を思い切り蹴った。


「クソッ……いいな、里宮は」

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