7. テキトー教師
里宮たちの中にもすっかり打ち解け、落ち着いた生活が続いていたある日。
いつものように部活着に着替えて体育館へ行くと、そこはしんと静まりかえっていた。
どうやら一番乗りらしい。
ボールを準備しようと倉庫に近づいて行くと、倉庫の中から教師のものらしき声が聞こえた。
説教かな……。
俺は小さく息を吐いて自分の荷物の近くに座った。
部活で使う人がいるんだから他のところでやってくれよ……。と心の中で文句を言っていると、後ろにあった体育館のドアがガラッと開いた。
反射的に振り返ると、そこに立っていたのは里宮だった。
なんの準備もせずに座っていた俺に、里宮は不思議そうに小首を傾げた。
「どしたの高津。やらないの?」
「あ、誰か倉庫で話してるっぽくて、ボール取れなくて……」
それを聞いた里宮は呆れたように大きなため息を吐いて荷物を置き、俺の手首を引っ張って倉庫の前までやってきた。
「ちょ、里宮」
ドアを開けようとした里宮を慌てて止める。
「なに」
「やめといた方が……説教かもしれないし」
たしなめるようにそう言うと、里宮は“納得できない”という風に顔をしかめた。
「説教だったらなんだっていうの。こんなとこで話してんのが悪いんだし」
そう言うと里宮はなんのためらいもなく倉庫のドアをガラッと開けた。
そこにいたのは二人の男子生徒と一人の教師だった。
「岡田っちどいてー。そこすげーじゃま」
そのかわいらしい外見とは裏腹に言葉遣いが荒い。
“岡田っち”とは俺たち1年A組の担任であり、男子バスケ部の顧問のことだ。
本名は岡田 勝一。
今までに見たこともないほどのテキトー教師で、本当に教師と呼べるのかどうかすら危うい。
けれどなんだかんだでホームルームは楽しいし、俺も里宮たちも岡田っちのことは気に入っていた。
「里宮! 教師に向かって“邪魔”はないだろー。あとタメ口やめれー」
そう言った岡田っちは、“しかえし”と言わんばかりにわざとらしく里宮を見下ろして言った。
「里宮は相変わらずちぃせぇなぁ〜」
それを聞いた里宮の表情が一変する。
俺はハラハラしながら二人のやりとりを見守っていた。
正直もう逃げ出したい。
「黙れ勝一」
里宮の発した一言に、俺は驚いてむせた。
もはやタメ口の次元を超えている。
「『勝一』って、『勝一』ってなんだと里宮!」
駄々をこねる子供のように喚く岡田っちに、俺は思わず心の中でツッコんだ。
いや、『黙れ』はいいのかよ。
そんなことを思っていると里宮が面倒くさそうに大きなため息を吐いた。
「そのへんどーでもいーんだけど、本当に邪魔。そーゆーのは他所でやってくんない?」
そう言ってなんとか岡田っちをどかせてボールをゲットした里宮を、改めてカッコいいと思った。
チビのくせに気が強くて、いつも上目遣いに誰かを睨んでいる。
俺と違って、戦うことを恐れない。
……“里宮みたいになりたい”