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黒を被った弱者達  作者: 南波 晴夏
第1章
18/203

18. そんなわけあるか

翌日。


昨日は学校を休んでの試合だったから、今日が今週はじめての学校だ。


「おはよー、高津!」


教室に入るなり、ちょんまげの長野が片手を上げる。


「おはよ、長野。朝から元気だなー」


長野のちょんまげを突きながら言うと、長野はおもしろおかしく「あはは! うっせ!」と笑った。

そんな会話をしていると、女子達の小さな話し声が聞こえた。


「やっぱバスケ部かっこいーよねー! 関東大会、2試合も勝ったって!」


「え? 初出場でしょ!?」


「それにしても、やっぱイケメンカラスかっこいいわ〜」


「てか、里宮さんってイケメンカラスの誰と付き合ってんだろー」


「知らなぁ〜い。でも、いつも一緒にいるよね〜」


いや、試合の情報早ぇな。つか、丸聞こえなんですけど。

席に着くと、隣で突っ伏して寝ている里宮が目に入った。いつもならチョップで起こす所だが、流石に今日はやめておこう。

連日の試合で、そうとう疲れているのだろう。


「でも、見た感じ高津くんと付き合ってそーだよねー」


「あ、それわかる〜。一番仲良いもんね〜!」


そんなわけあるか。


里宮にだって、好きなヤツくらいいるだろ……。

俺は、里宮の寝顔を見た。

いや。この、里宮が……?


ナイナイナイ。




* * *




「……どーすんだ? この状況」


五十嵐が苦笑いをしながら言う。

そんなこと言われても、俺は「さぁ……」と答えることしかできない。


俺たち4人は、机に突っ伏して寝ている里宮を囲んでいた。


流石に待っていられず、着替えは先にしたのだが、教室に戻るとなんら変わりなく眠っている里宮が目に入り、「嘘でしょ!?」……ということになったのだ。


「流石に起こした方が良くねぇ? 部活チコクじゃん」


長野が言う。


「でも、里宮は関東大会ですごい活躍してたし……。

疲れてるから、許されるんじゃないか?」


川谷が人差し指を立てて提案する。


「でもなぁ……」


俺が頭を掻いて呟くように言うと、五十嵐が「里宮をこのまま一人で教室で寝かせといて大丈夫なのか、ってとこだな」と腕を組んで言った。


その言葉に全員が頷く。

と、その時……。


『ガラッ』


「うおっ。びびったお前ら何してんの?」


キョトンとした表情で教室に入って来たのは岡田っちだった。


「あ、ちょーどいいや岡田っち! 里宮が起きないんだけど、保健室に運んどいてくんない?」


五十嵐が言うと、岡田っちは「は!?」と目を丸くした。まぁ、当たり前か。


「よし、皆部活行こうぜ!」


長野が少しいたずらっぽく笑った。


「は!? ちょ、待てよ!」


後ろから聞こえる岡田っちの声を無視して、俺たちは笑いながら廊下を駆けて行った。




* * *




……あれ?

なんで私、上向いて寝てるんだっけ?


あぁ、ここ、保健室か。

誰かが、運んでくれたのかな。



『蓮! やったね、勝ったね! おめでとー!!』


『次、頑張れば良いんだよ』



……久しぶりに、思い出してしまった。

そのせいか、随分昔の、懐かしい夢を見ていた気がする。


……忘れる筈のない、悪夢だ。

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