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お前のために  作者: 怠け者
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嫌われ者

俺は所謂嫌われ者という類の人間だ。


親は幼いときに大喧嘩をしたらしく離婚し、母が1人で育ててくれたのだが、仲は良くない。家にいる時は基本無視をされるか、投げやりに命令されるかだ。


通っている高校でも目付きが悪いだの、覚えのない噂のせいで素行不良だのと教師に色眼鏡で見られたり、同じ学校の奴には疎まれるし喧嘩を売られる。


その喧嘩を買う俺も悪いが、頭に来たのだからしょうがない。ああいう奴等はいけ好かない。


道を歩けばヤンキーに絡まれる。理不尽に殴られるので殴り返して、結局騒ぎになって学校の教師に知られて処分をくらう。今のところ、あと一回問題を起こせば退学だそうだ。


動物にも嫌われているようで、猫を撫でようとすれば爪で引っ掻かれるし、この間なんて知らん顔して足を踏まれた。わざわざご丁寧にその辺の泥をぶっかけていきやがった。


犬には咆えられるし、鳥には目の前に糞を落とされた。直撃しなかっただけ良いけどな。


とにかく俺は、あらゆるものに嫌われている。


そしてやっぱり、その反対であらゆるものに愛される人間って言うのも存在する。


それなりの家庭で不自由無く育てられて、優しい両親が居て、常に友達に囲まれて、教師にも期待されて、勉強ができて、部活動でも良い成績を残して、努力家で、性格だって良い。


俺がどんなに背伸びしても届かないくらいの奴。羨ましいと思ったことが何度もある。


さぞ幸せな人生だろうな。お前の人生に不可能なんて言葉は無くて、俺のような嫌われ者の気持ちなんて分からないだろうさ。なんて、みっともなく妬んだりして。


あぁ、嫌になる。同じ人間なのにこうも差があるのか。


いつものように、学校の屋上に侵入してフェンスの近くで寝転がる。青い空に漂う真っ白な雲になりたいなんて馬鹿げた妄想が脳裏を過る。


劣等感の塊となった感情を吐き出すように息を吸って膨らんだ腹に力を込めた。空気が急速に流れる音が耳の中で轟いて呆然とする。


なんだろうこの虚無感。何もしたくない。


微動だにせずにその場でいると、普段誰も訪れない屋上の扉が開いて誰かが入ってきた。

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