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24-4.○×クイズ

 ヴィクトーリアがそうであるように、恐らくヘンリエットも美人だろう。得だ。後で写真を見せて貰おう。


 女王様に向いていない性格だというのもマゾヒストでない自分にとっては得だろう。


 甲冑写真を見て気に入ってくれたというのも得だ。価値観は近い方が良い。


 持参金が攻守同盟というのも得だ。


 一方のデメリットは……何も思いつかない。


 だが、気になることはある。自分の女性関係だ。


 現在でも、クレア、麻衣、ソレルとは頻繁に〝合体〟を繰り返しているのに、婚約者を作ってしまっても良いものなのか? 


 確かに、彼らに限らずほとんどの悪魔は「魔界では現実世界の法律や規範は通じない」という趣旨の発言をしている。しかし、だからといってヘンリエットという女性が自分の乱れた性関係を許すとは限らない。


 女尊男卑国との攻守同盟は、喉から手が出るほど欲しいが、黙っていたり嘘をついて後で揉めるのは嫌だ。


 志光が女性関係について言うか言うまいか悩んでいる間に、椅子から立ち上がった仕伏は、○と×の描かれたプレートを、クレア、麻衣、ソレル、茜にそれぞれ一枚ずつ配布した。続いて彼は大きく手を叩いて執務室にいる悪魔たちの注目を集める。


「さて、ソフィア女王様からの言づてを言い終えたところで、ここにいらっしゃる女性の皆さまには○か×かで私の質問に答えていただきます。お聞きいただいたとおり、ヘンリエット様の持参金は前代未聞と言っても過言ではありませんが、もちろん女尊男卑国としては無条件でこのような大盤振る舞いをするつもりはありません。あくまでも、地頭方志光様が、ヘンリエット様の将来の夫として相応しい男性である、という前提に基づいております。そこで、普段から彼の周りにいる皆さまに、色々とお答えいただきたいと思います。正直に、正直にお願いしますよ!」

「え? ええ? 何? 何が始まったの?」


 唐突に始まった質問コーナーを前に少年はうろたえた。だが、プレート渡された四人の女性達は特に驚きもせず、偉丈夫に対して了解の意図を告げる。


「それでは、第一問! 地頭方志光氏は童貞ですか?」


 全員から了承をとった仕伏は、一つ目の質問を発した。そのあまりにも露骨な内容にヴィクトーリアが腹を抱えて笑い出し、彼女の股間を窃視していた湯崎は慌てて這いつくばっていた位置を変える。


 一方、四人の女性達は一斉に×のプレートを挙げた。目を見開いた志光は女性陣に顔を向けてから仕伏に質問する。


「この質問、そんなに大事なことですかね?」

「もちろん、生涯を通じて童貞を貫くというのも、人生の選択肢であることは否定致しません。しかし、ヘンリエット様には年相応の性欲がございます。しかも、女王への道を拒絶するほどの引っ込み思案です。つまり、ヘンリエット様の伴侶となる以上は、ベッドの上でイニシアティブを発揮していただかなければ困ります。童貞では困るんですよ。私は何か間違っていますでしょうか?」


 仕伏は志光にぐいぐいと顔を押しつけてきた。しかも目が据わっている。


「……いや、ないです」


 気圧された少年は偉丈夫の言い分を飲んだ。すると仕伏は一転して満面の笑みを浮かべると背筋を伸ばし、クイズの続きを再開する。


「御本人から了承を得られたので、第二問目にいきたいと思います。この中で、実際に地頭方志光氏と肉体関係をもった経験のある方はいらっしゃいますか?」


 偉丈夫の質問に、茜を除いた三人が○のプレートを挙げた。


「ふうん……眼鏡には手を出してないんだ」


 ヴィクトーリアは横目で茜を見るが、眼鏡の少女は身じろぎ一つしない。


「では三問目。二問目で○を挙げた人だけ答えて下さい。皆さんは、地頭方志光氏との性生活に満足していますか?」


 三人が掲げたプレートは引き続き○だった。仕伏は少年の顔色を盗み見ながら四つ目の質問を口にする。


「では四問目。地頭方志光氏とヘンリエット様がご成婚されても、関係を続ける気はありますか?」


 ソレルは迷いなく○のプレートを掲げた。クレアと麻衣はお互いの顔を見合わせてから○のプレートを挙げる。


「それでは最後の質問です。皆さんはヘンリエット様を地頭方志光氏の本妻と見なしますか?」


 五問目に対する回答は、茜も含めて全員が○を選択した。


「ありがとうございました。こちらからの質問は以上です」


 仕伏は深々と頭を下げた後で、志光に向き直る。


「私は貴男をヘンリエット様に相応しい男性であると認めます」

「あの……僕が言うのもおかしいんですけど、ソレルも麻衣さんもクレアさんも僕が結婚した後でも僕と関係を続けるって宣言しているのは、仕伏さん的にOKなんですか?」

「我が国では、一人の女王に対して八人から一〇人の男性が傅くのが習わしです」

「ああ……つまり、僕が複数の女性とつき合っていても、何の問題もないと?」

「ソフィア女王様も、私も気掛かりなのは、ヘンリエット様の地位です。結婚した直後に持参金だけ奪われて脇に追いやられるのでは意味がありませんからな」

「それで本妻として認めるかどうかを訊いたんですね?」

「仰る通りです。納得していただけましたか?」

「はい」

「それでは、続いて魔界日本から女尊男卑国への質問を承ります。どなたでも、遠慮なさらず、手を挙げて下さい」


 仕伏の言葉を聞いた志光は唇を舐めた。


 相手は明け透けな質問を連発していたが、こちらも同じような問いかけをすべきだろうか?


 たとえば「ヘンリエットさんは処女ですか?」などはどうだろうか?


 ……駄目だ。そんな質問をする奴は、処女鑑定士にしか思われないだろうし、そもそも自分は相手の女性が処女かどうかを気にしたことがないので、気にしていると思われるのも嫌だ。


 では「ヘンリエットさんは頭が良いですか?」はどうだろうか?


 ……駄目だ。頭がいい女性でなければ嫌だと思われたら学歴偏重主義者のようだし、馬鹿な女が好きだと思われたら、女性に対して必要以上に怯えているように受け取られるに決まっている。


 志光が二度目の黙考に入ると、彼の様子を見ながらソレルが手を挙げた。


「どうぞ」


 偉丈夫に指差された褐色の肌は、椅子から立ち上がると妥当な質問を口にする。


「ヘンリエットさんの年齢は? 私は彼女が本妻になっても、地頭方志光の愛人を続けるつもりなので、少しでも良いから個人情報を知りたいのよ。常識的な組み合わせなら、本妻より愛人の年齢が若いんだけど、ヴィクトーリアさんを見る限りはそんな感じでは無いわよね?」


 ソレルの話を聞いた仕伏は、ヴィクトーリアと視線を交わした。ツインテールが頷くと、彼は褐色の肌に向き直る。

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