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誰にでも特別な日があると思うのです。それが、私にとって今日なのです。
「今日は、何の日でしょうかぁー!!」
ウキウキした気持ちを隠せずに、目の前の人物に目隠しをする。
突然、大きい声を出して、目隠しをした私にびっくりした彼。
「おい、やめろよ! いきなり、何するんだよ!」
「ふっふっふっ…」
目隠ししたまま、いたずらっ子の様に笑う。
「もう、いい加減 離せよ!!」
私の手を強引に自分の目から離す。
「本当に何なんだよ・・・ 先週、いきなり今日暇なのかメールしてきて。 せっかく、来てやったのに、その態度はなんだよ。」
「えっ? マジで気付かないの?」
少し、焦る私。
「だから、何?」
不思議そうな顔をする彼。
「えっ? えっ? マジっすか・・・ここで、二郎くんに問題です! ちなみに、今日は何の日でしょーか?」
「今日? そんなの決まっているじゃん!」
自信満々な彼。
そんな彼を見て、私は喜んだ。 彼の返答を聞くまでは・・・
「良いツナの日!!!」
彼は、私の好きな笑顔で答えた。
「良いツナの日ぃー!? なんじゃそりゃ!! 違うー! 全然、違うよー!!」
予想外の彼の返答に、思わず涙が出そうになった。
「何、泣きそうになっているんだよ! 良いツナの日じゃないのかよ。」
泣きそうな私を見て焦る彼。
「もう、いいよ・・・ 二郎くんの事なんか知らないから!!!!!!」
私は、自分の誕生日を忘れられていた事が悲しくて、思わず 駆け出していた。
「ちょ・・・ちょっと、待てよ!! 七緒!!!!!!」
二郎くんの私を呼ぶ声を背に感じながらも、無視して行く。
がむしゃらに走った私の前には、綺麗に飾られているクリスマスツリー。
「そっか。 ハロウィンが終わったから、次はクリスマスか・・・」
キラキラと光るクリスマスツリーが、今はとても眩しく感じる。
今日は、ただ・・・二郎くんに「誕生日おめでとう!」って言って欲しかっただけなのに。
何でこうなっちゃったんだろう・・・
周りを見れば、幸せそうなカップルばかり。
私も彼らの様に、二郎くんと二人で楽しく過ごしていたはずなのに。
「もう、何でこうなるの・・・。」
そう呟いた瞬間、目の前に息を切らした二郎くん。
「えっ? 二郎くん?」
いきなり、二郎くんが視界に入り、びっくりした私。
「馬鹿野郎!! 心配かけんな!! いきなり、走り出す奴がいるか!!」
「ご、ごめんなさい・・・」
普段、大きい声をあげない二郎くんが怒鳴った事に驚き、また涙が出そうになる。
「もう、いいよ。 俺も怒鳴って悪かったから。 だから、泣くなよ・・・でも、心配したんだからな。」
「う、うん。 ごめんなさい・・・でも、ショックで。」
「あぁ、それは俺が悪かったよ・・・ ほらよっ!!」
「ぶふっ///」
いきなり、顔に何かを押し付けられ、息が苦しくなった。
「うぅー、苦しい・・・ あっ!!」
目の前に映るのは、私の好きなぷーちゃんの特大ぬいぐるみ。
しかも、限定品。
「ぶーちゃんだっ!!! どうしたの、これ?」
「七緒、このキャラ好きだろ? プレゼントだよ・・・」
恥ずかしそうに俯く二郎くん。
「プレゼント!? あれっ、今日が何の日か分からないんじゃなかったの?」
「馬鹿か、お前。 彼女の誕生日を忘れる奴なんかいないだろ///」
「でも、さっきは良いツナの日だって・・・」
「そんなの冗談に決まっているだろ。 あの後に、冗談だって言おうとしたら、お前はいきなり走りだすし・・・」
「うぅ・・ごめんなさい。」
「もう、いいよ。 最初に冗談を言った俺が悪かったからな。」
「二郎くん・・・。」
「七緒、今日は誕生日おめでとう! これからも、よろしくな!」
そう言った二郎くんの顔は私の大好きな笑顔だった。
「うん! こちらこそ、よろしくね!」
二郎くんにつられ、私も笑顔になった。
「そうだ、お前を追いかけている内にお腹がすいたんだけど・・・」
タイミング良く鳴った二郎くんのお腹。
「ふふふ・・・じゃあ、ご飯でも食べに行こうか。」
そんな二郎くんを見て、思わず微笑む。
「七緒、何が食べたい?」
「うぅーん・・・そうだなぁ。 苺の乗ったショートケーキ!!」
「げっ・・・ それ、デザートじゃん。 まぁ、いいか・・・じゃあ、食べに行くぞ。」
そう言って、二郎くんは私の手を取った。
そんな二人の姿をクリスマスツリーが優しく見守っていた。
「誕生日おめでとう=生まれてきてくれてありがとう」だと思っているので、おめでとうって言われると、うれしいです。毎日が誰かの誕生日・・・ そう考えると、何だか毎日がとても素敵に感じます。