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立ち入り禁止場所の謎

 自己紹介無事に乗り切ったけど、ビアンカさんの視線が鋭いのはなぜだろう……、純粋に目つきが悪いだけだと信じたい。


「はい、次はルリアルさんお願いします」


 私の後ろの人が自己紹介のために立ち上がる、いったん意識をビアンカさんからルリアルと呼ばれた子に向けた。淡いピンクの髪型でふわふわとしている、どことなく怯えた様子で小さく震えている様子はまるで小動物のようで、ビアンカんさんの鋭い視線を受けた後だからか、その様子に癒される。


「あ、あの、私は、ルリアル・フィネラ。と、得意魔法は、支援と、水魔法、です。その、こ、攻撃魔法は、あんまり。えっと、それから、あ、何でも、ありません。以上です」


 かなり緊張しているのかやはり震えたまま自己紹介をしていた。言葉もとぎれとぎれだけどこれは緊張か本人の癖かどっちだろう。あぁでも、途切れ途切れだったけど不思議と聞き取りづらくはなく、綺麗な声をしているからすごく耳に入りやすかったなぁ。ルリアルさんの後ろに座っている人も、同じことを思っているのかな? なんだかぼーっとした様子でルリアルを見ている。先生が名前を呼べばハッとして立ち上がったけど。


 というかやけに優雅な立ち上がり方だな、いかにも私は貴族ですよと言わん感じの、ゆったり上品に。すごく綺麗な金髪をしていて、整った顔立ち。物語に出てくる王子様というのはこんな感じじゃないかな。


「私は、ロワ・アンプル。得意魔法は光の魔法です、よろしく」


 ……、え? まさかのリアル王子? この国の名前はアンプル王国。つまりアンプルの家名が指し示す意味は他にはないわけで。なんで王族と一緒の学校で一緒のクラスなわけ!? え、これ怪しい素振りした瞬間断罪モードに入るんじゃ、ねぇ全寮制でも詰みと思ったのにこれ以上詰む要素を増やさないでよ、難易度設定を間違えてるよ!! 難易度高いのはゲームだけでいいんだよ、リアルには必要ないんだよ。むしろイージーモードをください。


「全員の自己紹介が終わりましたね、自己紹介ありがとうございます。ではこれでLHRを終わります。寮で早めに休んで、明日からの授業頑張ってくださいね。それでは皆さんさようなら」


 礼をした後、解散になる。何人かは教室を出ていき、何人かは教室に残って友人作りに勤しんでいる。私は、ボロが出る前にさっさと退散しよう。疲れたし早く帰って寝てしまいたい。まぁ、寮も二人部屋だから寮に帰ったところでボロを出ない自信なんてないんだけどね。


 鈍感な子が同室だったらうれしいなぁ、なんて若干失礼なことを思いながら教室を出てぼんやり歩いていく。……さて、方向音痴が何も考えずに一人で歩いたらどうなるか。そりゃ、入学する前の二の前なわけで。見事に知らない、しかも生徒の気配も先生の気配もない方に迷い込んでしまった。一度迷ったんだから学習しようよ私。


「そこで何をしている」


 うつむいて歩いていれば、目の前に人影が映った。これで道が聞けると、声をかけられたらばっと顔を上げて、目があえばすぐに慌てて頭を下げた。声をかけてきたのロワ殿下だったよ。なんで王族がこんな人気のない所にいるの、しかもなんで私を睨み付けているの!? 私は何にもしていないでしょ! 王族に睨まれるとか怖すぎて胃に穴が開きそう……。


「私の言葉を無視するとはいい度胸をしているな、何をしているかと聞いているのだが」


 顔を上げたら王族がいた衝撃と、視線が怖くて聞かれたことが吹っ飛んだんです。とは言えない。うぉ、でもなんか知らないけどめっちゃ機嫌が悪そう、これはなんか言わないとまずい。物理的に首が飛んじゃいそうなんだけど。


「申し訳ありません。殿下が私程度にお声をかけてくれるとは思いもよらず、驚いてしまったのですわ。その、何かをしていたわけではありませんの。ただ寮に向かおうとしていただけで」


 言葉遣い? これ以上どうにかしろと言われても分からない、私の国には王族なんていなかったし、ただ物語でこういう喋り方があったなぁぐらいで喋ってる、正しい言葉遣いだといいんだけど、内心ドキドキしながらロワ殿下の様子をうかがう。


「寮は反対方向だが。この奥は立ち入り禁止のエリアになっている。本当は何をする気だった」


 またしても私は反対に向かって歩いていたらしい。しかも、え、この先立ち入り禁止なの!? なんで学校内に立ち入り禁止区域があるの、立ち入り禁止区域があるのに周知させない学校側の方が悪いと思うんだ。だからそんなに私を怪しむような眼で見ないで、ただの方向音痴だから!!


「方向音痴で迷ってしまっただけですわ、立ち入り禁止場所については先生方からお話がなかったと思うのですけれど。私学園に立ち入り禁止場所があるのを初めて知りました。殿下はどうしてこのような場所へ?」


 方向音痴だと自己申告したよ、じゃないと疑い解けそうにないし。言ったからって信じてもらえるわけでもないだろうけど、事実なので信じてもらえなきゃ困る。というか人を注意するロワ殿下こそどうして立ち入り禁止場所付近に来たのだろう、王族は立ち入り大丈夫とかそんな感じかな?


「立ち入り禁止場所に肝試し感覚で入り込むやつがたまにいたり、学校であまり良く無いうわさを聞いたものだからな、念のための見回りだ。はぁ、その辺うろちょろされても迷惑だ。寮まで送ってやるからついてこい」


 ロワ殿下自ら見回りって、王族ってむしろ危険には近づいちゃいけないんじゃないかと思うんだけど。ってあれ、今わざわざ送ってくれるって言った? 睨んでるから怖い人だと思っていたけど案外優しい?


「今、失礼なことを考えなかったか?」


 みんな私の顔から、考えを読み取りすぎだと思うんだ。訂正、やっぱりロワ殿下少し怖いです。


「ぼんやりしていると置いていくぞ、ほらちゃんとついてこい」


 置いていくと言いながらもゆっくりめに歩いてくれている。素直じゃないだけかな? にしても道中に会話がなくて気まずい、いや王族相手に気軽に会話とかできないけどさ。無言って空気が重いよ。


「ほら、正面に見えるのが女子寮だ。もぅ迷子になるなんてみっともないことをするなよ」


 重い空気にあまり周囲を見る余裕なんてなく、ただ相手の後ろをついて言っていれば、正面に白くて大きい綺麗な建物がみえた。外観がきれいなのでそこで生活するのが楽しみになってくる。内装はどんな感じだろう。


「殿下、わざわざありがとうございます」


 建物に見とれるだけじゃなくてお礼も言わないとね、殿下がわざわざ連れてきてくれたわけだし。


「いや別にいい。じゃあ私はやることがあるからな」


 といえばロワ殿下は足早に去っていく。うーん不思議なところうろついていたし、やることって実は何か立ち入り禁止場所に用事があったんじゃ?


 というかどうして立ち入り禁止なんだろう。建物の工事や修繕なんて聞いてないし、そもそも建築できるような技術が多分ないと思うから、魔法で建物も作られているんじゃないかな? そんな魔法があるかは分からないけど。そういう魔法があると仮定して工事や修繕での立ち入り禁止でないとしたら、立ち入り禁止はお化けが出るからとか? だって精霊が出てくる魔法の国だよ? 精霊よりお化けの方が全然存在しそうだし、お化けかもしれない。だったら心霊現象とか噂とかになっていたりするのかな、機会があったら立ち入り禁止場所のうわさでも聞いてみよう。分からないままって無性にもやもやするし、気になるからね。


 っと、続きはとりあえず部屋に帰ってから考えよう、明日の準備もあるし。私は寮の中へと足を踏み入れ、廊下を歩きながら自分の部屋がある場所を探した。


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