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精霊の友

「あれ、ミリアルちゃん?」


道に迷い途方に暮れていたらリュウシュン先輩に声をかけられた。

今日はひよこの精霊はいないらしい。


「こんなところでどうしたの? たしかこの棟は空き教室ばかりで一年生が来るには、何もなかったと思うんだけど」


そうですか、今日も見事なまでに変な場所に来ていたらしい。

だんだんとへこんでくる。その様子を見てかリュウシュン先輩は慌てていた。


「え、えと、ミリアルちゃんはどこに行きたかったのかな?」

「図書室です」


答えた瞬間、リュウシュン先輩の顔が引きつった。前も似たようなことがあったな。


「図書室の前まででよかったら連れて行くよ」

「面目ないです、よろしくお願いします」


地図アプリが切に欲しいと思うこの頃です。地図アプリがあっても教室の位置などわからないから無意味なんだけど。


「そういえばミリアルちゃん、この前の魔導書使いこなしている?」


魔導書・・、思い出したくもないあの日手に入れたやつですね、迷路は直ってるかな。


「僕のほうでさ、魔導書についてちょっと調べてみたんだ。魔法は呪われた歌姫が作り出し、魔導はレイル・ブランシェが作り出した。これが一般的な知識。そしてね、魔導は一般の魔法使いでは扱うことができない。レイル・ブランシェが選んだ人間にしか扱えないんだ。どういう基準で選び、どうして選ばれた人間しか使えないのかは分からない。その謎を解こうと思ったら選ばれた人間に聞くしかないからね。ミリアルちゃん君は一体何者なんだい?」


ごく平凡な、魔法と無縁の科学の国の者です。選ばれたとか知らない。普通でいいのに!

魔法の存在だけでお腹いっぱいだから、勝手に変なものに選ばれないでよ私!!


「ミリアルちゃん自身が、あんまり分かってないみたいだね。でも気を付けてね、あまりに強い力はミリアルちゃん自身がよくわかっていなくても、周りから見たら結構わかりやすい。それだけ力があったら狙われたりだってしちゃうから。何かあったら僕を呼んで、できるだけ力になるよ。入学前からいろいろ教えたかわいい後輩だからね」


相変わらず優しい先輩です、得体のしれない子によくこんな言葉を。なんて考えていたらいつの間にか図書室についてしまった。リュウシュン先輩と入り口で別れて、図書室の中で入る。


とりあえず今気にすべきはネメジス平原のこと。ネメジス平原についての本は・・。


「二階、右から二番目の書庫。そしてネメジス平原は天使が舞い降りた地とされる他、天使が死に悪魔が生まれた地ともいわれる。悪魔の存在はあまり信じられていない。悪魔が魔族という説もある。天使は死んでいないとも言われている」


急に声が聞こえ立ち止まり声が聞こえたほうを見れば、紫髪の少女が二階から私を見下ろしている。

って、あれ? わたしまだなにもいってないのにネメジス平原について教えてもらってしまった。

もしかして心の声が聞けたり?


「えぇ、その通り。あなたの声駄々洩れ」

怖いので今すぐ帰りたいのですが・・。

「ご自由にどうぞ。あぁでも少し待って。知りたいことがあるの、あなたどんな精霊とどんな契約を交わしたの?」


精霊と契約を交わしたことは一度もないのですが、どうしてそんなこと聞かれるんでしょうか。

「それはないわ。あなたは、間違えなく精霊と契約を交わしている。そして精霊を悪用した。だからあなたの魔力は穢れている、そしてあなたは理から外れている」


精霊を悪用? 精霊を悪用した記憶なんてそれ以前に昔はだって・・って危ない思考を読まれるんだった。

「あくまでとぼけるのね。これでも怒ってるの、私の感情はわかりにくいらしいから分かっていないでしょうけど、はらわた煮えかえるほど腹が立つの。私は精霊の友。精霊は私の友。私の友に理から外れることをさせた、それがどんな影響を与えるかわかる? 姿を見せてあげなさいミュート」


無表情で、声だけを震わせながら言う。って、そんなこと言われても知らないことは知らないんだって!?

なんて戸惑っていたら、ミュートと呼ばれた精霊が姿を現す。人型で青のグラデーションのかかった髪をしている少し幼く見える精霊。


「私たち精霊は嘘つけないの。精霊が嘘をついたら灰になって消えちゃうの。だから私の言う言葉は本当なの、クラファレス・・私の友達が言っていることは全部本当なの、あなたは、理から外れる力を使った。理から外れる力は、人を生き返らせることなの。これは精霊にしか扱えない魔法なの。でも精霊でもこの魔法を使ったら無事では済まないの。魔力は下がって、数百年精霊はこの世に姿を現せれないの」


人を生き返らせる? そんなことしていない、それに私の周りで生き返った人なんていない。

生き返るなんてけったいな出来事が起きたら忘れたりするはずがない。


「精霊には、人がついている嘘もわかるの。嘘をつけない代わりに嘘がわかる。そしてあなたはほんとに知らない。クラファレス、この子ほんとに何も知らないの」

「あなたが言うなら、知らないのでしょうね。そぅ、それならもういい話すのが無駄ね。調べ物の邪魔をしてごめんなさい、また会いましょう、科学の国から来られたミリアルさん」


そういえば、クラファレスと呼ばれていた少女は幽霊のように姿を消す。

姿を消す魔法もあるんだろうか・・ってそれどころじゃないよ!? 思いっきりばれてるし! 科学の国の人間ってばれてるし、ど、ど、どどうしよう。もしいいふらされたら私の命一瞬で終わるから、魔法の国相手になんてできないから。


「安心していいの、クラファレスはいいふらすつもりはないの。ただ、ごめんなさいなの」


そういえば精霊も姿を消す。いやいや、いいふらすつもりがないのはありがたいけど、ごめんなさいってなに!? なにをやるつもりなの、ちょ不安しかないのですが。

なんだろう、どっと疲れた。考えなきゃいけないこともいっぱいあるし今日はもう帰ろう、ネメジス平原についてはクラファレスと呼ばれていた子が少し教えてくれたし。


「ミリアルちゃん、やっほー。リュウシュン先輩がミリアルちゃん行きで迷っていて、帰りも迷っちゃいけないから良かったら迎えに行ってあげてって言われたから迎えに来たよ。そういえば前も思ったんだけど、いつの間にリュウシュン先輩と知り合ったの? リュウシュン先輩この学園ですごい有名人でファンの子に追い掛け回されるから、普段は人目につかないように動いているんだけど」


リュウシュン先輩お気遣いありがとう、そして人気者ですかそうですか。

追っかけって怖いなぁ。そしてミュアさんは相変わらず詳しいのね。


「リュウシュン先輩についてあんまり知らない? リュウシュン先輩は私たちより学年が二つ上でこの学園でゆういつの三属性得意魔力があるの。ミリアルちゃんは二属性だよね、二属性もすごく珍しいけど三属性はそれどころじゃないの、人間の三属性持ちなんて、数百年に一度生まれるか生まれないかだよ。それもあるしあのルックスだし、女子生徒からの人気が高くてファンがたくさんいるんだよ。三属性持ちなんて羨ましいなぁ。ミリアルちゃんも三属性使えるようになってよ、大丈夫、ミリアルちゃんならいけるよ!!」


いや、無理ですから。


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