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男性との出会いがありました

 さて、一晩寝て冷静になった結果だけれども、学校に行かなきゃ私学生ですらないんだよね。はっきり言ってこの魔法の国で全然働ける気なんてしないし、つまり意味するところはニート。目標とかやりたいことがあってのニートならいいと思う、ただ私の場合は何もできないからニートをするという選択肢なわけで、それは非常に良くない、ここにニートとかきにする世間の目とかあるのか分からないけれど、なんだか妙な罪悪感を覚えてしまう。


 ニートにならないにはどうするか、そりゃ学生になるしかない。学生になるには試験勉強をするしかない。しかし勉強するには本がない。本がいるなら……。


 そんなわけで現在は図書館に向かって歩いている。確か私の家の湖の近くに図書館が見えた記憶があるのだけれど。記憶が間違っていたのだろうか? かれこれ歩いて一時間、図書館どころか見覚えのない風景へとなってきている。自分がどうやってここまで来たのかもわからない。


 ぐっ、科学の国なら現在地がわかるGPS付きのマップがあったんだよ!! なんだったら端末で友達に泣きつけたんだ。……だからそう、失念していた自分の方向音痴ぶりを。


 魔法の国に端末なんて持ってきたら科学の国にいたのがばれてしまう、つまりは手元にないわけで。私、この年齢にして迷子になりました。


 と、とにかく進行方向と逆方向に歩いて戻っていけばなんとかなるよきっと! きっと見覚えのある所に出ることができる!! 大丈夫、なんとなるなる……、残念、そんなことはないらしい。歩いても歩いてもどうにもならない、むしろ状況は悪化の一途を辿る。どうしよう何だか寂れた場所に出てしまった、道を聞けるような人はどこにも……。


「どうしたの?」


 いや、一人こちらを不思議そうに見てくる銀色の髪の柔らかい物腰をした男性がいた。


「と、図書館に行こうと思って」


 迷子であることは伏せた。嫌だって、この年で迷子になりましたと素直に言うことが恥ずかしいし。


「う、うんじゃああっちに行こうか」


 男性は顔を引きつらせながら、私が向いてる方向とは全く別の場所を指さす。こっちに向かっていっても図書館はないらしい、少し気づかわしげに見てくる男性の目がかなり痛い!! あっさり迷子だとばれてしまっているようで。かといってここで迷子を否定して一人にされては困る、大人しく頷けば男性の後ろをついていく。


 はい、しばらく歩けば無事に図書館にたどり着いた。うーん私の家のすぐ近くだね、なんで道に迷ったよ私。非常にいたたまれない気持ちになりながら、図書館へと入っていく。


 かなり大きい図書館で蔵書数はなかなかのものだった。これは目的の本を探すのが大変そうだ。そもそも魔法の本なんて科学の国にはなかったわけで、いったいどこに分類されているのだろう。


「何の本を探しているの?」


 どこから探そうか困っていれば案内してくれた男性が私に声をかけた、どこまでも親切な人である。科学の国では魔法の国の人は、根暗で気難しくって頑固者が多いと聞いたのだけれどあまりそうは見えない。科学の国が持っていた偏見というものなのだろうか、あ、いやいや考え込んでいる場合じゃない。質問されたから答えないと。


 ……魔法の基礎、と答えていいんだろうか。魔法の国の人が魔法について知らない風だったら、私ならその人が本当に魔法の国の人か怪しむ。つまりは素直に答えたら怪しまれる可能性があるわけで。科学の国と魔法の国は敵対しているのだから少し慎重に答えたほうがいい。


「あの、入学試験があるのでそれについて勉強しようと」


 試験勉強のためなら怪しまれないだろう、うん、自分ながら割と良い返しができた。


「試験か。この辺で入学試験が課せられる学校は一つしかないから同じ学校かな? ソルセルリー学園っていうんだけど。……よく考えたら僕、自己紹介をしていなかったね。ソルセルリー学園に通う2年生のリュウシュン・ファルロアというんだよろしくね」


 行く予定の学校の先輩だったらしい、偶然に驚く。が、それ以上に名前も知らない男性にホイホイついていったのは年頃の女の子としていかがなものだろう、いくら迷子だったとはいえもう少し気を付けるべきだったかもしれない。結果はオーライなんだけど。


 うーん、先輩になるなら少しでも良い印象を持たれたいな。魔法の国に知り合いが一人もいないからかなり心細い。


「私は、ミリアル・ブティラです。よろしくお願いします」


 笑顔で挨拶を返しておいた。少なくとも笑顔で挨拶を返して不愉快になる人ではないと信じたい、伺うようにリュウシュン先輩の顔を見る。リュウシュン先輩はにっこりと笑い返してきた。


「ミリアルちゃんか、かわいい名前だね。入学試験の勉強せっかくだからつきあうよ、ミリアルちゃんなら問題なく合格すると思うけど。ソルセルリー学園っていうのは、魔法の素質はあるけど家庭の経済貧困などを理由に魔法の勉強ができない人のために創設した学園だから。知識よりも実技をして魔法の素質をみるぐらいの試験内容だし。なんだったら、実技をするまでもなくミリアルちゃんくらい魔力があれば、魔力だけで素質十分だと思うよ」


 魔力だけで通過? 私の魔力がそんなに高いのか、それとも通過基準が低いのかとても気になるところ。というか、そもそも見るだけで魔力なんてわかるものなの?


「そんなに不思議そうな顔をしなくても。ミリアルちゃんは、もしかしてあんまり魔法に詳しいわけじゃないのかな? 魔力鑑定の魔法を知ってる? 知らないって顔をしているね。魔力鑑定の魔法を自分の目にかけたら、自分の視界に映った人がどの程度魔力を持っているかなんとなくわかるんだよ。ミリアルちゃんほど魔力が多い人滅多にいないよ?」


 わたし、そんなに気持ちが表情に出ているだろうか。知らないって顔をしたつもりはなかったんだけど。うーん、それにしても、私って魔力強いのか、そうか……。


 あんまりうれしくない、いやだってさ、確かに魔法に対してあこがれがなかったわけじゃないけどさ、できたら楽しそうだなぁってレベルだよ? 魔法について知らないのに魔力だけ異様に高いって怖いよ、何事もほどほどがいいんだ平和のためには。


「あんまりうれしくなさそうだね、顔が引きつっているよ」


 そんなつもりはないんだけど、やっぱり私は感情がすぐに表情に出てしまっているらしい。もう少し気を付けないと。


「魔力が多いといわれて嫌そうにする人を初めて見たよ。まぁ、でもせっかくなんだから少し勉強をしていこうよ。実技試験で魔法を使うからそれの勉強だね。ミリアルちゃんの魔法がどんな感じか気になるから、基本的な魔法の詠唱をして……、あぁ詠唱っていうのは魔法を使うときに放つ言葉のことだよ。多分詠唱なしに魔法を使おうとしたら難しいと思うから、詠唱の言葉と合わせて魔法を勉強しようね。」


 図書館内で魔法の練習をするのだろうか、自宅で本を植物に変えてしまっただけに非常に不安な気持ちになってきた。どうか今度は、本が花になったりしませんように。器物破損とかしゃれにならんのです。

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