呪われた歌姫
「お前さん、その杖はこの店で一番の杖だ。ほかの杖が悪いっていうんじゃない、ただその杖は特別なんだよ。杖にはどうして意思があるのか、お前さんは知っているかい?」
いえ、まったくもって知りません。なんて馬鹿正直に言っていいかわからないから首を傾げて見せた。
「杖っていうのはな、命の残滓だ。人は死んだら生まれ変わる。でもな、すべて自分のすべてが生まれ変わるわけじゃない、いや稀にそういうやつもいるんだが、大抵のやつは死んだときに、自分の命、この世で感じたこと考えたことをその場に残して天へと旅立ち生まれ変わる。ほら、お前さん前世なにだったかなんてわからないだろう? それはお前さんが死ぬときに残滓を残して生まれ変わったからだ。逆に残滓を残さず生まれ変わるやつは、自分というものを100%持って生まれ変わるから、前世の記憶があるんだ。っと話が逸れたな。普通のやつは残滓を残し生まれ変わる。残された残滓は、その場で杖としてその場に留まる。だから杖には死んだ者の意思が宿っている。そしてその杖は、呪われた歌姫が残した杖だ」
呪われた武器を装備した! ってなにそれ。
怖いんですけど、怨念込められていたりしないよね!?
「なんであんたは、毎回驚かせてくるわけ?」
そんなつもりはないよ、ってか私が一番驚いているし。私が一番なんでこうなっているか知りたいし!
「ミリアルちゃんすごい、さっすが私の友達だね」
まったくもってうれしくないから、ていうか呪われた歌姫って何。
「あぁ、あなたは常識がないんだったわね。どうせ呪われた歌姫の存在も知らないんでしょう? ほらこの前、ルリアルの呪いを解きに行く道具を探しに洞窟に行ったでしょう。そこに行く途中に魔力の木に魔力が吸い取られたわよね。その魔力の木にまつわる話をしたのを覚えている?」
たしか、日照りが続いた国でお姫様が歌を歌い雨を降らせたという・・。
「それが呪いの歌姫。そのあと湖ができて湖を木が吸ってという話をしたけど、そもそも雨が止まずに湖ができたってどういう意味だと思う?」
雨がやまない、そして雨が降った場所が湖にって・・・。
雨降らせた場所水没しちゃってる!? やりすぎだよお姫様、この杖怖すぎる!!
「どうやら理解したようね。そう、お姫様は国を水没させてしまったのよ。それが呪われた歌姫といわれる訳よ。なんていうものをてにしているのよあんたは」
それは私が一番聞きたいよ!!
「呪われた歌姫の杖を手にとった嬢ちゃんたち以外は杖いらないのか? もうじき昼休みも終わるが」
男性の声にみんながハッとすればそれぞれ杖をに話しかけ、杖を手に取る。
残り時間はあと五分。
「ちょ、遅刻なんて冗談じゃないわ。それで成績落ちたらどうしてくれるのよ、ほら、全力疾走!」
「教室まで競争だね!」
「ろ、廊下は、走ったらだめ、だと思う」
そんなこと言ってる場合じゃない。とにかくやばい。
四人で教室まで全力疾走。結局朝寝坊しなくても走る羽目になってしまった。
魔法使いって、部屋に閉じこもって魔法の研究をしているイメージあったんだけど、なんで私は毎日のように走っているのだろうか。まったくもって不思議である。
全力疾走のおかげで、授業にはぎりぎり間に合った。それはよかったけど疲れた、もっとのんびりしたい、先生が少し遅れてきてくれたりなんかは・・・。
「はい、皆さんそろっていますね、それでは授業を始めます」
しませんでした。時間通り授業開始、無慈悲な。
「さて本日は、魔法で使う道具について説明します。これらは総称して魔道具と呼びます。例えば杖。この杖は魔力のコントロールを高めると同時に、杖によりどの属性の魔力を上げるなど様々な効果があります。また、杖は魔力との相性がよく、杖に魔力を流し込めば杖を好きな形状に変化することができます。他にも魔道具には、装飾品などがあります。装飾品を身に着けることで一時的に装飾品に込められている魔力分魔力を強化することができます。また、身体能力を上げたり、自動回復を付与したり、魔法を防御するバリアを張ったりすることも可能です。その他にもさまざまありますが、代表的に使われるものはこの二つです」
杖のほかにも、装飾品・・。呪われた装飾品とかあったらやだな。
思いのほか呪われた杖がトラウマになりました。自分の体が乗っ取られたりしないよね?
ファンタジーで体乗っ取られるのは割とお約束な気がする、怖すぎる。
「特に注意が必要なものは杖です。杖には意思があり、杖が自分を扱う人間を決めます。もし、選ばれてもいない杖を扱えば、体を杖に乗っ取られ命さえ使い果たされるといいます」
予想的中!! 素晴らしい的中率。
・・・、全然うれしくないです。
「学園では、そういった事故を防ぐため杖専門店には、杖に詳しい人を呼んでいます。何人かは今日会ってきたでしょう。あの人は、杖がだれを求めているのかを知ることができます、これは魔道具鑑定という無属性の魔法を扱って杖の意思が見えるようにしています。無属性魔法でだれでも使える魔法ではありますが、習得するには時間が必要となる難しい魔法のため、二年次に魔道具の授業をとった人が学習します」
ん、それは二年になったら選択授業があるってことかな。科学の国の人でもわかりやすい授業を用意してください。
「授業の選択につきましてはまた二年に上がる前に説明します。それでは、これで授業を終わります」
チャイムと同時に授業の終わりを告げる。いろいろ衝撃の多い授業だったけど、まぁいいや。
もう知らない、ファンタジーはまじめに考えちゃだめだし。
「ふぅー、やっと終わった、一緒に寮に帰ろ」
ミュアさんが軽く伸びをしながら声をかけてくる。
寮に帰ってもいいんだけど、ネメジス平原について少し調べておきたい。
また、魔法の国でも一般常識をしらなかったらとか怖い。
「ごめん、私は今日図書室に用事あるから、先に帰っていてくれる?」
「わかった、早く帰ってきてよ」
軽く手を振って教室から出てく。
数分後、もちろん道に迷いました。方向音痴つらい・・。
☆☆
「もうすぐ役割を果たす時が来るの」
「そう、彼女はこの世にはいてはいけない」
「苦しそうな顔をしているの」
「大丈夫、これが私の存在する、ううん、存在できる祐逸の理由なんだから」
「いつもいつもごめんねなの」
「謝る必要ない、これは私が決めたこと、私の運命」




