杖の存在
前の投稿から時間がかなりかかってしまい申し訳ありません。
パソコンが壊れてしまったため、投稿できる状況にありませんでした。
パソコンを無事手に入れたので、ちょくちょく投稿するつもりです。またよろしくお願いします。
「ちょっとあんた達、今日も遅刻ギリギリで行くつもり? 私の友達がそんなみっともないなんて許さないわよ」
「おはようございます、ミリアルさん、ミュアさん。遅れちゃうよ?」
毎度毎度遅刻ギリギリなのを見かねて起こしに来てくれたらしい。
本当に面目ない、朝に弱い私と、朝に起きる気が無い奴では遅刻ギリギリが回避できなかったんだよ。
この時間なら割と余裕ある。ゆっくりできるって素晴らしい。
いつものようにミュアさんを起こして今日はゆっくりと準備をすれば、四人で学校に登校。
まだ時間があって少し話ができる時間がある。
「そういえば、そろそろ、交流会の、時期、ですね」
「あぁ、もうそんな時期だったわね。課題はなにかしら」
「多分今日の授業はそのことだよね!! 野外授業楽しみ」
うん? 野外授業で交流会? それは科学の国で言う遠足的なものでいいのかな?
「ん、不思議そうな顔してんのね。あんた、学校の行事ぐらい把握しておきなさいよ。いい? 交流会は、学年やクラス問わずグループを組んで一つの目標を達成することで、歳やクラス関係なく仲良くなることが目的。といっても外部にあんまり行事の情報とか漏れてないから、何やるかまでは分かんないのよね」
ふぅん、そこはプライバシーとかいろいろあるのかな? それにしても課題は何なんだろう、もうドラゴンは勘弁してほしいけど。
あ、先生が教室に入ってきた。意外と時間が過ぎるの速いなぁ。
「皆さんこんにちは、何人かの生徒は知っていると思いますが交流会について説明します。交流会では、全校生徒でくじ引きをして5人のグループを作り課題をクリアしてもらいます。今回の交流会で行く場所は、天使が舞い降りた地とされる、ここより西の方角にあるネメジス平原です。ネメジス平原までは飛んで移動するので、杖を所持していない生徒は学園の中にある杖専門店で杖を貰っておいてください」
杖専門店がどうやらこの学園にあるらしい。よかった、流石に先生の前で魔導を扱う勇気は無いし。
というか天使って、いや、うんもう驚かない。
「さて、今回の課題はスタンプラリー形式を取ります。ネメジス平原に五人の教師が散らばって生徒を待っています。その先生から課題を出してもらってクリアしたら、スタンプを押してもらえます。5つのスタンプを集めて集合場所にもどれば交流会の課題をクリア。先着三グループにはそれぞれ景品があるので、頑張って課題クリアを目指してください。では交流会の説明は以上です。午後は魔法に使われる道具について説明します。それでは午前の授業は終わります」
昼休みの時間になると、ミュアさんがなんだか無性に輝いて見えるのは残念ながら気のせいじゃない。
「さぁさぁ! 早く杖を貰いに行こうよ。楽しみだなぁ、杖って意思があるんだよ。杖が持ち主を選ぶんだ。選ばれたら杖は何本持っていてもいいの。杖によってね扱いやすい魔力が違ったり、いろいろあるんだから」
「あら、残念な頭とばかり思っていたけれど、意外に杖には詳しいのね」
いつもに増してテンションの高いミュアさん。そして褒めてるのか貶しているのかよくわからないビアンカさん。というか道具に意思があるのか。うん、普通だね。
これぐらいで驚いていたらやっていけないもん、ファンタジー世界に理屈なんていらないのもう十分に分かったから。
「えへへーそれほどでもー、って意外には余計だし、残念な頭って何!?」
「あら、何か違ったのかしら」
「違うよ! ほら、天才クールビューティーだから!」
「自分で言っていて無理があるとは思わないの?」
ごめん、ミュアさん私もそれは無理があると思うんだ。
「ミュアさん、元気、考えるより行動派、クールビューティーとは、違う気が、します」
ルリアルさん、お願いとどめを刺さないであげて!?
あ、ミュアさん撃沈しちゃった。
「うぅ、ルリアルちゃんの言葉が胸に突き刺さるよ・・・。わかってるけど、わかってるけどもそんなに否定しなくてもいいじゃんか」
「はいはい、早く杖専門店に行かなきゃ杖見る時間が無くなるわよ、あなたのボケに付き合ってる暇はないの」
「私も、杖、ちゃんと、見たいです」
「みんな私の扱いひどくない!?」
身から出た錆だと思う。三人でくすくす笑いながら歩いていく。ミュアさんもそれ以上言うのを途中であきらめついてきた。
四人でいることはとても楽しい。この空気が私は好き。冗談言いあってボケ言い合って。科学の国でも友達と同じように楽しい時間を過ごした。私の友達は今元気なのだろうか、ふとそんなことを考えた。
「あなたは歯車を乱す者。あなたは許されざる存在、だから私が消す。何もあなたは考える必要がない」
通りすがりに誰かにそう言われ、足を止める。慌てて振り返るが振り返った先には誰もいなかった。
「ミリアルちゃんぼんやりしてどうかした?」
いつの間にか前を歩いていたミュアさんたちが立ち止まり不思議そうにしている。
「なんでもない、いこっか」
速足でみんなに追いつく。何事もなかったように雑談をしながら歩み続ける。
その中で私は、いわれた言葉についてぐるぐる考える。
私は、歯車を乱す存在。声からして彼ではなく彼女はそう言った。
それがいったい何を指すのか、そもそも歯車とはいったい何のことか。
それは、私が科学の人間でありながら魔法を使えることに何かかかわりがあるのだろうか。
「よーし、到着!」
明るいミュアさんの声に、意識が現実に戻される。
前を見るとすぐ目の前に杖専門店があった。数多くの杖がある。シンプルなものから複雑な形状のものまで。色も様々で宝石のようなものがついているようなのも、ついていないものもある。
木でできたものもあれば、鉄のようなものも存在する。杖ってこんなにいっぱいあるの!?
「さすが、学園だね、いろんな杖がある。あ、ミリアルちゃんは杖のこと詳しくないんだよね。杖の選び方はね、杖に話しかけるの。我の力に応えよってね」
いう言葉がちゅうにびょ・・・ゲフンゲフン。ここはファンタジーでした。
「我の力に応えよ」
その言葉を言った瞬間、ありとあらゆる杖が騒ぎ始める。
え、はい!? ちょ、ま、うるさい。杖ってこんなうるさいの!?
この声が聞こえているのは店主の男性と私だけなのか、店主は驚いたような顔し、ミュアさんたちは何が起きているか分かっておらず不思議そうな顔している。
「お前さん、と、とりあえず何でもいいから杖をとることだ。そうしなければ騒ぎ出した杖が収まらん」
そういわれても、なんか騒がしさで平衡感覚が。
その騒がしさの中、気になる声がしてその声に意識を集中する。
「汝の力に我が応えよう」
その声は不思議と心地よくて、私は駆け出す。周りの杖には目もくれず、店の奥にある扉開く。
「その杖が応えるとは」
驚いたような店主の声がしたが、私はそれが気にならなかった。それよりも目の前にある杖に魅せられた。
その杖だけのためにこの部屋は存在し、この部屋の中央に杖が浮いている。
決して華美ではない。木ででき少し複雑な形状。ただそれだけのシンプルな杖。それでもその杖はどれよりも綺麗で、物でしかないのに温かく感じた。懐かしさ、優しささえ感じた。
杖が私を選び、私もまたその杖を選んだ。




