徹底された仕掛け
「私さ、思うのよ。レイル・ブランシェって歴史に残るほど大した事をした人物ではなくて、実は人の印象に残りやすいから歴史に書いてあるんじゃないのかって」
洞窟の外は、もう朝日が昇り始めていた。
私たちは謎の脱力感とともに、行き場のない気持ちを持て余した。原因となった洞窟はしっかり崩れている。
あのあと、ドラゴンにやられると思ったら、ドラゴンが風船のように割れて紙吹雪が降ってきて、おめでとうという音声と共に、秘薬が降ってきた。
最後の最後までくだらない事をするんじゃない!!
というか、呪いを解く秘薬をこんな風な仕掛けで渡して良いの!?
一人でつっこみの嵐をしてたら、それはそれは、にこやかに威圧感たっぷりに微笑んでいらっしゃるビアンカさんが、紙吹雪にはしゃいでるミュアさんもろとも爆発魔法で洞窟を吹っ飛ばしてしまった。
現在焦げた人一名(一応手加減したらしく軽傷で気絶)、悪魔のようにひたすら笑っている人一名、こんな状況で眠っているのが一匹、もういろいろ諦めているのが私。
最後の最後までカオスなパーティーでした。
なんか、目的達成したのに一日を無駄に過ごしてしまった気がするのは気のせいでしょうか?
「なんか、一日を無駄に過ごしてしまった気がするわ」
気のせいではないらしい。
「もういいわ、あははは、笑いしか出てこないもの。帰りましょう、寝て今日の事は忘れるわ。先帰ってるから、そのひたすら楽しそうだった頭狂っている奴は、あんたが連れて帰って。それじゃ」
あ、ビアンカさんがパーティーから離脱しました。
ちょ、気絶と寝てる精霊を残して一人にしないでえぇぇ。
「ちょ、み、ミリアルちゃん!? 何をしているんだい」
「不思議な奴ぴよ」
ひよこ精霊と一緒に現れたのはリュウシュン先輩。焦げてるミュアさんを見て石化してる。
違うよ? 私はしてないからね?
「犯人はみんなそういうんだぴよ。正直に白状するぴよ」
いやいや、言ってないし心の中で思っただけだから。ってかホント私じゃないから。
「確かに焦げた娘さんに残ってる魔力の痕は、お前さんのものじゃないぴよ」
「びっくりした、魔法を全然知らなかったミリアルちゃんがいきなり爆発魔法愛用者になってしまったのかと」
そんな愛用者嫌だ。って、ビアンカさんがもしかして爆発魔法愛用者??
「先輩とりあえず、私は爆発魔法を愛用する気は無いです。ところで、どうしてこんなとこに?」
「良かった。ええと、急に洞窟から煙が上がって崩壊したから気になってきたんだよ。何か知らない?」
「ナニモシリマセン」
今日起きた事は乙女の秘密、ってそうではなく普通に洞窟破壊をしてしまったとかまずいんじゃないんでしょうか。いやこんな洞窟破壊したほうが後の世の為だとは思うけどさ。
法律とかそういうものは大丈夫なんでしょうか。
「爆発魔法で、いろんなものが吹き飛ぶのは日常茶飯事ぴよ。人の家だったり、公共施設だったり、怪我人が出てない場合お咎めなしぴよ」
怪我人はがっつりいるんですけど、これはまぁ、ノーカウントでいいか。軽傷だし、自業自得な気もするし。
そんな事を考えていたら、視界がぐにゃりと歪む。
何かが変だ。
「寝ちゃ危ないにゃ、起きるにゃ!!」
猫精霊、寝てたのは貴方でしょう? それか気絶してるミュアさんとか。
あれ、ミュアさんがいない? 探さなきゃ、いつの間にか起きて歩いていたのかな。
探さなきゃいけないのに、身体が重い。視界が狭くなっていく。
「ミリアルちゃん!? 顔色悪いよ、無理に動こうとしちゃ駄目だ!! 今はゆっくり休みなよ」
その言葉につられるように、深い深い闇の世界へと堕ちていく。
現実が遠ざかる。
「お姉ちゃん、こっちにおいでよ」
堕ちた先にいたのは、私をお姉ちゃんと呼ぶ迷路で助けてくれた少年。




