現代への贈り物
「近くで見るのは初めてだけど、ドラゴンの住む洞窟なだけ会ってやっぱでかいのね」
飛んで行った先には大きな洞窟。このサイズのドラゴンがいるのかと思うとゾッとする。
私は、生きて帰れるかな?
「着いたね!! よーし、いっくよー!!」
相変わらず楽しそうなのがミュアさんです。いや、ビアンカさんもワクワクしてるけど。
なんか不安なパーティーだなぁ。
うわぁ、二人の後ろについていって洞窟に入ってみたのはいいけど、なんかじめっとしているし、想像以上に暗くて不気味だ。
「ミリアルちゃんは、確か光魔法使えたよね! 明かりをお願い!」
へ? 明かり? 精霊さんヘルプ!! 詠唱はなに。
「はぁ、後に続けて唱えるにゃあ。リュミエール」
「リュミエール」
洞窟が明るくなる程度の光をイメージ、感覚的にはカンテラぐらい?
前、確かミュアちゃんが持っていたやつ。
うん、ちょうどいい明るさの玉が浮かんでる。
「さっすがミリアルちゃん! よーしじゃあどんどん進むよ」
先導ミュアさんと私がつけた明かり、その後ろにビアンカさん、ビアンカさんの後ろに私と精霊いった感じに進んでいく。
それにしても、明かりがついたらついたで洞窟が禍々しく見える。
「なんか罠でもありそうだにゃあ」
ちょ、それ言っちゃ駄目な奴!? フラグだからね、それは。
「うわぁ、なんか地面が!?」
唐突に地面が消えさる。もちろんこれは、重力により落下するわけで。
「ちょ、どうなってんのよ!? トラップがあるなんて本には書いてな、って深さ大した事ない!?」
数センチ落ちただけでした。ついでに何故か上から、残念賞といわんばかりにポケットティッシュが落ちてきました。ようは冷やかしです。
誰だ、こんなめちゃくちゃくだらない仕掛けを作った奴!?
魔法の無駄遣いだよこれ。
「なんだか私、腹が立ってきたわ。そういえばこの洞窟に秘薬を隠したのって性悪と名高いレイルという事を忘れていたわね。さすがレイルね。的確いらつかせてくる」
ビアンカさんは、そりゃあもう、背景に炎が見えそうなぐらい大層ご立腹な様子でした。
怖いから、落ち着いて。ん? レイルってどこかで聞いたことあるような。
「なに、とぼけ顔をしているのよ。あんた、レイル・ブランシェも知らないの? レイルという人物は古代魔法使いの一人。この人が特殊な魔法を作りだしたとされていたり、ドラゴンを創り出した人だとか、くだらない仕掛けをたくさん作ったとか、いろいろな話があるけど、肝心な記述は何一つ残っていない、一番謎が多い古代魔法使いよ」
ドラゴンを? あ、思い出した。リュウシュン先輩とこっそりはいって魔導書を盗んできた部屋の、ドラゴンに関する本に出てきたんだった。歴史に残る古代魔法使いってどれぐらいいるんだろうか。覚えるべき量が沢山ありそうで怖い。
「はぁ、そんなことより次行きましょう。レイルが作った仕掛けでは死人が全然出ないってことでも有名なの。だから、勝手に住みついた魔物以外は注意する必要はないわ。まぁ、流石にドラゴンは強いでしょうけど、死ぬ寸前でどうにかしてくれるシステムがあるはずよ」
なんてありがたいシステム。じゃああれか、今からとりあえず地味にイライラするだけで命は保証されているわけか。地味にイライラするだけで。
「鬱陶しい!!」
ビアンカさんの言葉に同意するよ。ボイスパーカッション略してボイパという、人の声で打楽器の音を真似るという技術をつかったものが、ひたすら耳元で聞こえるもんね。
しかも微妙に下手糞。いや難しいものだから仕方ないけどさ、ひたすらそれが耳元でって。
若干のストレスが。
レイル・ブランシェ。何で古代から現代にこんなくだらない贈り物しているんだ!?
「えー、そう? なんかきいてて楽しいけど」
ミュアさんは何でも楽しめるらしい。今ばかりはストレスを感じていないミュアさんが羨ましい。




