大樹と少女
昔々、本当に遠い昔。
この世界に、たった一人だけ魔力を持つお姫様がいました。
お姫様は日照りが続いた国で、魔力を使って雨を降らせます。
その国では永遠と雨が降り続け、やがて綺麗な湖になりました。
その湖の水を木が吸い取って行き、木に不思議な力が宿りました。
その噂を聞きつけた様々な国の人が集まり、木の傍で生活を始めます。
しかし、いつしか欲望まみれになってしまった木の周りで人々は争いを始めます。
そこに一人の天使が舞い降り、木の不思議な力を使い人々の争いを止め、世界は平和になりました。
その木は現代でも残っており、再び争いが生まれた日の時の為に魔力を溜めていると言います。
「と、これが魔力の木に関係する昔話。いろいろ省いたけどね。そしてこれがその木」
ビアンカさんが説明しながら魔力の木に向かって歩いていく。
昔話が終わればちょうど、とてつもなくでかい魔力の木が目に入る。
魔力の木の周りには夜光虫が飛び回り、木自体も淡く光っていてなんとも幻想的な光景だった。
ビアンカさんは魔力の木の前に行き、膝をつき手を合わせる。
魔力の木がなお一層光り輝き、強い風が吹けばその光が私たちを包み始める。
身体に熱いものが流れていくのを感じた。これが魔力の流れなのだろうか?
精霊の方を見れば、やっと分かったにゃか、と言いたげな目を向けてきている。
いや、そんな分かりやすいものじゃないからな、つっこんでやりたい。
「わぁ! ちゃんと魔力戻ってきた!! 凄い凄い、ありがとねビアンカちゃん!」
「ちゃ、ちゃん??」
いきなりのちゃん呼びに、ビアンカさんの顔が引きつってるし。
というか、ビアンカさんをちゃん付けで呼べるなんてミュアさん実は勇者なんじゃないんだろうか。
「うん! だってあんなに話したから友達だし!!」
あんまり馴れ馴れしいと、ビアンカさん怒っちゃうんじゃ・・・。
「照れてるにゃ」
ピュアだ、この子本当にピュアだ。やばい、ギャップ萌え効果が今私の胸で煩く。
「変態がいるにゃあ」
仕方ないんです、萌えるときは萌えちゃうんだから。何この子可愛いんですが。
「な、なによ。二人ともそんな生ぬるい目で見て、目的を早く言いなさいよ。手伝ってあげるから、それで早く帰るわよ」
「本当!? ありがと、助かる!! ドラゴンが守る秘薬が欲しくて!」
「嘘でしょ!? ドラゴンと戦うとか正気!?」
あ、よかった普通の反応をする人がいた。やっぱりドラゴンと戦うとか正気の沙汰じゃな・・・。
「でもそうね、私の腕の見せどころじゃない。一回戦ってみたかったのよ、任せなさい」
お前が正気の沙汰じゃないよ!!?? そしてやっぱり普通の反応は得られなかった。
うぅ、なんだろうこれから先もとんでもないことにばかり巻き込まれる気がしてならない。
「よーし! ビアンカちゃんも乗り気なとこで、そろそろ飛んでいくよ!! トランスフォルマスィオン・バレ」
再び魔法を使えば飛び始める。私も魔導書を開けば、詠唱する。
「ヴィント・フェーダー」
羽を纏い、上昇。うん、魔力の流れが分かる今なら何となく操縦が・・・。
「だから飛びすぎだよ!?」
出来なかった、魔力の放出の調整とかできない。たすけてえぇぇぇ。
「しかたにゃいにゃあ」
面目ない、助かりました。
「あんた、飛べないとか。どうやって生きてきたの? もしかして遠出をしないひきこもりなの? それになによさっきの魔法聞いた事ないんだけど。やっぱりあんた怪しい」
うぅ、ミュアさんみたいにあっさり行かない、さすがビアンカさん。
というかちゃんと遠出もしていたよ、ゲームを買いにとかね。
もちろん、電車とバスを駆使して。向こうは飛ばないから!!
「お前さんは、精霊には心の声駄々漏れなこと忘れてにゃいか? 電車にバスって科学の国の人にゃね」
あ、しまった。これはまずい?
「精霊は中立だにゃあ。でも人と契約している精霊はその人の味方だにゃ。だから契約精霊にばれないように気をつけるにゃあ」
はい、分かりました。うぅ、心の声が聞けるって反則だ!!




