消えた魔法
「ミリアルちゃん着いたよ」
夢の世界から出て来ると、そこは埃をかぶった如何にも古そうな本が沢山ある部屋だった。
禁術全集、創造召喚魔法の書、魔物の本、謎の魔導書などなど。
「先輩、やばそうな本ばかりあるんですが」
「まぁそういう部屋だからね。ほらミリアルちゃんドラゴンの事なら魔物の本に書いてあるよ」
早く見て早く帰るべきだろう。先輩に渡された本をすぐに開き内容を見る。
ドラゴン、レイル・ブランシェという名の魔法使いが作り上げたとされる、闇の魔女を鎮めるために召喚された魔物。現在存在するドラゴンは、それを模倣し作り上げられたもの。
ん? レイル・ブランシェに闇の魔女って。
「あぁ、それか。この世にある魔法は闇の魔女が作り上げたとされているんだよ。その闇の魔女が自分の作った魔法により精神が蝕まれ、世界を滅ぼそうとするんだ。そこにずっとそばで彼女を見守り続けたレイル・ブランシェという男が、闇の魔女を倒すためにドラゴンを誕生させたらしいよ」
ずっと傍にいた人間を倒すために召喚。レイルという男は一体何を思いながら召喚したんだろうか。
って、そうじゃない。いまは調べることに専念しないと。
レイルは、ドラゴンを作るにあたり闇の魔女を信じ一つの弱点を作った。
それは聖なる魔法。闇を身を落とし聖なる魔法が使えなくなった闇の魔女が正気を戻したら、聖なる魔法を闇の魔女は再び扱う事が出来る。
「聖なる魔法?」
「学者は光系統の魔法じゃないかと言っているんだけどね。でも光系統をつかってもドラゴンに攻撃が効く様子は無い。つまりさ、昔はもっと沢山の魔法があったんじゃないのかな。この魔法書を見てみたらいいよ」
言われた通り魔法書を開く。魔法の系統は、授業で習ったもののほかに、聖、鉄、血、呪、天、海、守、魅などなど、知らない系統が大量にある。
そのまま聖なる魔法に関係ありそうな聖のページを開く。
「そこに沢山魔法が書いてあるんだけどね。そこに書いてある魔法僕じゃ使えない、というか国の人みんな使えてないんだよ。魔法研究者が何度もそこにある魔法を使おうとしては失敗したとか」
全部使えない魔法なのかと少し残念に思いながらも、魔法が発動できないという感覚がどんなものか気になったので、書いてある魔法を唱えてみる。
「サクレ・リアン!」
二度ある事は三度ある。そんな諺があったなぁと遠い目をする。
魔法の国の自分の家の本を花とかに変えてしまったのが一度目。
迷路をぶっ壊してしまったのが二度目。
そして、本から鎖が飛び出して部屋の壁をぶち壊してしまったのが三度目、ってか現在だよ!!
「ミリアルちゃん何で魔法が。本当に変わった子だね。いや別にいいんだけど、僕の魔法で壁は直せるし。それにしても壊れた壁の向こうにも部屋があるね。これは魔導書? 魔導って魔法と何か違うのか?魔法はまだまだ奥が深いね。まあいいや。その魔法全書と魔導書一個ずつ持って帰ろう。ミリアルちゃんはどっちが欲しい?」
いま何とおっしゃいました? それは間違いなく泥棒という奴では。
「いりません」
思わず即答してしまった。いやだって怖すぎるし。如何にも重要そうなものの持ち出しとか私には荷が重い。
「そんなこと言わずにさ、もしもの時に持っておきなよ。必ず必要になるからさ」
そう言って先輩は無理やり魔導書を押しつけてきた。先輩なんで行動が大胆なんですか。
必要になる時っていったいいつですか。
「さてとじゃあ帰ろうか」
まるで、何時必要になるかは知っているけど教える気は無いよといわんばかりに、速足で歩いていく。
はぐれたら帰れない自信があったので、聞くのは諦めて先輩の後ろをついていく。
先輩が言った意味を知るのは、もう少し後の事。




