ドラゴン登場
「先輩、私は思うんです。昔の魔法使いって馬鹿だったんじゃないんでしょうか」
「奇遇だね、僕もそう思うよ」
ここは、普通の家が20建は建てれそうな開けた場所で、そしてそこには堂々と、このエリア半分くらいを埋め尽くすサイズのドラゴンがいらっしゃるのです。
馬鹿か!? 何を思ってこんな馬鹿でかいドラゴンなんてつくったの!?
しかも問題解くことで開く扉を潜ってすぐとか・・・。心の準備は意味ないけどほしかった。
「先輩、私勝てる気がしないです」
「安心してミリアルちゃん」
さすが、先輩は無謀じゃない、ちゃんと対抗策が!!!
「僕も勝てる気がしないから」
ないことぐらい分かってたよ! 本当にこれどうすんの、あ、なんかドラゴンの口から真っ赤な炎が。
わあぁぁぁ、あったかーい。
「ちょ、ミリアルちゃん現実逃避してたら死んじゃうよ!? 魔法、魔法、えと、サブル!」
先輩が咄嗟に多量の砂で炎を消去してくれたので大事なし。
魔法ってすごーい・・・ぐ、現実逃避してる場合じゃないか。
本体に魔法は効かない。物理攻撃も効かない。でも必ず欠陥が存在する。
欠陥が出来やすい場所はどこだろうかって、考える暇ぐらい頂戴ってば。爪も巨大だし、ちょこのままこっちに爪が振り下ろされたら、皮膚切れるどころか貫通する。
「フォシーユ!!」
ガキン! と鉄と鉄がぶつかり合ったかのような音がする。片方は爪で片方は鎌だけど。
どうみても爪の方が弱いはずなのに鎌では傷一つつかない。爪をはじくだけで精いっぱい。多分長時間やれば先輩が押し負ける。
「ミリアルちゃん、ミリアルちゃんも何か魔法を!」
そんなこと言われても、私は魔法の知識がからっきしで。
使える魔法なんて、数えれるほどしかない。それでこのドラゴンに効くほど強力なものなんて。
でも、何でもいいから唱えなきゃ。
「シエル・ラルム」
魔法の国に来てから初めて使った魔法を唱える。ポツポツと雨が降り始める。
「ミリアルちゃん、雨じゃダメージには・・うわっ」
ガキン!! さらに大きな音が響く。
先輩は手を押さえながらしゃがみこみ、息を荒くする。
再び爪は襲いかかる先輩に向かって。
大きく深呼吸、大丈夫行けるはず。
「ルミエール・グラス」
木々が多い茂る。でも普通の木じゃ駄目なの。そう、大きな鉄が実る木の林を!
「デストリュクション!!」
砕けて無数の刃になれ!!
目の前に見えないぐらいの無数の鉄が降り注ぐ。
埃が視界を遮る。これで駄目だったら?足が地面に縫い付けられたように動けずに、ただ祈る。
少ししてドスンっと、地面が揺れるほどの衝撃を与えながらも、ドラゴンは倒れた。
それを確認すると視界が眩む、足がふらつく、感覚が消える・・。
「ふふ、さすがミリアルちゃん、ドラゴンを倒すなんて期待を裏切らないね。ん? 魔力の使いすぎか。身体が起き上らないんだね。大丈夫、僕の背に乗って、禁忌の部屋までおぶるから」
力が入らない腕を引っ張られ、そのまま先輩におぶられる。
ずっと緊張状態だったのが今になってきてしまったのかもしれない、心臓がかなりドキドキする。
「熱っぽいね、無理させてごめんね。帰ったら早く休んでね今日は」
心配そうな声が聞こえる、どうやら熱を出してしまったらしい。魔力の使いすぎが何か体調の変化に作用するのだろうか。また授業でしっかり勉強しなきゃ。
「眠いの?ついたら起こすよ。だから眠って」
どんどん視界が狭まる。優しい声に導かれ私は夢の世界と落ちていく。
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「お姉ちゃん? 何で寝てるの。ドラゴンと戦うだけで疲れちゃった? まぁお姉ちゃんは母さんの血を濃く継いだもんね。お姉ちゃんが望めばいくらでも強くしてあげられるのに、何で力を望んでくれないの」
この声は、迷路で聞いた声? 周りは真っ白で何もない、誰もいない、でも声は聞こえる。
「僕を探したって無駄だよ、僕はここにいないんだ。不思議そうな顔をしてる、相変わらずだねお姉ちゃんは。僕は待ってるよ、お姉ちゃんがこっち側に来る日を。他の誰よりも」
声と共に、夢の世界は溶けていく。




