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迷路攻略

あれから、歩くこと数分。

私は巨大迷路の前へとたどり着いた。


「リュウシュン先輩、私、今気づいたんですけど」


いや、ドラゴンの衝撃で今まで気づかなかった私が悪いんだけどさっ!


「どうかしたの?」


「方向音痴が迷路って自殺行為じゃないですか?」


「そうだね」


あっさり頷かれた!? というか深刻な問題じゃないですか!


「そんなに慌てなくて大丈夫だよ。ミリアルちゃんなら、なんとかなるなる」


先輩、もしかしかしなくても適当に言いましたね? 目が泳いでますよ。


「まぁ、それよりも迷路攻略の説明をするね。入口が二つあるから二人で別々の入口に入る。進んで行ったら中間地点に水晶があるから、その水晶を破壊する。僕とミリアルちゃんがそれぞれの水晶を壊したら、ゴールが出現するって仕掛け」


しかも、なんでばらばらに迷路突入なんですか!! だめだこれ、永遠に迷うやつや。


「ちなみに先輩、私がずっと水晶を破壊出来なかったら?」


「ゴールが出てこずに、僕もミリアルちゃんも迷路から出れなくなるね。緊急脱出ルートなんて用意されてないから」


鬼か!! なんか、前も言った気がするけど。

とりあえず、水晶に辿り着けなかったら先輩と一緒に行方不明事件になるということだよね。責任重大すぎじゃないです?


「じゃあ、行ってくるね。出口でまた会おう」


あ、一人で混乱してたら先にいってしまわれた。私も行かなきゃ、めちゃくちゃ行きたくないけど。


ため息を吐きながら、入口から中に入る。最初から道が沢山分かれている。

えっと、とりあえず右?


その次は、正面で、右で、行き止まりでバックで、左で、前で、右で、行き止まりでバックで、左で、行き止まりでバックで。


かれこれ20分は繰り返した気がする。

そのつまり、完璧道に迷ったわけで、リアル行方不明とか洒落にならないからね!?


どうしよう、でも全く出れる気がしない。水晶にすらたどり着けない、どうしたらいいの?


もし、このまま出れなかったら? 最悪な場合の事を考えすぎて視界が涙でぼやける。

焦りすぎて頭が回らない。


「お姉ちゃん! こういうときは深呼吸だよ」


ぼやけた視界に幼い少年が映る。懐かしい気がするけど誰かは分からない。


でも、そうだ、私はきっと昔も迷路で道に迷って泣いて、それからどうしたんだっけ?


「迷路を歩く時は壁に手をつけて歩くんだよ。あと印をつけながら歩いたら同じ道を二度歩かずに済むよ。そしたら最後にはちゃんとゴールに着くんだから」


少年の言葉を聞いていたら、なんだか落ち着いて涙が乾く。

視界がはっきりすると少年は目の前から消えていた。

まるで夢でも見ていたよう、それでもさっきの言葉をしっかり覚えている。


壁に手をつき、印をつけもう一度私は歩きだす。


変わらない景色、狭い通路、圧迫感を与える壁。

怖い、怖いけれど大丈夫。落ち着いて深呼吸。絶対に出口に辿り着く。


「あれは・・・?」


更に進む事10分。少し開けた場所に台座があり、その上に水晶が。

ようやく辿り着いた!中間地点だけど!!


それにしてもこの水晶どうやって割ろう?高い所から落とせばいいのかな?


試しに手に取り、う、お、重い。まるで鉄球を持っているかのような。

何でこんな重いんだとつっこみながらもそれを地面に向かって落とす。


ズシーーーーーーーーーン!!!!!!


これさ、水晶が落ちた時の音じゃないんですけど!? 揺れたよ!? 水晶が落ちた反動で地面が揺れたよ!?


どうやったら割れるのかと、割れる気配のない水晶の前でしばらく呆然とする。

迷路のみならず、水晶を割るのも険しいってか、これ本当に割れるの?


物理的なものに強いんだろうか。なら魔法で壊せばいい?

でも、私破壊するような魔法なんてしらな・・あれ?


そういえば、女神像が岩の涙を流した時に唱えた先輩の呪文。


「デストリュクション」


思い出しながら、水晶が粉々になる事を想像し詠唱する。

次の瞬間、パリン! という音と共に水晶玉が割れていく。


やっぱり魔法ってすごいんだ、それにしても水晶玉を壊してもここは中間地点だからまだ迷路続くのか。

どうせなら迷路ごとぶっ壊れたら楽なのになぁ。


ズドドドドドドオォォォォォオオ!!!!!!!!


ごめんなさい、悪気は無かったんです、私は別に犯人じゃ・・・。


壁が、勝手に崩れただけなんです。うん、ワタシハワルクナイ。


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