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知りたい

「ほら、寮だ。じゃあな。また何かあれば言うから、お前はそれまでとりあえず周りの人の意識改革からしてくれ」


迷子にならないように、殿下は女子寮まで私を送ってくれました。

面目ない。


別れの挨拶をした後、いろいろとあった疲労感から軽くため息を吐き、自分の部屋の扉を開ける。


「おっそーい!! 今何時だと思ってんの!? 22時だよ。何してたの、心配してたんだよ!」


扉を開けるなり、ミュアさんが怒ってくる。なんか怒り方がお母さんっぽい。

思わず苦笑してしまった私は多分悪くない。


「ちょっと、何笑ってるの! ほら風呂入ったりして寝る準備する。ご飯は適当に食堂から持ってきて机に置いといたから。保温の魔法をかけておいたからまだ暖かいよ。あんまり就寝準備遅いと先に寝ちゃうからね、早く済ませてよ」


意外に面倒みがいいな。そっか、これがミュアさんの個性か。

明るくてフレンドリーで面倒見が良くて。

憎しみで見えていなかった。殿下のような人だっていて、皆違うのに。


「ねぇ、ミュアさん。どうしたら科学の国を好きになる?」


それなら、憎むよりも怒るよりも先に知ることから始めよう。

殿下は和平する気でいた。私もその未来が見たい。


そのためには、負の感情にとらわれるだけじゃ駄目なんだ。


「どうしたらって、科学の国の人が敵じゃなくなったらからかな。敵が好きな人なんていないもん。ミリアルは科学の国が好きなの?」


「好きだよ」


そっか、嫌う理由はシンプルなんだ。それならきっと意識改革は出来る。


「助けてもらった事があるの、科学の国の人に」


「そっかぁ、うーん、ミリアルちゃんが言うんならそんな意味分からない人ばかりじゃないのかな。あはは、わたしって単純? でもそんな気がしてきた。ねぇ、助けてくれる人がいるなら、私と一緒に科学の国に・・・。何でも無い! ほら就寝準備!」


何を言いかけたんだろう。一瞬思いつめた顔をしていた?


釈然としない気持ちのまま就寝準備をする。

ミュアさんは、顔をそらすように私から背を向けベッドに寝転がっていた。


私も同じように自分のベッドに寝っ転がる。

するとミュアさんは振り向きこちらを見てくる。


「ミリアルちゃん、私は昼に科学の国なんて消しちゃえばいいって言ったよね。割と本音なんだ。戦う事が怖いの。知り合いが死んで知り合いが狂うところなんて、見たくないんだよ。だから争いの火種なら消えてしまえばいいって。臆病だよね。でもさ、もし戦いになったりしなくても、なんだかミリアルちゃんは、消えてしまいそうで怖い。私たちとは違う気がして。ねぇ、ミリアルちゃんは消えない?」


どんな過去があったのだろうか。今度は隠すことなく辛そうな顔を向けてくる。


「諦めなかったら、戦争しなくても和平出来るよ。それに、私は消えない。やることがあるからね」


諦めなければ、きっと殿下が即位したとき平和な世界にしてくれる。

それを信じればいい、怖い人だけど思いやりがある人だから。


「そうだよね! えへへ、私がこんな元気なかったら、雨になっちゃうね!! 暗い話はやめやめ、寝るよ。おやすみなさい」


「おやすみなさい」


国の上に立つ人の事情で民は振りまわされる。

そのせいなだけで、きっと魔法の国の子供も科学の国の子供も本質的には何も変わらない。


いつか、ミュアさんに科学の国の人間だと打ち明けれる日が来たらいいな。

そんな事を願いながら目を閉じ、睡魔に身を任せる。



次に目を開けたら、飛び込んでくる景色は森林だった。


「もうすぐ会えるわね、ミリアル」


緑の髪の美女は笑う。私に会えるのがうれしいとばかりに。


「今のミリアルならきっと大丈夫よ。だから早く私を呼んで」


今の私に呼ばれるのを美女は待っていた。でも私は彼女について知らない。


「覚えていないか。じゃあ、やっぱり今はいいわ。困ったら助けてって言って。そしたら助けに行くわ。ほら、もう朝になっちゃう。バイバイミリアル。また今度」


森林がゆっくり崩れていく。意識が遠のいていく。


貴方は一体誰?

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