敵対心
「おーい? ミリアルさん、ねえってば、生きとる? 駄目だ死んでるね。いや、お願いだから無視しないでってば!!」
魔法の国が科学の国に対して、隠している物事の危険性に唖然としていたら、心配したのか前の席にいるミュアさんが、私の頭を持ってガシガシ揺らしてくる。
ちょ、まっ、脳みそ揺れる、気持ち悪いって。
「なに」
「あ、良かった反応返ってきた。休憩時間だよ。そんな深刻な顔してどうしたの?」
ミュアさんは、いや魔法の国の人は、なんとも思わないんだろうか。科学の国にそんな危険な事を隠している事に。それぐらい邪魔なのか、科学の国は。
「悲しそう? どうして?」
私の顔をじっとミュアさんが覗き込んでくる。その顔に苛立ちが湧く。
ミュアさんが悪いわけじゃない。でもミュアさんも魔法の国の人で、私たち科学の国の人を蔑にする敵。
魔法の国の人がこんなんじゃ、科学の国だって敵対するのも無理ない。ふつふつと、自分の心に憎しみが湧いていくのを感じた。
「いや、国同士の対立がなくならないはずだなって。戦争が起きたら嫌だなって」
「戦争が起きたら嫌か。争いが嫌いなのかな。私も嫌い。だから魔法の国と敵対する科学の国が嫌い。そんな心配するよりさ、強くなって科学の国を消しちゃったらいいんだよ。そしたらそれ以上の争いも起きないんだから」
科学の国が一体何をしたんだろうか。魔法の国の人に消えてしまってもいいと思われるほどの何かをしたの? どうしてそんなことを言うの?でもこれ以上は聞けない。
もし私が科学の人と知られたら、きっと生きていけないから。お母さんもそしたら危ない。絶対にばれてはいけない。改めてそう思う。
もっと色々学んで、それから科学の国に秘密をこっそり教える方法を探すしかない。あとで一人でいろいろ調べてみよう。
「あ、チャイムなっちゃう! 昼休憩一緒にご飯食べようね! 約束だよ」
昼御飯の時に図書室の場所を教えてもらおう。そう思って頷いたら、ちょうどチャイムの音が鳴りフルリ先生が入ってくる。
「はい、全員いますね。では授業を始めます。得意系統を調べるので魔力測定石を1人ずつ前に出て触れてください」
出席番号順に魔力測定石に触れていく。先生の言った通り、大抵の人が得意系統が1つしかない。2種類以上ある人は、良く睨んでくるビアンカさん。炎と音系統。次は、ルリアルさん。水と愛系統。
「私は地だけかぁ。2種類ある人が羨ましいね。ミリアルさんは2種類あったらいいね! ほら私の次でしょ行ってきなよ」
どうやら、ミュアさんは地系統だけだったらしい。私も前に出る。先生に促され、魔力測定石に触れると、ただの石に見える魔力測定石が、薄緑と金に光る。
「薄緑に金。風と光系統の2つが得意なんですね」
次の人と変わるよう言われて、自分の席に戻って行く。
「凄いじゃん! いいなぁ、ミリアルちゃん2属性かぁ。私に分けてよ! って無理かあはは」
なんだか自分の事のように喜んでいる。何がそんなに嬉しいんだろうか。今は、ミュアさんを気にしてる場合じゃない。軽く流して他の人の測定結果を見ていく。
結局、私の後の人で2系統持っていたのは殿下だけだった。光と星。覚えておかないと。
2属性を持っている人の前では、よけい気をつけなきゃいけない。ばれて戦うことになったらきっと厄介だから。
「はい、それぞれ得意系統が分かりましたね。自分の得意系統を知ることは魔法を使っていくのに重要な事ですので決して忘れないようにしてくださいね。さてとこれで授業を終わります。また午後から授業で魔法の種類について話すので、昼休憩を取った後、教室に集まってください。では解散」
解散の言葉に皆はお腹が空いていたのか、すぐに立ち上がっている。
そして・・
「行くよミリアルさん」
約束したからだろうミュアさんが立ち上がり声をかけて来る。
絆されたりはしない。
科学の国と魔法の国は分かりあえない、それが事実。それなら、友達はいらない。私は科学の国が好きだから、科学の国を蔑ろにする魔法の国を許さない。
でも、今は落ち着かなきゃ、情報が必要だから。
心に壁を作りながら立ち上がる。科学の国を救うために。