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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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成人の儀の第一歩 5

 修行七日目は早朝でもすでに大雨であった。足下が危ないから森の奥へ行くのはやめよう。起きてすぐ雨音に気付いた魔導士ジュニーニャは考えた。今日は座学にすることにして、朝食の時に三人に話しておこう。

 そう思いながら着替えをしていると、台所からすでに音がしている。息子かタリファだろうと気に留めずにいつも通りに支度していたが、途中で音がしなくなった。全員の食事の支度なら、そろう前に全く音がしなくなるのはおかしい。


 飲み物を入れようと台所へ向かい、書置きを見つけた。それから息子とタリファ、ハユハユと出くわして、そこでジュニーニャは、『弟子』の出した音だったのだと確信するのだった。


 彼女の息子が、三人がシュピーツェを連れて家を離れていくのを窓から見たと話した。まだ走り込みがしたいのか、くらいにジュニーニャもタリファもハユハユも考えていた。


 昼になっても帰ってこないが、小さな子供ではないのだし、心配していなかった。午後のお茶の時間にシュピーツェだけ帰ってきた。

 彼は、三人とは朝すぐに分かれたと話した。そこで魔導士らは、初めて心配になった。すぐにお茶を片付け、雨具の支度をした魔導士は、息子とタリファに留守番と夕食の支度を頼んだ。

 魔導士と猫人と記憶喪失の男は波動生物をつれて家を出た。


 ただでさえ時間が経過しているうえ、大量の雨で匂いが流れてしまい、獣人のテトグでも三人の行き先が辿れない。心当たりはあの泉の祠しかない。森の中は、いつもの道が通れなかったり、土が崩れて地形が変わったりして、魔導士は己の年老いた足を悔みつつ家に引き返した。


 そのせいでさらなる遠回りをせざるを得なかったので、その間にあたりは暗くなり始めていた。シュピーツェとテトグは少し進んでは立ち止まって目を凝らして、あるいは進みながら三人の名前を呼んだ。姿は見えず、返事もない。




 日が暮れる前に、シュピーツェとテトグは泉の祠にたどり着くことができた。ダージュは岩陰に座り込んで眠っていて、その傍でフリューシャと夏樹が倒れていて、意識がなかった。三人とも雨具を着ているが、ずぶぬれだった。

 シュピーツェたちは棒と防水の布で簡単な屋根を作ってから、三人の体をタオルで拭いてやる。その間にハユハユが魔法で火をおこした。本来は服を脱がせて体を拭いて、着替えさせたいところだが、すぐにこの場を離れないといけないので、光の魔法をタオルにかけて、それをはおらせた。三人の頬を軽くたたいて起こし、テトグが夏樹を背負い、シュピーツェがフリューシャを背負った。ハユハユが先頭でぼんやり光りながら浮かんで、帰り道を教える。




 魔導士の家に戻ると、魔導士たちは協力し、さっそく三人の濡れた衣服をすべて脱がせた。体をふき取り、髪を乾かし、ふんわりした大判のタオルでつつみ、いつもよりも余分に布団がかかった寝床に寝かせた。両脇と首元に氷の入った入れ物を保冷剤代わりに置いてやり、交代で付き添って、吹き出る汗を拭いてやり、薬草茶を数滴ずつ飲ませてやるのを一晩続けた。それでも熱はまだ高いままだ。


 翌朝、ダージュだけ目を覚ました。ジュニーニャは彼に薬草茶やスープを時々飲ませ、寝間着を変えてやり、寝ているように言い聞かせた。夜にはダージュは多少体を起こしていられるようになったが、寝床からは上がれず、二人は眠ったままだった。

次回は明日11日に投下します。

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