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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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成人の儀の第一歩 1

 リンドあるいはリンデと呼ばれる巨大な村には、周囲に点在する遺跡踏破や洞窟の魔物退治のための冒険者が集まってくる。初めての遺跡を踏破した六人と一体は、遺跡を進むさいに世話になった長耳族の書記に、知り合いの魔導士の紹介を受けた。フリューシャの成人の儀のための話を聞きに行くのだ。


「そういえば成人の儀ってなにするの?旅をして、話を聞いたり遺跡を回ったりするのが試練ってのは分からなくもないけど、何をしたら儀式が済んだことになるの?」


 夏樹がフリューシャとダージュに尋ねたが、二人とも、親など周りの大人から『回ればわかる』としか言われてこなかった。ダージュはハーフなので一六から一八歳で成人の儀を受けることができるし、夏樹も集落へ帰ったらそこに住むのだから、多口種などと同様に一六から一八最で成人の儀を通過しなければ大人として扱われない。




 魔導士の家は、長耳族らしい、巨大な樹と融合したような家だった。くりぬいたり、幹や大きな枝の周りを囲ったりして居住空間ができている。

 夏樹が少ししか滞在しなかった二人の集落は、半数近くが木の周りを取り込んだようなほかの人間たちにもあるような家を建てるというものだ。西洋のツリーハウスのような様式の家もある。リンドの長耳族集落のようにほぼすべてがこうした伝統的な様式の家というのは六人とも初めてだ。


 ほぼはしごになった直角に近い階段を上って、扉のわきに下がっている呼び鈴を軽く爪ではじいて音を鳴らす。すると、人間でいうと十歳にもならないくらいに見える男の子が扉を少しだけ空けて、要件はなにかと聞いてきた。

 フリューシャが、書記の紹介を受けて来たことと、耳のピアスを見せながら成人の儀のことを話すと、男の子はわかったと言うが早いかぱっと室内に消えて行ってしまった。待っていると、男の子に支えられて、伝統的な魔法使いの衣装を来た、多口種の六十代くらいに見えるおばあさんがゆっくり歩いてきた。長いとんがりを横に垂らした帽子に、長い黒マント。中に来ているのも黒の上下で、履いている黒のパンツの広めの裾が、足の動きに合わせて魚のひれのように揺れていた。


「ようこそいらっしゃい。さあおはいりなさい、若者たち。お友達もご一緒に。」


 おばあさんはジュニーニャと名乗った。男の子は三十歳になったばかりの孫で、ジュニーニャに言われて八杯のアップルティを入れてテーブルに並べると、さっと奥の部屋に逃げるように去っていった。


「ごめんなさいね。お客さんに慣れていないのよ。私のところに成人の儀の話を聞きに来たのは、また何組がしかないからかしらねえ。」


 ジュニーニャが申し訳なさそうに言い、おかまいなく、と夏樹とシュピーツェが返した。




「成人の儀のお話だったわねえ。私の頃は、遺跡を回ったり集落を回って長老のもとへ行くのは同じだけれど、長老のところで、魔法の試験をしていたのよ。もちろん、人間の魔法が禁止されている時代だったからね、魔法と言っても、かまどに火をつけて上手に火加減を変えるとか、土を耕した後のように起こすとか、そういうものだったわ。

 私は素質があったし、近くに私に会う力場があった集落もあって上手にできたけれど、中には起こした火が大きすぎて家を焼いてしまいそうになって、集落を追い出され話をうやむやにされてしまった人もいたのよ。」


 ジュニーニャはふうと一息ついて、カップの半分ほど紅茶を飲んだ。


「そうね、今から魔法の試験なんてやっても、都会で暮らす人たちには難しいでしょうし、無駄になってしまうかもしれないのよね。だから私は魔法の試験はしないわ。もちろん、見てあげることはできるから、相談があったら言ってね。」


 フリューシャが、自分に素養がないことと、これまで魔法を使った結果を話し、ダージュが逆に自分は人並みのはずが魔法を使う機会がないことを話した。

 同行する夏樹はアーシェ人だからもちろん魔法を使うとか、使い方を教わったことがないことを話した。もし使えるかもしれないのなら、自分も魔法を使えるのか調べてみたいと身を乗り出して付け加えた。


 ジュニーニャは、何をするか内容に迷っていたけど、あえて魔法の試練を課すことにした。それを六人と一体に話した。

次回は明日7日水曜日に投下します。

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