はじめての遺跡洞窟<ダンジョン> 3
三つめの『部屋』はこれまでの倍ほどの高さのある空間で、上部にこぶし大の穴がいくつか空いていて、光が差し込んでいる。穴は自然に空いたというより、無理やりこじ開けたようだ。
まぶしいのは、真っ白な石で出来た壁のせいだろう。いや、石ではない。
何かの金属だ。この部屋全体が、何かの装置なのだ。超古代の長耳族文明の遺跡は、全部または一部が金属でできている。元はもっと複雑に部屋が配置され、普段の生活なのか、特別な研究なのか、何かが行われていたのだろう。
夏樹がおぼろげにしか思い出せないSFアニメの秘密基地のように、操作盤らしきものが一角にはまっていて、等間隔にスイッチが並んでいる。言葉が古すぎてダージュもフリューシャも読めないから何の操作をするのかはわからない。
ここから何かを持ち帰って報告すると言われても、壁や機械をはがした形跡はない。一度持ち帰ってまた持ってきて置いたようなものも見当たらない。罠を探すときよりさらに丁寧に、金属やスイッチなどの切れ目まできっちり辿ってみるが、やはり不審なものはないし、変化はない。
やはり、操作盤を触らないといけないのだろうか。初心者向けと言われてるのだし死ぬようなことはないという予想はできる。しかし、先の通路の動く壁のことがある。ヒントや仕掛けを無視すればその時は起こることによっては死ぬというわけだ。不用意に触りたくない。
いや、しかし初心者向けというからには、それこそ先の壁のように分かりやすい仕掛けではないだろうか。いやいや、あんな仕掛けの奥にあるのだからここは重要な区画で操作盤はいけない部分も含め遺跡全体に影響するに違いない。失敗したら出られないのかもしれない。犠牲者は勝手に排除されたりして見えないだけなんだ……!
ぐるぐる、頭がくらくらしそうになりながら六人は一度休憩することにした。時間的にも、昼食がとりたいと六人の腹が催促している。携帯食料をもそもそと食べて作り置きの冷めたお茶で流し込み、あきらめたとばかりにシュピーツェが眠りに落ちた。即落ちて即起きられるところも傭兵か何かだったのかと思わせる。ダージュが舌打ちして、立ち上がるのをやめて大きく息を吐いた。
「もう、押しちゃおうよぉー 何にも浮かばないよぉー」
どれくらい時間がたったのか、まぶしさが若干減ったところでテトグが床をゴロゴロ転がった。テトグがぶつかってシュピーツェは目を覚ました。夏樹とフリューシャは操作盤を見て、何か話をしている。
何かわかったのかとダージュが尋ねると、夏樹が操作盤に何か仕掛けはないか探していると答えた。改めて操作盤を見ると、多く押された形跡があるスイッチがある。もちろんこの場に犠牲者の成れの果てなどはない。先の妄想というか不吉な想像のように大がかりなものが動いた形跡もない。
やがて、光が入らなくなった部屋は、各々の持っている光源のそば以外は暗くなった。あの壁を通る回数を極力減らしたいという理由で、戻らない。装備もあまりない状態で六人と一体は隅に集まって眠った。
もちろん交互に見張りを立てるのは忘れない。夜が明ける前くらいの一番寒い時間帯になぜかもう一つパーティが現れて彼らも何もわからないまま傍で仮眠をとりはじめた以外は何も起こらなかった。
夜が明けきるとすぐ、誰からともなく携帯食料の残りをもそもそと食べだした。後から来たパーティは、操作盤の文字を写して、村の長耳族に当たってみると言い、一人が地球の古いものくらいある大きな写真機でバシッと音を立てて写真を撮った。
「はぁ、やっぱり古い言葉や文字ももっと勉強しないとだなあ。」
「チビの頃に気付けよ!」
フリューシャとダージュのボケ&ツッコミに周りは苦笑し、六人と一体も後のことを考えて勉強するための本を探すために帰ることにした。
次回は明日30日水曜日に投下します。
先週ようやく収まった歯ぐきの痛みですが、先日やっと違和感もなくなりました。
でも、鏡で該当の親知らずを見ると、まだ半分くらい埋もれてるんですよね……
恐怖です。