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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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はじめての遺跡洞窟<ダンジョン> 1

 六人と一体は、すれ違った魔導士ハルーミン・アルカディア(通称ハルカ)に教えてもらった遺跡と長耳族の村へ行くことにした。地図と書き込みの通りに村々を辿って、数日かけて村まで乗鳥を走らせ続けた。森の中でも走れる足の強い鳥は高価ではあるが、ハルカの紹介だというと安くしてくれる者もあった。


 森の中を三日ほど彷徨うように曲がりくねって進むと、突然視界が開けた。森が途切れているのだ。途切れた先に、木を組んだ門と立札があり、『ここがリンドです』と統制語と長耳族の言葉で書かれている。門を入ったすぐに少し空間が開いているほかは、踏み固められた土の細い道が何本かと、それに沿って立ち並ぶ商店や家屋の建物。

 昼時に近く、よい匂いが漂ってくる。匂いのほうを見ると飲食店らしきテーブルが見え、席は埋まっている。六人と一体はその店の建物に入り、一人で席についている村の若者と相席して話を聞いた。




 村はリンドとかリンデと呼ばれている。古い言葉で村を意味する語が変形したものらしい。人口があまり増えない長耳族にしてはリンドの人口はあまりに多かった。冒険者が住み着くことで急激に成長し、二~三キロ四方に平屋が立ち並ぶ街を十年ほどかけて作った。長耳族は取り囲むように残された森の中で暮らしている者が多い。目当ての長老の他にも経験豊富な魔導士が何人か住んでいる。

 冒険者が多いことから宿はほぼ寝るだけ前提で、そこそこしっかりした作りで安い。冒険者の街らしく、遺跡や洞窟の探索に必要なものはあちこちに売られている。見比べたり、知識があるものが注意して買わないとへんなものをつかまされたりもするらしい。


 冒険者が多いのは、一行の目的の他にも数多くの古代の遺跡や、魔物が住み着く洞窟が数多くあるからだ。目的の遺跡のように数キロもない狭いものから、リンドよりも広い『地下街』『地下の街』などと呼ばれる広大な遺跡群まで、多種多様な遺跡や洞窟が存在する。手の込んだものや広い遺跡、魔物の知能が高い場合など、多くは罠などがありそこそこ経験を積んだもの以外には行き方を教えられないことになっている。

 昔の冒険者登録制度と違ってきっちりした基準はないが、経験者にしか教えない遺跡や熟練者のみに教えてよい遺跡というのが、経験則や話し合いなどで決められている。遺跡荒らし防止や後輩の育成などのため、逆に経験の少ない者だけ入ってよいという遺跡もある。目的の遺跡『三部屋』も、事故や失敗などで助けに行く以外には中級者以上は入れないことになっている場所だ。


 若者は、ついでにと言いながら、『三部屋』の行き方と入口の特徴を教えてくれた。大きな岩の割れ目から入るのだという。割れ目は狭いが、入るとそこそこ広さも高さもある空間が広がっている。そこから通路があり、あと二つ似たような空間があり、探索するとあることが起こるらしい。それを覚えておいて、村で報告すると踏破したとみなされる。もちろん、口外禁止である。

 罠はちょっと段差などで転ばせるとか、作りかけや故障で作動しないとかで、それほど脅威はない。罠探しの経験を積むにも向いている。初心者向けの極みのような親切さと村の人々は評しているという。


 若者は店まで教えてくれ、一行は足場を確かめる杖や、これまでの探索によって作られたという村周辺の地図を安く手に入れた。あとは手に持たずに身につけて使う灯りを買った。

 数は少ないが出歩く魔物もいるというので多少多めに魔法具の指輪や鉱石も買った。戦わないならこれが便利だと、使い捨てのお札をおまけにもらった。三~四枚置いておくと弱い魔物なら寄ってこないのだという。

 時間的に行くのは明日だからと、刃物を研ぎ屋に預け料金を払って宿に戻った。




 宿の入り口を入ると食堂が広がっている。全身甲冑ではないにしろ、難しい遺跡や洞窟から帰った人は服の下に皮鎧やくさりかたびらなどいろいろ装備していたり、出入りするときにいったん表で兜や道具をぬいだりはずしたりして入るので入り口付近は人が途切れにくい。立ち止まれずにどんどん奥へ進む羽目になり、なんとか空いている席に着くことができた。あの若者がそのままついてきてしまっているが仕方なくともに夕食をとることにした六人であった。


 食堂は人の流れが途切れず、がやがやと賑やかだ。行った遺跡の通称や番号が飛び交う。聞き耳を立てることで、『三部屋』は部屋の数が三つあることからついたという予想範囲内の話題であるとか、広い遺跡のどこまで進んだとか、どれだけの魔物を倒したとか、戦利品であるとか、自慢話や思い出話の花が咲き乱れている。


 食事を終えた六人と一体は若者と別れ、体を布で最低限拭いて眠った。

次回は明日28日月曜に投稿します。

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