どうして貴方はここにいる? 1
波動生物ハユハユを迎えたフリューシャ、ダージュ、夏樹、タリファ、テトグの五人は、移動式住居が点在する草原を北西に向かっていました。小高い丘を越える途中で、雨が降るという天気予報を念頭に置いて、丘の途中にあるという今は使われない木こり小屋を探すことを第一に、まだ明るい森の中を歩きます。
その間に五人は、ハユハユがハルカと出会ってからの話を聞きました。南西にある小さな国の軍隊の隊長に飼われていたハユハユは、その隊長さんが軍の仕事で街道の警備をするのに同行していました。そこで軍は野生動物の群れに襲われて散り散りになってしまい、通りかかって助けに入ったハルカに譲られたのでした。
「国土が豊かで狙われやすかったルルンストや、古くルプシアやアメリアの時代から強大な権力を持ったアルネアメリアなどと違い、国として独立した数年前にようやく徴兵してできたばかりの軍でな。
集団行動が一人前にできるだけの、設備も乏しい集団だったからな。隊長はずっと、近隣の退役軍人を指導者として何人か招きたかったようだ。
間に合わず、隊長自身が退役するしかなくなってしまって初めて、ようやく経験豊富な指導者を招くことができたのだ。ハルカ先生もしばらく集団行動の指導に残ったから、それで私は交流を深めた。」
引退した隊長の余生に寄り添いたかったが、と言いかけたところで、フリューシャとダージュが目当ての木こり小屋に続く小道を見つけました。まだ雨雲も見当たらないうちに小屋に着きそうです。五人はハユハユの話を聞きながら小屋へ向かいました。
小屋の入口は、閉まっていました。野生動物や魔物が出ない限りは、ここの小屋は締め切らないことになっていると話を聞いていたし、張り紙がされているので、とても奇妙なことです。神経質な人や怖がりな人が先客として生活しているのでしょうか。
五人と一体は慎重に小屋の周りを観察しました。小屋のわきの小さな畑は草が伸び、少なくともひと月ほどは草取りをしていないことが分かります。畑に手を入れていないのかと思えば、数日の間にいくらかの豆を収穫した形跡がありました。小屋の脇の道具入れを見ると、刃物や鍬などにまだ乾ききっていない土がついています。
南側にだけある窓から中をのぞくと、一目見た限りは誰もいません。中には仕切りがあるのが見え、よくよく見れば、その向こうに誰かがいるのがようやくわかりました。灰色がかった水色の髪の毛が見えます。
入りますと声を張り上げて、フリューシャが小屋の扉をたたきました。反応はありません。やや乱暴なくらいにだんだん、どんどん、と扉をたたいても、反応が返ってきません。再び窓をのぞいても、くすんだ水色の髪の毛は動きません。五人はしばらく考えて、小さな隙間からハユハユを小屋の中へ突っ込みました。
まったくいきなり乱暴だ、と文句を言いながらも、ハユハユは水色髪の毛に近づきました。仕切りの向こう側へ回って、様子が見えなくなったところで、五人はハユハユの叫び声を聞きました。
「すぐ開けるから、入ってこい!治癒の知識や魔法がつかえるならすぐに準備だ!!」
見る間にハユハユが扉にぶつかる勢いで飛んでいき、鍵を開けました。五人がハユハユを追いかけていくと、水色髪の毛の主がいました。
夏樹が首筋に触れて脈を診ると、かろうじてわかる具合でした。口元に耳を近づけるまで呼吸しているかわからない状態の大人の男性が、仕切りの板にもたれて座っているのでした。
ダージュが何とか使える初歩の魔法をかけ、診てみると、男性の顔は青白く、右腕と両足にひどいけがをして包帯を巻いているのが分かりました。出血がひどかったのか、近くに血で固まった包帯の塊が落ちていますし、体は死んでいるのではないかと思うほど冷たいのです。
ダージュがさらに初歩の魔法をかけ、止血をするのと、治癒力を少しずつ高めていきます。テトグとタリファはあたりに散乱しているものから布団や何かの敷物などをかき集め、密着して一緒にくるまって体をあっためることにしました。
夏樹は何をしていいかわからなかったのとダージュの指示で男性の荷物と思われる大きなリュックサックの中身を調べることにしました。フリューシャは薬草茶を調合します。
数時間して、まだ降らないながら雨雲で薄暗くなった頃、男性の体は多少生きた温かみを取り戻しつつありました。疲れて眠ったタリファとテトグと入れ違いに、男性は雨が窓をたたく音で目を覚ましました。
次回は明日23日に投下します。
先週から、最後(4本目)の親知らずのせいで歯ぐきがぷっくりと腫れてごはんが食べづらかったです。何とか気にならない程度に収まったのですが、親知らずはまだ半分以上隠れていて、これからも動く気まんまんのようでしょんぼりです。年末はやめてね、と切に願っております。ちなみに1本だけ虫歯になったので抜いてますがあとは特に何ともないです。
おかしいなー一本目が生えてくるときには何にもなかったんだけどなー(=だから存在に気かつかずに虫歯にしたとも言う)。