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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
72/171

ハユハユと放浪の魔導士ハルカ 2

 さて、と一つ呼吸をして、ハルカはフリューシャに、生まれたときにもらった『預言』の内容を覚えているかと尋ねました。六人の仲間と旅をして自分が変わるんだ、と答えたフリューシャに、彼女はどんな仲間か覚えているかとさらに訊きました。


異世界の子、

水の踊り手、

砂漠の星を知る者、

異世界の血を引く者、

魔術なしで魔法を操る神のしもべ、

鋼鉄の足で歩む者。


 フリューシャは一つずつ思い出しながら言いました。ハルカが水晶玉の上に両手を重ねました。

 異世界の子というのだけ、夏樹のことだとハルカにさえもわかります。でも、残りは旅を始めてからこれまでの間さっぱり見当がつかないままなのです。


 砂漠には五人とも行ったことがないし、『異世界の血を引く』なんて、血液を調べる以外に何かわかる方法があるのでしょうか。ひどいけがなどして、医療国テルミネの病院に調べてもらう機会があるのでしょうか。


「私が教えてやることはできないが……」


ハルカは重ねていた手を外すと、かごのほうへ行きました。布がかかっている箱の一つから、何かを投げてよこしました。


「こいつは神のしもべ、だな。」


 投げられたものは水晶玉にくっつきました。


「私の名はハユハユという。お前が、ハルカの言う旅の者か。よろしく……あ。」


 水晶玉に乗っているのは、淡い紫色をした波動生物でした。フリューシャが驚いて水晶玉を手から離してしまいました。波動生物ハユハユはしゃべっている間に玉が転がって、つぶれそうになったところで挨拶が途切れ、むぎゅっと声をあげました。




 ハルカは、『預言』の内容について、旅のはじめにはわからなくても、見つける楽しみができたと思えばいいのではないか、と話しました。

 異世界の血や鋼鉄の足は、途中で大けがをして奇跡的に助かったのかもしれないし、注意していれば大けがをしなくて済むのかもしれない。あるいは、比喩かもしれない。

 何があっても、それは自分たちの旅なのだと、ハルカは五人とハユハユを見ながら言いました。


 話が途切れたところで、ハルカは腹が減ったと言いながら調理のために住居の外へ出ました。住居のそばに石を組んだかまどがあり、五人とハユハユもついていきます。


 たっぷり食べた後、そのまま別れようとするタリファとテトグを呼び止めたハルカは再び住居に入るよう言いました。


「もし私が信用ならぬというなら……」


 ハルカは締め切った住居の中で頭に巻いている布を解いていきました。耳の少し上と、真ん中で分けられた髪の毛の間3センチくらいの小さな角がありました。耳の角の少し後ろにも、真ん中のものの倍くらい長さがありそうな、くねった角があります。耳はドワーフや両性族とは違った尖り方をしていて、ゴブリンに似ているのです。


 テトグたち猫人のような動物のような見た目の比較的受け入れられている亜人種族でも、他の人間たちのいる所では姿を隠していることは五人も知っています。まして、角が生えた種族なんて五人は知らないし、ゴブリンのように見た目が人間たちから遠い種族は、亜人のなかでも差別が激しいこともわかります。


 様々に口をぽかんと開けて驚いている五人を見ながら、ハルカはからからと笑います。ごめんなさいと謝るタリファとテトグの頭を撫でました。


「おまえさんたちが、迫害のようなおぞましい場面を見ずに、あるいはこれ以上ないほどの差別を経験せずに済んでいるということだと私は思った。謝ることはないぞ。

 私のようにすべてを包み隠さねばならぬような目に合わないことを、幸せに思うといい。


 ああ、ねたんでいるのではない。いつまた多口種や長耳以外が迫害される世になるやもわからぬのだから、今の幸せを、ぐっとかみしめて、しっかり、心にしまっておくのだ。」




 五人が別の住居で一夜を明かすと、朝にはもう、ハルカはいませんでした。

次回は23~25日のいずれかに投下します

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