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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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ハユハユと放浪の魔導士ハルカ 1

 フリューシャ、ダージュ、夏樹、タリファのもとに猫人テトグが加わってしばらくした頃のことです。国境が接しない、都市国家が点在する平野との境目に近い町に五人はいました。町の東側へ出れば、そこはどの国でもない緩衝地帯が、中央砂漠まで続きます。


 テトグと出会ったのは緩衝地帯にある場所でした。買い物の都合で西のどこかの国まで五人は一度戻り、改めて街道に沿って進んでいました。どうせなら一度、砂漠の手前まで、行けるだけ東へ行っておくべきだという話になったからです。買い物を済ませてたっぷりの荷物を乗鳥に載せると、五人は街道に沿って点在する都市国家に滞在しつつ東へ進み、砂漠の街まであと数日というところの小さな村まで、何事もなく進みました。


 ついた村は、定住せず数年ごとに移動しながら暮らす民族の村のひとつで、百人に満たない人々が暮らしています。


 五人が村に着き、村人の一人が来客を知らせる笛を吹いたとき、目の前には井戸の周りで水を汲んだり洗濯や炊事をしている十人ほどの女性がいました。

 鮮やかな柄の織物や刺繍の入ったストールをまいたりベールをかぶった女性たちの中に、ターバン状に真っ黒な布を頭に巻いて真っ黒なシャツと裾の広いパンツを履いたとにかく黒い女性がいました。

 その女性の背後にかけてある服装も黒や紺や濃い紫で、おとぎ話の魔法使いがかぶるような長い帽子(アーシェのように立っているものではなく、やわらかくて垂らして被るもの)が置かれています。


 魔法が禁止されている間に、魔法使いの伝統的な服装はすたれてしまったものだと、一般的には思われています。だからフリューシャやダージュやタリファは、仮装やコスプレをしている、つまりは魔法使いが好きすぎる人か、魔法使いを研究する人だと思いました。

 夏樹も、ファンタジーな魔法使いの老婆を脳裏に浮かべています。テトグは猫人で服装の知識がないので、ただ黒いなあと感じています。ともかく五人ともが、その女の人に注目してしまいます。


 見つめられて、黒い女性が振り返りました。彼女は五人に微笑みました。


「よく来たな、ちょいと待っておれ」


 彼女の声は、久しぶりに出会った親戚か何かのように親しげですが、五人は彼女のことを知りません。五人はどうしていいのかわからず立ち尽くすばかりです。

 黒い女性は近くの女性に声をかけました。声をかけられた女性が五人に近づいて、旅の方々どうぞこちらへ、と五人を案内してくれました。移動式の組み立て式住居です。


 その住居は誰かの家のようで、大きなカバンが一つと、平らにたたんで収納できるかごや箱がいくつか立てかけてあり、いくつかは収納として使われ、大きな柄の入った織物の布がかぶせてありました。椅子などはなく、敷物の隅に女性が座ったのを見て五人は同じように腰を下ろしました。


 待っていると黒い女性が入ってきました。それをみて案内の女性が礼をして去りました。黒い女性は持っていた荷物をかごの一つに入れると、ハンカチで手をぬぐって、フリューシャの手を取りました。


「よくぞ来た、フリカ(集落名)の若者よ」


 部屋の中央に二人は移動し、腰を下ろしました。黒い女性はフリューシャに手のひらを差し出すように言いました。そして差し出された手のひらの上に、握りこぶしより少し大きな水晶玉を一つ、乗せました。

 それから何か言おうとして口を開く途中ではっとした表情をしました。


「名乗るのを忘れていた! 私としたことが、なんということを。

 私はハルカ。放浪の魔導士ハルーミン・アルカディアだ。ハルカと呼ぶがよい。」


 ハルカは名乗って帽子を取りお辞儀をしました。彼女の頭は額の上から黒い布が丁寧にまかれています。怪我をしているのかと心配そうな顔で聞かれたハルカは、後で教えてやると笑いながら答えました。


「今は、おまえさんとの用事が先だ。」

次回は明日21日に投下する予定です。

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