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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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いもとアーシャ式小説 1

 国の北西部にある首都アルネアミンツから離れ、まだ王政だった頃の旧い首都レムシアに向かう乗り合いの大型馬車が、星空の下を休みなく走っていた。地球であれば、日付が変わって少したったくらい。六人と一体のうち、起きているのは夏樹とシュピーツェだけだった。日本を離れて半年以上たつのに、夏樹は眠る時間が変わらなかった。それに、このとき、夏樹は眠くなかったから、見張りにはちょうど良かった。


 『馬』を操る御者とシュピーツェが世間話をしていて、ふと、御者が夏樹が起きていてちょうどいいな、と言い出した。質問したいことがあると御者は言う。


「最近、アーシャからの輸入ものの古い娯楽小説を色々読んでるんですがね、『じゃがいも』って、小説の書かれたニホン以外では珍しい食べ物なんですかい?」




 御者が読んだ小説の中に、主人公の日本人が転移した先の世界ではじゃがいもが珍しい、あるいは存在せず、大規模な栽培で仲間が儲けたり、まずいと思われている国でおいしい料理を作って驚かせるといったシーンがほぼ全てにあったのだという。数えていたわけではないから誇張もあるだろうが。二十~三十本読んで七~八以上にあったらしい。

 夏樹の祖父が中高生だったころに流行った異世界転移ものの小説に多いシーンだ。夏樹も幼い頃に祖父に許可をもらって祖父の部屋の本を読ませてもらっていたので、なんとなく分かる。


「そんなに珍しい食べ物じゃないというか、見ないことはないというか。むしろ外国のほうがいっぱい食べてるかも。」


 夏樹が考え込み、御者が馬に向き合っている。シュピーツェが交代のためにテトグを起こし、場所を入れ替わった。テトグは夏樹に異常なしの報告と先の話を聞いて、そんなことよりふかしイモ食べたいと言い返して外へ注意を向けた。




 この世界にはすでに多くじゃがいもの仲間が流通している。原産地から持ち込まれたのが早かったのと、欧米ほど大陸間の距離が開いていないからだ。男爵やメークインに似たものもあるし、もっと原種に近いちょっと黒くて小さくて、ふかすだけじゃ到底おいしくないものもある。皮あるいは中が赤いのも、茶色いのも、紫もある。


 神話や伝説のなかに出てくる、いまだ到達できない竜の大陸を除いては、この惑星の大陸はひとつしかないに等しい。文明の届かない南を別にすれば、島嶼部とうしょぶや極地以外にはどこでも見られるといってもいい。


 地球と違って、科学の発達が偏るこの世界では、地図すら大陸の南方が存在せず、まして、世界地図、つまり惑星全体の図は存在しない。

 歴史も、国の起こりより古いものは長耳族やゴブリン種、獣人とさげすまれることのあるいくつかの種族しか残していない。そしてその記録すら、旧い伝説の大戦争直後でぱたりと途絶える。大戦争前のことなんて、誰も知ろうとは思わない。


 御者が夏樹に他にも質問しながら、ふと時計を見て、お休みだね、と声をかけると、


「次の休憩でぜったいおいしいふかしイモ食べよ?ね?ね?」


 交代のタリファを揺り起こしながらテトグが言った。もう二時間は経過していたことに驚きつつ、夏樹はタリファと入れ替わって眠った。




 夜明け前、旅人用の簡素な宿で一行は素朴なふかしイモをほおばった。ハユハユが学校の先生のように説明を始めた。


 アーシャ式だとじゃがいもに相当するイモは、今から五千年以上昔、記念暦紀元前二千~三千年ほど前にゴブリン種が南方の山岳地帯で見つけて持ち帰ったものを起源としている。

 魔法や科学のおかげで生活が楽に豊かになり、人口が急速に増えつつあったからな、他の作物よりたくさん収穫しやすいイモはありがたかっただろう。為政者たちは領地の農民に積極的にイモ作りを奨励した。

 品種改良も盛んで今知られているよりも多品種が存在していたことが分かっている。のろいや戦争による化学兵器で全滅したものが少なくないのだー。

 アーシャ式に探検隊や開拓団を送ってもっと南方の調査や開拓を進めるべきではないかという意見が多いのは、イモのほかにも南方に原種がある作物があることも大きいのだー。あ、せっかく料理人が親切にわし用に割ってくれたものを食うでないッ!!あー…。こほん、ともかく、品種が色々あることと、南方とはいえ山岳地帯のものだからな、寒さや乾燥に強いから、寒い北国や、北西の乾燥地帯なんかではとても重要なたべものであることを、あ、いもがない!ひどいぉみんなわしのぶんはどーしたんだぉ……わあああ……



 説明している間にふかしイモがなくなってしまい、話し方や声の調子が素の波動生物に戻っている。涙さえ浮かべるハユハユの前に、彼が乗るくらいの小さな皿が置かれた。そこには、作りたてで、割りやすいように切込みをいれ、バターを乗せたふかしイモがあった。


「はふん」


 一心不乱にイモを割っては食べ割っては食べるハユハユだが、おそらくだれも、ろくに話しを聞いていなかったと知ったら……。

ヽ(;ω;)ノ じゃがばたー食べたいと思いながら書いたくせにわしが食いっぱぐれるシーンにするとは許さぬ貴様も食い損ねろー



ハユハユ恐ろしい子……(いろいろ、ほにゅと違いすぎてセリフが書きにくいのによくしゃべるし)

それと、そんなことしなくても書いてから今日現在実際じゃがバター食べてません。


追記:アップ翌日になぜか夕食にじゃがバターが出現しました。

追記2:追加取材が必要になりましたのでもうしばらくお待ちください。

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