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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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東方式の宿はあいつに向いてない 1

 ファスタニアは、東~北東はルプシア諸王国、北~北西に世界第三位の面積を誇るアルネアメリア。西に農業国ルルンスト。南にも自国の倍以上の面積を持つ国に囲まれた小さな国である。


 周りの国とあまり変わらない様式の、石と赤茶けたレンガ作りの家々が並ぶ平凡な国。周りの国と比べれば小さくとも、世界的には十指に入る広さを有しているが、アルネアメリアのような都会や、過去の栄華を極めた都の遺跡はない。

 かといって豊かな自然を謳うほど森林や海洋資源に恵まれているわけでもない。つい先日まで、観光するような場所もないただの通過点でしかない、のんびりした国だった。




 六人と一体が入国したときも、宿がなさ過ぎて入国審査官が目の前であちこち通信端末でんわで連絡を取りまくってねじ込んでもらった。

 近隣諸国のような軍隊を持たないため駐屯地などもなく、宿が取れなければ路地で寝袋にこもるしかないような話を聞いていた六人は、宿が取れただけでもう安心してしまい、宿がどんなところなのか聞いても、たいして何も感じなかった。


 聞いたのは、宿が一年もたたない新しい建物で、東方の様式で建てられているということだ。地球の極東アジア的な、紅やくっきりした朱色のくねった瓦だとか、屋根に飾りがついているだとか、土や木で出来ているだとか話していたが六人は気に留めていなかった。


 しかし、同じような平屋かせいぜい二階建て程度の家々の並んでいる風景が続いた後に突然景色が途切れ、七、八階はあるド派手な紅い屋根をあちこち金で輝かせた建築物が見えた瞬間、心は臨戦態勢にならざるを得ないのであった。

 なんたって、だれも東方に縁がない。血を引いているダージュの母親は東方の話をしたことがない。夏樹から見ると、歴史ドラマの中国の皇帝の城のやぐらか五重塔のように見える。


 正面からでも、恐ろしいほどに敷地の広さが伝わる。入口の門は車が三列くらい並んで通れそうに広い。フリューシャが落ち着かない気分で、門にあるフロントに部屋について尋ねる。すると頼りなさそうな若い男が案内にあてがわれた。後をついていく間に見ると、建物の真ん中に巨大な部屋があって、取り囲むように客室があるのが分かった。


「これは、ダーシュエが統一される前、東方十国の時代の様式で、王の部屋を囲み、侵入者がどこを通っても必ず家臣が気づくようにという工夫なのですよ。ああ、もちろんここには王さまはいませんからね、お食事や宴会用の大部屋となっております。王の席を示す屏風もありますが、調度品を置いたり、団体様でしたらお客様のおひとりの席を用意させていただいたりと、様々な使用法がございます。

 やはり、珍しいでしょう? ご心配なく!ご説明させていただきますし、内容を記したパンフレットを各部屋に置かせていただいております。ごゆっくりご覧ください。」


 案内の男は明らかに緊張しており、慌てるような妙に早口でしゃべるので、六人と一体は切りのいいところまでしゃべり終わるまで質問するのはやめようと思うのであった。




 部屋は、十畳ほどの部屋が二つくっついている、料金がお高い部屋では三つぶんらしい。冒険者向けではなくあきらかに観光のための宿なのだろう。しかし、この国に目立った観光地はない。

 内装や家具も東方風だ。壁紙の地は美しい群青色で、紅と深い緑と金色で植物の葉や蔦を思わせる文様が、細かな紋様を並べるあちらの様式で描かれている。入ったほうには東方風の低い机に椅子が四脚、さらにこちらが六人だからか壁際に二つ同じ椅子が置かれていた。繋がった奥には低いベッドが六つ、壁に沿って二列に並べてあった。


 その、低い机の上にパンフレットが六セット置かれていた。適当に読みつつめくっていく。


 東方式には西方式とは異なる点が多くある。見た目を除いた最も大きな特徴は、食事や風呂が共通なところだ。

次回は明日15日に投下します

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