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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
62/171

砂漠はまだ渡れない 1

 六人と一体は、中央砂漠の手前の町まで来た。街道は砂漠を迂回して南北二つに分かれる。北のルートは途中でさらに別れ、大陸中央の高地や山岳地帯へ向かう道と、山に沿って砂漠の北側を通る道がある。

 星を読んで方角を定めることができ、なおかつ砂漠の地形や様々な動向を読む力があれば、点在するオアシスを利用しながら砂漠を通り抜けることもできるが、六人にはそういう知識も経験もない。装備もなかったし買いそろえる余裕はない。


 小川のほとりにいくつか池があって、そこに村があり、砂漠に入る人や街道を通る人によって巨大な市がつくられている。旅人はここで荷物を売り払ったり、処分したり、新しく見繕ったりする。

 夏樹のようにどこかで売り払ったのか、日本のどこかの学校の制服が売られていたりもする。あるいは、会社の名前刺繍入りの作業着を売っている人がいた。町で物々交換をして手に入れたとかで、持ち主はわからない。夏樹の知らない会社だ。中小企業というか町工場かなにかかもしれない。


 天候が悪くなるというので、防寒具代わりにそうした長袖の衣服を買い足して、六人は宿に戻った。


 どちらに行くかも決めていないから、買い出しもできない。数日の雨の間に決めるつもりだ。どうせ宿もいっぱいで、テントを張るにもいい場所から埋まっていく。天気が崩れる前に手前の町まで戻ってもいいかもしれない。

 半日くらいまでの範囲なら、すぐに引き返せばぎりぎり濡れずに済むくらいと音声端末ラジオの予報士がいうので、六人のほかにも諦めて西へ戻るか雲より早く東へ進むかしようとしている人が、結構な数居るようだ。



 乗鳥を荷物用に一頭と引く車だけ借りて、村のはずれのほうで六人は支度をしていた。ほかにも馬車や乗鳥の支度をしている人を見かける。砂漠を行くのか、砂漠用の長いマントをつけて作業している人もいる。

 砂漠を超えるには、案内人をつけるかつけないかにかかわらず、経験者が半数以上いたほうがいいと言われており、砂漠の民伝統の刺繍がほどこされたマントがぽつぽつと見える。


 出発した六人とすれ違う人がいた。真っ黒な生地に東方とも砂漠の民とも違う模様が刺繍してあるマントが風でなびくと、中の服装も黒や紺や濃紫なのが分かる。今はもう絵本や歴史書の中でしか見かけない、魔法使いの服装だ。真っ暗なぶん、腰に帯びた短剣の柄で光る宝石が目を引く。


「先生ではないか!」


 ハユハユがぴょいっと魔法使いの肩に飛び移った。魔法使いは肩を見もせずにハユハユを捕まえ、


「おう、元気でやっておるようだな!」


なでまわしてから六人に投げ返した。

次回はあす5日土曜日に投稿します。

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