古めかしい都市国家と猫獣人ワシェナの村 3
広い森の入り口で、皮紙を村長に渡した村人は、木の陰で泣いていた。かける言葉を持たず、しかし皆気持ちが少しは理解でき、悲しみが広がった。
村長と何人かが、そのまま鳥を一体だけだが四人に礼として渡した。そのまま去ろうとした四人を追いかける足音があった。
「一緒に、ついていきたいの。いいかな。食事なら、栽培や狩りから調理までできるし。少しなら、武器の扱いもわかるから、自分で身を守れるし、魔法もほんの少しならわかる。いろいろ、少しだけど、できること、やるから。」
テトグはそのまま続けた。家族の居場所を探すこともあるが、いつかあの国に入る機会が生まれたとき、そしてそれが、あの国に連れ去られた獣人たちを助けることになるなら、力の限り助けられるように、仲間を増やしたい。言い終わると、テトグは土下座のように手足を地面につけた。
「お願いします!」
三人はフリューシャを見た。彼は少し考えた後、言った。そんな大げさなことはともかく君自身がどうしたいのか、それを教えてほしい、と。テトグはいつのまにかにじんでいた涙をぬぐって、答えた。
「あたしは、旅に出たい。戻れないくらいなら、どこへでも行ってやりたいっておもっていたのに、ずっとあの森にいたの。
あの森から、出たんなら、あたしは、行く。たとえ今のこと忘れて、あの国のことも忘れる、そうなっても、あんたたちが旅をやめるまで、ついていくよ。」
フリューシャは綺麗な刺繍のはいった布を一枚テトグに渡した。
「ついてくるなら、まずは、女の子らしくしなきゃ、だよ。」
テトグは、布を胸に巻いて、髪留めでとめて、これでいいでしょ、と見せるようにくるっと回った。
「これなら、町でも大丈夫だねえ」
タリファが頷くと、夏樹がそっと手を差し出して、これからよろしくとあいさつした。五人は東へ向けて歩いていく。
次回は四日(木曜日)に投下します。