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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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面倒くさい貴族 2

 作ったお菓子を従者が見栄え良く盛り付けてくれ、何とか貴族の前に差し出すと、貴族はひとつにフォークとナイフを入れ一口食べると、残りを皿ごと突っ返した。五人組のうちの三人が怒りで走り出しそうになり傭兵二人とダージュが体格が勝るのを生かして羽交い絞めにして対処した。


 残った菓子は皆で分け合った。残ったお茶もフリューシャがうまく分けて、皆で味わった。貴族の食いさしは下げてきた従者が食べた。


 後片付けを済ます寸前に貴族が号令をかけたので、皆少し荷物が膨らんだまま鳥に乗った。ちなみに、乗鳥に一人で乗れない夏樹は、五人組の何人かとともに、貴族と同席して、アーシェの話をさせられている。


「それでは、国の境の城壁は存在しないところがあるのか。」


「はい。僕のいた国は島国だからもちろん国境は海で、壁はないですよ。よそでも、国境全てを壁で覆っているところは、ありません。

 昔は、半分とか、戦っている国との間だけとか、壁があった国もあったんですが、戦争が終わったら平和の証として壁を壊したり、違うことに使ったりとかで。」


「また戦争になったら、また作らなくてはいけないではないか!非生産的なのだなアーシェは。」


「ええっと、戦争したら戦っている以外の国々から孤立してしまって、貿易とかできなくなってしまうから、戦わないようにしているんです。」


「訳が分からん。」




 貴族は次の町で、いきなり予定にない狩りがしたいと言い出した。ウサギなどの小動物を狩って、毛皮を干して戦利品として持ち帰るだけだ。肉は食べることもあるが、この貴族は何か考えがあるらしく、肉は肉だけ別の入れ物でとっておくようにと従者に命じた。

 従者に言われて、傭兵の一人と、五人組の中の弓使いとフリューシャが一緒に狩りをすることになった。貴族はへたくそだったが、少しでもそれが行動に出ると怒りだす。そのため、皆は何でもないことでおだてたり加減しなくてはならない。


 他にも予定外にあれがほしい、あれはないか?と文句や要望を吐き出すので、予定にあった町の手前の関所付近で真っ暗になってしまい、関所まで引き返して貴族だけふかふかの布団で眠った。従者すら馬車の席で寝た。皆は、そこの関所にある、軍隊の陣地用にならしたテント用地で野宿であった。

 食事用にあのウサギ肉を渡されたが持ち歩いていて傷んでいて、野宿組は全員一致で、ほんの一部しか手を付けずに焼却した。




 翌朝、まだ貴族が眠っているし、従者だけしか貴族のそばにいない。皆は言いたい放題しながら朝食をとった。このぶんだときっと、今日一日全部つぶされてしまうだろう。テントのそばにいる従者が申し訳なさそうに、予定外の狩りの分などは自分のお金から少し足しておくから許してくれと言い出した。

 夏樹や五人組が、車中で話したことなどを愚痴っている時だった。傭兵二人が、従者に耳打ちしてから、いくつか質問した。


「俺たちは昼に依頼を下りる。俺たちのことを聞かれたら、別の依頼と重なってこれ以上時間をかけられなくなったと伝えてくれ。

 もちろん報酬はいらない。もし昨日の分までもらえるとかならお前たちで分けていい。」


 従者が質問に答えると、傭兵二人はそう言って、荷物の中からいくつか、消耗品などを他の人に分け与えた。従者が貴族の身支度のために関所に消えていくと、皆は支度を整えて停めてある鳥の綱を外して、出発できる体制を整えた。


 さあ皆の者今日も元気に行こうぞ、と貴族はのんびりと馬車に乗り込んだ。もちろん従者の手を借りてだ。

 五人組はほぼ顔や動作でうんざりしているのが丸わかりで、夏樹は疲れ切って怒りもわかなくなっている。ダージュとタリファははっきり態度を出さずに済んでいる。傭兵二人は完全に心の内を隠しきっているからわからないが、皆嫌な気分だということは少なくとも互いと従者には痛いほどに感じるのであった。


 残りは、予定通りなら半日、昨日の割合なら夕方過ぎと言ったところだ。依頼達成まで我慢したら、皆で町で何かうまいものを食べよう。我慢とは言わないがそんな風に取れる話を五人組のリーダーがふった。

 従者が、目的地の先の町においしいお店があって、旅人には人気ですよと話を膨らまし、雰囲気だけでも一見盛り上がって見えるようにした。


 昼食を町で摂って約束通り傭兵二人と別れた後、最終目的地である次の町を残すのみとなった。タリファとダージュには、従者が何となく何かを我慢していて辛そうに見えた。

次回は明日28日金曜日に投下します。

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