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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
56/171

面倒くさい貴族 1

 フリューシャたちが四人で旅をしていた頃のことだ。彼らは港からあえて都会へ出ず、海沿いを辿っていった。お金がなくなりそうだったから先に冒険者や旅人らしい仕事を探そうということになったのだ。


 いくつめかの町で、お忍び旅行中の貴族の護衛の依頼を受けることができた。乗鳥も貸してくれて、それで馬車をゆっくり追いかけるだけなのに、従者が提示した額は、他に依頼を受けた傭兵によると相場の五倍以上だという。

 旅を始めたばかりなら、普通はやたら相場から離れた依頼は受けないのがいい。安すぎる仕事ばかり選ぶと安く買いたたかれるようになってしまうし、今回のようなやたら高い依頼は、難易度が高いか、何か面倒な事情があるか、陰でこそこそやらなきゃいけない悪いことと関係しているか、そのうちの複数に当てはまるものが多い。

 もしくは、相場やお金の使い方が分からない頭のよくない依頼主か。




 町から海沿いの小さな街道を進み、街道が交わるヤイカニーアという少し大きな町で方向転換し一日か、何かあっても二日かかって内陸へ進むという予定だ。

 集団を雇わないと倒せないような魔物が出るところではないし、開けていて大きな野生動物が出るようなところでもない。少し内陸に入ると蛇が出るかもしれないが、馬車なら留まっている間以外心配することはないし、門番の詰め所の大きいところに貴族の宿泊用の設備が無償で使える。大きな国のそばだから専用の部隊が巡回していて盗賊なんか出ない。


 雇われたのは四人のほかに先の傭兵とその相棒、そして冒険者だと名乗る五人組だった。それこそ盗賊にでも合わない限り必要ないだろうと言える人数だった。


 昔は、長い間世界は冒険者だらけだった。

 RPGの勇者みたいなものだ。傭兵にならない、つまりどこかの国の軍隊に雇われず、自分たちだけで世界を回り、あちこちに残った古い遺跡を踏破して戦利品を売りさばいたり、数多く生き残るおぞましい魔物を退治するのが仕事であり、旅人のほとんどが冒険者だった。

 まとめるための協会があり、盗賊まがいのことをすれば他の冒険者たちに狙われることになるし、何かあれば依頼書として協会に提出すれば、領主に命がけで申し出るより早く問題を解決できたのだった。


 そういう時代ならともかく、今、『冒険者』と名乗るのは、遺跡荒らしや調査などであちこちを渡り歩くトレジャーハンター的な物好きだけだ。

 アーシェと違い、考古学も遅れているシェーリーヤでは、地球で例えるならローマやギリシャ時代からしか記録が残っていなくて古代エジプトなどが未知の国になっているようなものだ。


 公的な記録の始まりは、とある双子の兄弟が、争っていた集落と近辺の都市国家をまとめ、ルプシアという国を作ったことである。今使われている暦で紀元前千年くらいだと言われている。

 『冒険者』が探る遺跡は、場所や時代に多少ばらつきはあるが、長耳族の記録ですらおぼろげな、一万年以上昔の大戦争で破壊されたものだと言われている。


 多口種四人とドワーフ族一人という五人組は、既にこのあたりの遺跡を探査したことがあるらしく、その様子を自慢げに、間違いなく脚色して、暇を持て余した貴族に語りかけ、それなりに受けをとっていた。時折四人にも話しかけてくる。

 傭兵二人は砂漠の民らしい肌の色で体もたくましく、黙々と乗鳥を操っている。無口なだけでなく、話しかけてくるなというオーラをまとっているようにも感じる。やはり依頼に何かあると考えて慎重になっているのだろう。経験豊富そうで、フリューシャたちは何かあったら二人についていこう、と考えるのであった。




 最初に予定した休憩地点の町で、貴族は午後のお茶を摂りたいからお茶と甘味を入手してこいとフリューシャたちに命じた。その町のお茶は質がよくなく、フリューシャの持ち物から供出して誤魔化した。甘味も、簡単なパンに少し具をのせただけものしかない。仕方がないので、店を見つけた五人組の一人とダージュ、傭兵の一人で甘い芋を入手し、モンブランのクリームのような餡を作ってパンにのせた。


 従者が、店にはあなたの口に合いそうなものがなかったので準備させていると伝え、先にフリューシャがお茶と持っていたお菓子を持って行って時間を稼いだ。

次回は明日27日木曜日に投下します。

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