超能力は魔法の代わりになる? 1
まだ朝早く、あちこちで朝食の香りが漂う時間、目的地より多少手前の村のひとつに着いた六人と一体は、休憩と軽い食事をとっていた。
小さな村で、真ん中に広場があり、取り囲むように商店や家が立ち並んでおり、囲むように、申し訳程度の柵がめぐらせてある。
食べ終わって、次の行程について一行が話していると、別の旅人らしき三人組が広場の中央に小さな踏み台と折り畳みの机を用意して、大声で呼び込みを始めた。
「魔法がなくても人間には素晴らしい潜在能力が存在するのです!」
「さあ、みなさんもこの新しい、未知の力を引き出してみませんか?」
「魔法と違って、訓練すれば誰もがつかえるんですよ!」
三人組は、三〇代くらいの男と女、それと十になるかならないかくらいの女の子に見えた。男も女も痩せていて、とても、三人だけで旅をしているように見えない。呼び込みのとおり、ものすごい能力や技を持っているのだろうか。
少しずつ村人が集まり、フリューシャとシュピーツェと夏樹も見に行くことにした。タリファとダージュは胡散臭そうだと言い、テトグとハユハユは目的地到着までの食事の計画に夢中だった。
人が集まったところで、男はぱん、ぱん、と二回手を鳴らし、注目を促した。
「お集りの皆様、ありがとうございます。」
観客を見渡して男が頭を下げると、続いて女と子供も頭を下げた。
見世物は、カードの数字あてから始まった。この世界のカードは、マーク(スート)が五つで数字は十二までのものと十五までのものがある。十五までのものはタロットのような占いに使う事が多く、少し上等な素材を使っていたり絵を入れたりするのでやや高級品だ。
男が懐から新品のカードを取り出して、女に渡した。
女は、見ている村人の一人に、開いていたり細工がされてないか確認するように言った。大丈夫だと村人が返そうとすると、それを押しとどめ、別の村人に長い布を渡して、男の目をふさぐように言った。
そして、カードを持った村人に、開封して好きなように混ぜて、自分だけに見えるように一枚選んで持っていてください、と言った。
村人はカードを一枚引いて素早く体に寄せて見えないようにしてから、そーっと伺うように確認した。女の子が村人にいいですかと確認して、できました、と男のほうに声をかけた。
男は目隠しをしたまま、女に手を取ってもらって村人の前に立った。そして両手をかざし、なでるようにおでこに沿って動かした。
「数字とマークをしっかり思い浮かべてください。」
男が言うと、村人は目をつむって、念じるように固く手を組んで祈るようなしぐさをした。何度か手を行き来させたあと、男は答えた。
「カードは、盃の14です。確認してください。」
男は言い終わると目隠しを解いた。村人は体を小刻みにふるわせて、あっていますと告げた。
「あれだけなら、魔法でも比較的楽にできるぞ」
聴衆に混じらず喫茶の席で見ているダージュが言うが、見世物の男は知ってか知らずか、今度はカードを三枚引いて、同じようにカードを思い浮かべるように、別の村人を傍らに招いた。結果は成功だ。星の4、盃の10、月の9。
「あれは魔法だと確かに多少腕がいるな……」
傍で見ているシュピーツェはうなった。魔法で思い浮かべている複数のカードを当てようとすると、相手が思い浮かべる間隔が短いと、短かったカードだけわからなかったり、前後のカードのイメージに引っ張られて違う数字やマークになってしまう。
はじめは訳が分からない風に見ていた村人が少しずつ、何か素晴らしい見世物を見たように盛り上がっていく。すごい、どうしてといった歓声も上がる。シュピーツェは腕を組んで考え出すし、計画し終わったハユハユがぽーんとテトグに投げられて、シュピーツェの頭の上を目指して飛んでいき、ぴたっとくっついた。
そして、投げられているとき、ハユハユは仕掛けのヒントになりそうなものを見てしまった。
次回は明日20日に投下します。