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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
48/171

大草原の大きな家 2

 荷物を玄関先へいったん置いた六人はまず掃除が面倒だから使う部屋を少なく済まそうと考え、一部屋にまず荷物を置いた。それから台所にある冷蔵庫(氷を上部に入れて冷やす)に生鮮品や開栓済みの飲み物をつっこんだ。


 持ち主の家で昼を食べたばかりで、午後のお茶の時間にはまだ早いしそんな気分ではないが、六人は居間のひとつに集まった。テーブルに北西地方地図と、通過許可申請の際にもらったツァーレンのパンフレットを広げた。

 パンフレットは上下に分かれている。上はツァーレン語で、下は標準語になっている『統制語』も書かれているが、非常に読みづらかった。固い言い回しばかりで、わかりにくいのだ。しかも、ところどころ、相当する単語がないのか、ツァーレン語の単語を綴りそのままか読み方に合わせ、文字だけ変えて書いてあったりする。


・国内の移動はこちらで用意した自動車のみ

・食事と排泄のための休憩施設以外の降車はできない

・写真やスケッチ、録音、魔法や魔法具使用などの、国内に関する情報を外部に漏らすもしくは外部から情報を持ち込むことは禁止とする

・アーシャ式の記録媒体、通信媒体の使用を禁止する

・荷物に波動生物が混入した場合や、混入の可能性がある場合、その荷物は国外に出るまで密閉容器に入れられる

・違反が発覚した場合、即座に移動許可を取り消し、内容によって処分内容が決められ、留置とする。




 荷物はすべて国境担当の兵士が調べるから、夏樹は確実に自分の荷物を移動中にあけることはできないだろう。電池が切れているスマートフォンがある。

 適応する電池などはまだ存在しないが、電気が普及し始めた一部の場所には、アーシャ式のものでも使える充電コードが作られているから、充電されていないという理由で見逃してくれることはないだろう。引っかかりそうなものはすべて申請して、密閉容器に入れられるしかない。


「わしも夏樹のカバンに入っておればよいだろうな。そうすれば、密閉は夏樹のカバンで済ませられるだろう?

 それを読む限り、ほかにかかりそうなのは、細かい事項を読む限りフリューシャの茶葉と、テトグのお守りくらいか。」


 細かいツァーレン文字で書かれたリストを手でたどるハユハユに、皆驚いた。そもそも国境付近の住人や商人をのぞけば、普通に生活していてあちらの言葉に接する機会はない。


「ハユハユはツァーレンの言葉が分かるの?」

「多少な。ものの名前とか、地名や人名がいくつかと、独特の言い回しだな。」


 商人や近隣に住む人以外でツァーレン語が分かる人は貴重だ。近隣の人でも、会話はできても読み書きまではできないのがほとんどだ。昔の随筆に、物好きの極みの一つとして挙げられているくらいなのだ。


「お守りと茶葉も、夏樹の荷物に入れるしかないな。」

「地図にない町に出くわさない限りは、抜けてから町まで三回は野宿だから、なるべく軽くしておかないと。」

「風よけの上着はこのあたりでもいいのが買えるといいんだけど。薄くて軽い奴。」

「アーシャの繊維みたいにならないもんかねえ。」


 話し合って買い出しのメモを作り、各人の部屋を決めた後、六人と一体は買い出しに出かけた。この家の近所の人と出会ったので、溶け込めるようにするには気を付けたほうがいいことや、店などを教えてもらうために同行してもらった。




 夜、食事の当番を決めるために夏樹があみだくじを教え、適当に何日ぶんか当番を決めた。初回はフリューシャとテトグだった。

 メインとなる野菜と肉を炒めたものは胡椒が効きすぎている。破れてるし美味しそうじゃない焦げが少しついたオムレツは甘い。青りんごは不揃いに切れている。少しもっちりしたパンは大量に冷凍してあったものの最後で、ちょっと飽き気味だ。

 分かって食べているし、胡椒辛いのはパンやお茶やリンゴを食べればいい。これからひと月、やっていければいいのだ。

次回は明日16日(日曜日)に投下します。

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