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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
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暇すぎてどうにかなりそう 2 バックギャモンのようなもの

 四人は隣のテーブルの人に断って、遊ぶところを見せてもらった。大きな四角いボードのなかは仕切ってあって、二辺に小さなマスがたくさん並んている。マスのいくつかには白や黒の石が置かれている。マスが並んでいない辺に小さな四角が書かれている。片方が白でもう片方が黒だ。




 石を置いた二人は、立方体のサイコロをそれぞれ振って、大きい目が出たほうが先攻だといった。交互にサイコロを二つ振り、その数だけ駒を進めるすごろくだ。左→下→右に進んでいき、先に全ての石を右端の大きなマスに入れると勝ちだ。


 よく知られたすごろくと違うのは、駒が複数あること。そしてそれによる特別なルールだ。二つ以上の石を先に同じマスに止まらせると、そのマスは陣地となり、相手のコマはそこに止まれなくなる。うまくふさぐと、相手は進めなくなる。相手の駒がひとつあるところに、二つの駒を止めると、置いてあった相手のコマを追い出すことができる。追い出されると、盤面に書かれた小さな四角に置かれる。その四角に駒があるときは、ほかの駒を動かすことはできない。


 アーシェ風に言うと変則バックギャモンとでも呼べばよいのだろうか。いくら日本人でも盤双六と言われて分かる人は少ないだろうし、夏樹は普通の双六(絵双六という)もあまり遊んだことがない。タリファはアーシェ人が遊んでいるのを何度か目にしていて、一度だけ盤を触ったことがある。


「なんだ、簡単じゃん。どかされないように上手く動かしてあがればいいんでしょ?」


 夏樹はじっと二人の様子を見て、負けたほうの人に対戦を申し込んだ。二人とも、にこにこしながら夏樹を座らせ、最初のコマの位置を教えた。


 マスは二十四ある。スタート(相手のゴール)に二つ、五番目と七番目に三つ、一二番目に二つ駒を置く。順番を決めるためにサイコロをひとつ振って数字が大きいほうが先攻となる。上がるときは、六マス以内からしか上がれないことと、数字がぴったりの駒があったらそれを優先してあげなくてはいけない以外、数字がマスの数以上なら上がれる。折り返したりしなくていい。




 数分後、夏樹はサイコロを盤の外に投げそうになっていた。相手の駒が半分上がっても、夏樹のコマはいくつか六つ以内に入れただけで一つも上がっていない状態だ。結局、初戦は相手が十個すべての駒をあげるあいだに、夏樹は二つしかあがらなかった。


「もう一回!もう一回いいですか?!」


 夏樹は退屈を忘れて食い入るように遊んでいる。それを横目で見ながら、子供だなあ、とダージュがこぼした。こんな簡単なのさっさと慣れて一回くらい勝てよな。そんなつぶやきを、周りは確実に聞き取っていた。


 五連敗を重ねた夏樹がじゃあやって見せてよ、と皮肉やら嫌味やらたっぷりに言うので、ダージュは「見てろよ」と言って夏樹と席を変わった。


 そしてやっぱり五連敗である。


「出目が悪い!だって俺合計五とか六とかばっかりじゃん!」


 ダージュが言い訳をすると、タリファが夏樹とダージュの頬をつねり、対戦相手になってくれた人に礼とお詫びを言った。


「いえいえ、僕らも若い旅人さんと遊べて楽しかったですよ。」

「アーシェの『ばっくぎゃもん』も遊んでみたいですね!誰か持ってるといいなあ」

「地面に盤面を書けばいいんじゃない?」


 二人が期待するように夏樹を見る。


「ごめんなさい。僕、その『バックギャモン』が何かわからないんです。」


 頭を下げる夏樹に、二人の知らない旅人たちは頭を撫でて、それじゃあ仕方ないよね、と残念そうだった。


 そのあと、夏樹はさっそく盤面や初期配置などを教えてもらい、安く売られていた木のまな板に盤面を掘って自作のゲーム盤を作った。飽きたのと盤がかさばるのを理由に手放すまで、そのゲーム盤はしばらく酷使されることになるのであった。

 次回は14日(金曜日)に投稿します。


 (・ω・)バックギャモンについては、朝宮はブラウザゲーしか遊んでいなくて、大きな盤で遊んでみたくてわざわざ卓上ゲームイベントに遠征して遊んできました。自作盤面はめっちゃちいさいのでいつか持ち歩いてやろうと心に決めているのです。

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