表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
45/171

暇すぎてどうにかなりそう 1 ゲーマーから無理にゲームを取り上げてはいけない

 まだ四人だった頃である。フリューシャたちは集落を出発して西へ向かい、船で海峡を渡るために南方の港町を目指した。海峡を渡るための船が停泊する町のひとつ・ミルルアに着いたところだった。この世界の港にある船は、五~六人以下で運用する漁師の小舟か、海上で生活する『海のエルフ』と呼ばれる長耳族が暮らすための大型の帆船しかないに等しい。


 別の港町まで船に乗せてもらうためには、海のエルフの人々と交渉して乗せてもらうか、彼らの船を譲り受けたり借りたりして、海運をしている業者に料金を払うしかない。

 たとえば、人数分だけ漁師を探して一人ずつ乗るのは怖すぎるし、漁師もやりたくないに決まっている。日帰りできない距離や行程の航海は想定外のつくりになっているからだ。


 海のエルフには身内以外を船に載せたくないものが多い。荷物だけなら、搬入や掃除を手伝えば格安で次の港へ届けてくれるが、自分たちの行き先を曲げてはくれないので、行き先を確認しないとまったく別の港に荷物が届く。


 海運業者に頼むのも問題はある。まず、定期便などの人間を専門に運ぶ業者は安全で快適さを謳っているぶん、料金が高い。そして、ぼったくり業者の割合が高い。快適さやサービスを求めて高額を求めるとぼったくりの確率が上がり、ぼったくりを恐れて格安運賃を選択すると、荷物よりマシという程度の悲惨な環境が待ち受けている。

 チケットの相場はその時の賑わいや、運搬されているもの、客層、天候などで大きく変わる。町や港で聞き込みをしたり、掲示板をみたりする必要があり、見極めが難しいのだ。


 大陸の首都に最も近い最大の港町サンタニーアまでの行程は、天候が安定していれば五~七日間である。だいたい途中の港に寄港しながらなので、さらに五日くらいはかかることがほとんどだ。半月ちかく過ごすのだから、船の見極めは重要である。


「僕、船乗ったことないんだ……。」


 深刻な顔で、停泊する帆船を見つめるフリューシャを見て、タリファが噴き出した。森の奥の集落とはいえ、九十九年も生きているのに森から出たことがないのか、と思わず口にした彼女に、哀愁を感じさせる声音でダージュが愚痴る。


「そうだよ。俺たち、リャワまで出たのすらまだ数回なんだ。まして、ここまで来るのが初めてだよ。東側はもっと何倍も遠いし。」


 様子を見ながら夏樹が雰囲気を明るくしようと、


「僕なんか、海の近くに住んだことがあるのに、海を実際に見たことなかったよー」


おどけて話してみるが、三人とも反応しなかった。とにかく掲示板を見るのと、話を聞かないとね、と四人はあらかじめ決めてあった宿への道すがら、港や船の相場について出会った人に尋ねて歩いた。




 何とかそこそこの船を見つけ、乗船券を買うことができた四人だったが、翌日掲示板を見ると、修理が必要な個所が見つかって出港が最低三日は遅れるとあった。ただでさえ何日も後の便しか取れなかったのに、何したらいいんだよ!と夏樹は電池が切れかけの音楽プレイヤーを止めて、幼児のかんしゃくのようにその場に座り込んでしまった。


 宿に戻っても、荷物はきっちりまとまってるし、積みこむのは前の便として出ていった該当の船が港へ戻ってから。乗船や出入国など、必要な手続きはすべて済んでいる。船を待つ間の食費も切り詰めているから、数少ない娯楽施設に遊びに行くなんて余裕はないし、あってもタリファが許してくれると思えない。

 数日暇すぎて寝すぎたためもう横になって時間をつぶしたくない。かなり前に暇つぶしとして夏樹がしりとりを持ちかけたが、文化が違い過ぎて、出てきたものを説明するのが面倒くさかった。そのため一度やったあとは封印扱いである。


「ああ!!もう!!ヒマ!!」


 夏樹はこれまたかんしゃくのように手足をばたつかせた。これまでならタリファかダージュが怒りだしそうだが、暇なのは三人同じだった。フリューシャは暇だと口にするが、その割にぼーっとしていて何かしたいのか平気なのかすらよくわからない。


 夏樹は、地球にいたときは、つまり数か月前までは、暇があると親戚や家族からもらったお古のゲーム機で遊んでばかりいたし、こちらに来てからも、スマートフォンのアプリでこれまた数世代前に当たる二十世紀のゲームの移植版で遊んでいた。ちなみに三人はスマホに夢中になる夏樹を見ていて、これは悪魔の所業だ!と感じている。スマホの発明者はどう思うだろう。


「なんか、トランプとかリバーシとかでいいから、ゲーム、ない?」


 夏樹に言われて、三人はトランプもリバーシも知らないので夏樹の説明を聞きながらしばらくうなった。彼らは夏樹の横で転がったり、ばたついてみたりしてみたがなかなかアイデアが浮かばない。


 諦めて、宿代に含まれる軽食を食べに行った席。隣のテーブルで、何か丸い碁石のようなものを並べたり動かしている人がいた。


「あれ、何?」

次回は明日12日(水曜日)に投下します。

なぜか9月末~先週あたりはやたらと書き進められました。反動なのか、連休中予定が空いてたのに月曜の途中までぱたっと書けなくなっていました。月曜日にもそこそこかけたので今のペースで書いていきたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ