仲良くなる前は 2
僕とダージュは幼馴染で、夏樹やタリファは出会って日が浅い。でも、ダージュが僕とまだ仲良くない小さなころでも、僕のことをあいつとかあんな奴なんて言い方しなかったはず。
「ねえ、何か嫌なことした? 言った? 機嫌悪い? それなら一晩休んでから行こうか。僕もちょっと休みたいし。」
僕が心配してダージュに話しかけると、彼は一層怖い顔になって、僕の腕をたたいた。
「なんであいつをひいきすんの?リャワの一件以来、あいつを甘やかすなって言ったろ?」
結構強くたたかれて僕は今度こそ泣いた。ひいきなんてしてるつもりない。僕が泣き出したのでタリファが大きくため息をつき、夏樹が椅子から飛び上がるように走ってきてダージュに謝ってくれた。なにも反応しないダージュに、夏樹が怒った。
「友達なんだろ!どうしてフリューシャに当たるんだよ。そんなに僕が気に入らないなら全部僕に言えよ。」
そういえばそうだ。ダージュは夏樹に何かあると、僕と二人の時か、一人の時にぶちぶちとつぶやくんだ。なぜだろう。
手が出かかった二人を止めようとして二人の手にたたかれて、僕たちは三人もみくちゃになった。お互いたたいたり引っかいたり叫んだりした。
どれくらい経ったかわからなかったけど、予定より何時間も遅れて僕たちは町を歩いて出た。喧嘩に驚いて乗鳥が帰ってしまったからだ。タリファがはじめ綱を持ってくれていたけど、さすがに二頭とも暴れだすと引いていたら自分の身が危ない。もちろん手放していた。
僕たちはずっと口を利かなかった。タリファも、僕に時々必要なことを聞く以外黙っていた。歩いている間も、休憩の間も、野宿の場所を探すときも、二言くらい単語でしゃべって、あとは無言だった。
夜、たき火の跡を見つけて野宿の支度をしているとき、タリファが僕たちを呼びつけた。まず僕に、次に夏樹に、最後にダージュに言った。
「フリューシャ、あんたの旅なんだ。何かあったら、あんたが自分で決めたことを押し通すくらいでなくちゃあダメだね。」
「ナツキ、あんたは自分の手足でできることをもっと知ったほうがいい。これから、どんどん覚えていきなさいね。知らないこと、知らなきゃいけないことは、どんどんあたしたちに聞きなさい。」
「ダージュ。ナツキが子供で、何にも知らなくて、できなくて、むかつくのはあたしも同じさ。だけど、教えてあげられないまでも、知っててほしい、知ってほしい、やってほしい、って、本人に向かって言わなきゃいつまでたっても、わかんないままだよ。」
タリファが僕たちを解散させてから、船で北の港に着くまでの間、僕たちは言いたいことを言い合って、ひたすら喧嘩したり教えたり教えられたりした。そのおかげで、僕たちはなんとか旅を続けている。
今では、ダージュも夏樹を友達と呼べるようになった。
旅の始まりで教えてもらったとき、僕と旅をする仲間は六人いると言われた。あとの三人とも、仲良くなれるといいな。
次回は11日(火曜日)に投下する予定です。