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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
42/171

恐怖!代金をくれる宿 6

 昼食のために、疲れ切った心と体をなんとか操って、夏樹とテトグは荷物の中から凍ったパンを取り出した。機会があると買いだめては魔法で凍らせておくのだ。


 四角い型入れのも、細長いバゲットも、スライスして上に野菜や卵、ハムやソーセージなど、具を乗せて焼いていく。休憩している周りの者たちも、その様子をじっと見ている。首が追いかけるものもいるし、体を動かさず目線だけ追っているものもいた。さすがに後者は、二人からみるとなんというか、怖い。


 焼いている間、二人はほぼ同時に、はぁ、と大きくため息をついた。ダージュやタリファはともかく、普段はあまり口出ししないハユハユがキレたことも、平気だからって台所にいるアレでフリューシャが遊びだしたことも、かなり精神にダメージを与えたのであった。

 猫はああいう虫も平気でおもちゃにするが、猫人はああいう大きさの虫は無害だろうと嫌うので、実は自分もキレそうだったとテトグが言うと、夏樹は、意外ときれい好きだねーと返事をして、彼女にほっぺたをつねられた。




 食事を済ませ、後片付けをすると、いよいよ、冷蔵庫の再設置と台所のだんぼーるの攻略だ。すっかり中のあれやそれを除去し、きれいに拭いて乾かした冷蔵庫を置きなおし、夕食用の野菜などをしまっていく。だんぼーるはごみの麻袋の近くへ運び、一つずつ開けて、どうするか話し合い、捨てるか棚に収めていくことになる。汚れていたものは洗って乾かしてからだ。空になっただんぼーるは適当な大きさにしてかまどで燃やす。


 夕食はユイニン一家が作るが、見張り&指導のためにシュピーツェとフリューシャが手伝いをすることにした。人によって洗った食器を水切りかごに入れずに適当に放置するなど、やはり衛生面がまずそうなので、そのあたりもシュピーツェが指導する。五分おきくらいにハユハユが見に来るので気を抜けない。その間に四人とユイニン兄弟で風呂の掃除だ。




 結局、到着から三日間、泊まる部屋以外もあちこち掃除してしまった一行は、四日目以降の残りはのんびりしようと思い、もうこれ以上は手を出さないと宣言しようと心に決めて四日目の朝食の席に着いた。

 しかし、言い出す前に、ユイニンの両親が六人と一体に向かって土下座した。そして、分厚い封筒を差し出す。特別な紙で出来たお札がぎっしり入っている。数えてみると、昨日までに聞いていた額の三倍はある。


「あとほんの少しでいいんです。あと一部屋だけでも教えてくださったら、さらに同じだけ払いますから!」


 今の額でも、次の町で八段のホテルがあっても泊まれる額だ。それが、倍になる。夏樹とタリファは一瞬悩んだが、タリファは首を振って、同時にハユハユとダージュとテトグが叫んだ。


「できるか!!!」


 一家総出の土下座をよそに、礼金をしまい込んで外へ逃げ出した六人と一体は、昼も帰らず、例の微妙な麺屋で疲れ切った体に麺を押し込んでいく。その姿を見て、店員も客も、温かいねぎらいの言葉をかけ、彼らの話を聞き、涙するのであった。

次回は8~10日(土日月)の間に投稿します。予定が入らなければ8日に投稿できると思います。

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