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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
36/171

番外・幻の果実『海エルフの宝石』

 海エルフの宝石とは、大陸南部東岸沖もにゅの島で産出する果実である。


 深い紅色が特徴の一つである。売られている大きさはリンゴやナシ、大きめの柑橘などと同様で手のひらに乗る程度の大きさである。それ以上に成長すると果肉にすが入ったり、表面の紅色が茶色がかっていき味が落ち始める。逆に小さくてもしっかりと深く紅色に色づいていれば食用に適している。


 未成熟の実ははじめ緑色をしており少しずつ赤くなる。中間の実も大きく分けると茶色い色に見えるが、緑と赤が混ざっている色と考えるとわかりやすい。緑や青みの入った茶である。対して熟しすぎた実の茶色は赤みや焦げ色が強い色である。


 果肉はリンゴやナシの果肉のような柔らかい黄色。食感は黄桃などに近い。他の果実のように様々な利用法があるが、飾り切りや等分割りで表皮の色を生かす、ここ一年の流行のようにわざと匙ですくって取り出して盛り付けることで透明感やみずみずしさを強調するなどの利用法が多い。販売時期は春先から秋口のうちの半月ほど。




 最も特徴的なのは、輸送に不向きすぎる点である。この果実を島外に持ち出した海のエルフと呼ばれる長耳族の人々は、傷まない輸送方法を確立し大陸にもたらすために、百年近くの年月を要した。


 成熟途中のとある段階の実を徐々に凍らせ、かつ、以降は一定の温度を保ち続けなくてはならず、彼らは専用の魔法を生み出して現在もそれによって島外への輸出を可能としている。少しでも凍らすのにかける時間が早ければ凍傷のように焼けてしまい、遅ければ傷んでしまう。収穫が早すぎると食感が落ち、遅すぎれば加工中に傷んでしまう。


 この『海エルフの宝石』を維持するための魔法は、魔法禁止の時代でさえ、生活用を除いてはほぼ唯一の例外として迫害を免れた魔法の一つである。最初に輸入が始まって千年近い時がたちアーシャの技術を取り入れるようになった現在でさえ、機械文明的な方法を確立するに至っていない。未成熟のものを冷凍して持ち込む方法が近年開発され、多少加工時間(冷凍状態から出してから鮮度を保つ時間)に余裕ができたが、やはり味が落ちるので価値が下がるのは否めない。




 輸送に対する不向きさと、不定期な収穫によって、まさに稀な宝石のようであり、もたらされた当初から王への献上品やごくわずかな貴族のためのものとして扱われた期間が長かった。

 そのため、実在を疑われるという意味で幻の果実と言われてきたのであるが、九年前の爆発的な輸入量の際に多少は一般の菓子店で加工されたものが見られたため、さすがに存在を疑われることはなくなってきた。


 前回五年前の輸入も通常の二割増しほどの大量であったことと、献上された王の意向で有名菓子店や製菓職人などがこぞって商品を発表し、『パティシエを生やす果実』などという新たな名が生まれつつある。今回のシーズンも期待しよう。


~~~~~


 六人のうち、『命の木の実(読み:ドルンプ・ズ・ネイユ)』で揃って購入した以外に口にしたことのある人はいない(し、ハユハユにもない)が、クリスティンは数回食べたことがあり、味が落ちていない状態と味が落ちた状態どちらも食していて区別がつく程度になじみがあるものであったりします。

次回は29日(木曜日)に投下します。

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