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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
34/171

吸血鬼なんているわけがない 9

 一時間近く、クリスタの暴走した魔力の波動は、周りの者を茨で傷つけ縛り続けました。もしも彼女がまだ若々しく力にあふれていた頃だったら、憎しみが膨らむのに従い茨や棘がどんどん強大になって、盗賊の下っ端一人や二人、いやそれ以上の者たちを、失血死させていたかもしれません。




 クリスタが落ち着き始めたときには、彼女本人でさえ、茨で動けない状態なのでした。巻き込まれなかったのは小さな波動生物であるハユハユと、離れていてすぐに逃げていった盗賊三人だけでした。三人はハユハユの体当たりを鳩尾や足や頭に受けて倒れ、やっとのことで茨から抜け出たばかりのフリューシャによって縛られました。


 抜け出したフリューシャとシュピーツェに、盗賊団のまとめ役が声をかけ、持っていた麻痺の矢を使わせました。茨や、まとめ役含む盗賊たちに打ち込んで、排除したり縛り上げていきます。茨がほどけると、盗賊団ももう敵意はなく、それぞれ棘が刺さった傷口に薬を塗りあったり、包帯やハンカチなどで縛りあったりしました。


 それから、午後の休憩で入れるつもりだったよい香りのお茶を大勢で分け合いました。クリスタは座っている力もなく、荷車の上に抱き上げてもらい、横たわった姿勢でお茶の香りを楽しませてもらいました。治癒力が間に合わずただれた肌は傷薬が染み過ぎてしまうので、清潔なハンカチで包んで、初歩の保護の魔法をかけておきました。




 夜、盗賊団の使っていた、武装した荷車を先頭に、一団は麓村へたどり着きました。盗賊団は自警団に引き渡され、近くの国の警察が引き取ることになりました。

 クリスタは村長や村の老人たちに自分や一族のことを包み隠さず打ち明けました。それから、自分はもうそれほど生きられないことを明かして、せめて死ぬ前に例の村に盗賊のことを伝えなければならないことと、先祖の罪を償うために王国の牢の中で一生を終えるつもりだということを話しました。


 あの禍々しい像を見て、皆震えながら、盗賊の被害を知りました。当の盗賊団のまとめ役も、自分たちとほかの仲間がやったことだと認めました。まとめ役は彼のほかにも何人かいて、それぞれが何十人かをまとめているそうです。何組あるかは、もっと上のまとめ役でなければわからないようになっていて、盗賊団全体で何人いるかとか、どこに隠れているかとか、知られないようになっているのでした。


 牢に入ることに関しては引き留める者が少々おりましたが、クリスタは聞き入れませんでした。




 翌日、クリスタはあの小さな袋以外のものをすべて、盗賊団を引き取りに来た警察組織に渡してしまいました。売り払ってお金に換え、すべて村へ譲渡するつもりだとクリスタは言いました。警察の上官に追い立てられながら去っていく盗賊団とクリスタを、六人と一体は見えなくなるまで見送りました。そして、分かれ道を彼らとは反対のほうへ進んでいきました。




 数日後、別の村へ立ち寄った六人と一体は、村のそばで陣を張る王国兵を見ました。六人が陣に近づくと、兵が数人近づいて、大規模な盗賊団討伐が行われることになったのだということを話しました。

 六人があの村にいたことを話すと、兵はさらに、あのまとめ役たちが盗賊団から寝返って兵の下っ端として訓練を受けていることを話し、気を付けるようにと言葉をかけました。

 そこへ元まとめ役の男が村から出てきて六人に気付き、加わりました。


「ありがとう、って言やぁいいのかな。もし王都へ行くことがあれば、あのお嬢様に、俺が礼を言っていたと伝えてくれ。」


 男の背中を見送った後、六人と一体は村を出て、王都へ向かいました。

次回の投稿は都合により9月26日(月曜日)~29日(木曜日)の間となります。

遅くとも9月中には投下します。

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