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異世界旅行譚 六人が行く!  作者: 朝宮ひとみ
旅の始まりから
26/171

吸血鬼なんているわけがない 1

 街道のない、か細い道が森の中に続いています。フリューシャたちは、森の手前にある村の人々に頼まれて、森の奥にある、古い村の廃墟を探すことになりました。



 かつて、村の人々は森の奥に村を作っていました。貴族の別荘があり、その貴族が定住して領主となり、近隣の王国に税や作物を納めて、代わりに役人を派遣してもらったり、盗賊を兵隊で追い払ってもらったりといった恩恵を受けていました。

 しかし、ある代の領主の一族は王国に反旗を翻し、自分たちを慕う村人を連れて王国の首都へ戦いに赴いたので、戦争が起こって村ごと滅ぼされてしまったのです。


 滅ぼされた村の人々の多くは元の村を捨て、今の位置に村を作りました。それでも、少なくない人数が領主とともに館へ閉じこもって抵抗しました。魔法が自由に使われた時代でしたので、恐ろしい呪いが館や村にかけられ、王国兵の侵入を阻み続けました。やっとのことで呪いを解いて、物理的に扉を破壊して館に入った王国兵たちは、数人を残してすべて倒されてしまいました。


 残された王国兵は、領主に呪いの手紙を託され、首都まで返されました。領主は自らや慕う者たちに呪いをかけ、吸血鬼となって生き続けることと、代々の王に呪いをかけ、館に手を出すと呪いによってむごたらしく死ぬという内容が記されていました。


 まず、手紙を読んだ王は即座に次の収穫が済んだ季節に兵を出し、年を越せないどころか、冬の寒さが緩いうちに突然、毒を飲んだように苦しんで死にました。次の王となった息子は様子を見ていましたのですっかり信じていて、決して手を出さず内政にいそしみましたが、それ以降の王は五人ほど連続で、兵を出してひと月ほどの間に、事故や事件で死んでいきました。


 その国は王が途絶えてしまい、近隣の国に飲み込まれました。


 それからはずっと領主が攻めてくることもなかったため、新しい国は館に全く手を出さず、そのまま時が過ぎるうちに、村の外には、『吸血鬼が住む古い館がある』という話だけが残ったのでした。




 さすがに、千年は昔の話とされていますから、伝説の通りに不死になっているのでなければ、誰もいないはずです。しかし、何十年か前から、伝説の吸血鬼の館を探して森に入っていったものたちの中に、本当に館があって吸血鬼がいたと証言する者が現れ始めたのです。


 その吸血鬼は、自分が領主の子孫であり、自分が国を作って先祖の悲願を達成するためにいけにえとなれ、と、館に入ったものは全て殺し、自分の兵隊に作り変えてしまうそうです。


 初め村人たちは吸血鬼など信じず、館の調度品をねらう泥棒のいうことだからどうなってもよいと考えていました。

 ある日、近隣の村の若者たちが館に入っていくのが複数の村人に目撃され、数日後無残な躯となって森の木々に磔になっているという事件が起きたのをきっかけに、村人たちは行政区の役人や当時の国王に討伐を訴えかけました。即座に却下されました。

 吸血鬼などではなく、例えば盗賊団だとかであったとしても、それらの仕業であるという証拠がない限りは受け付けることはできないといわれてしまったのです。


 村人は、村に滞在する旅人や駐屯する各国の兵に頼みましたが、聞いてもらえないか、前金を持ち逃げされるか、館の庭で魔法らしき攻撃を受けて逃げ帰るばかり。


 興味がなかったフリューシャたちでしたが、もう十年も続けているという村長に同情したのと、お金が出せない代わりに館そのものを含め全て自由にしてもよいという大盤振る舞い?に負けて、依頼を受けることにしたのでした。お金がなければ、旅を続けていけませんからね。


 村長に昔の村の地図と、今までの情報をまとめた帳面、少々の保存食をもらって、六人と一体は森の中へ入ったのでした。

次回は明日24日に投稿します。



 ここまで何本かエピソードを書いてきましたが、どうしても、主人公フリューシャが前面に出た話があまり出てこないので困っています。おとなしくさせすぎました。

 どうしたら動いてくれるんだろうというのと、率先して動きそうなキャラより目立って動いてもらうのが難しいですね。


 全編彼の一人称にすれば存在感が増しそうですが、アーシャのものなどの見識がない事物は全部まだるっこしい表記になって夏樹くんや私が頭を抱えることになります。(例えば、インターネットはアーシャ式電子的信号拡散なんとか網、みたいになってしまうのです。

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